肉離れとは……筋肉の伸ばしすぎによる筋繊維の損傷
筋肉を過度に引き伸ばすことで肉離れは起こる
肉離れは、太ももの裏側のハムストリングスを始め、太ももの前側、ふくらはぎ、腕、わき腹などさまざまな部位でみられます。特に太ももの肉離れの場合、「走っているときにブチっと音がした」「急に力が入らなくなった」等、比較的わかりやすい状態でアクシデントが起こります。
肉離れの予兆・前兆……筋肉のつっぱり・違和感に注意
運動前には身体の状態を確かめ、違和感がないかどうかを確認すること
- 普段よりも筋肉のつっぱり感、違和感を覚える
- 筋肉の柔軟性がいつもよりも低く、硬さが感じられる
- 力がうまく発揮できない(いつもとは感覚が違う)
- 左右で柔軟性の差がある
肉離れの症状……ストレッチ痛・痛み・熱感・腫れ・内出血など
痛みのある部位はムリに伸ばしたりせずに、氷などを使って冷やすようにしよう
運動中に「筋肉を傷めたかも」と思ったときは、まずは筋線維を傷めてしまったのかどうかを確認します。ストレッチをして起こる「ストレッチ痛」が見られる場合は、筋線維を傷めてしまっている可能性が高いため、すみやかにアイシング等の応急手当を行いましょう。
肉離れの症状がひどい場合、患部に内出血が見られたり、熱感を伴って腫れたりすることが予想されます。内出血などによるダメージをできるだけ減らすためにも、患部を安静に保ち、氷などで冷やす応急手当を行いましょう。部位によって冷却時間は異なりますが、太ももであれば20分前後を目安とし、冷たさや痛みの感覚がなくなってからプラス5分程度行います。また時間の経過とともに痛みを強く感じるようであれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
一番やってはいけないのは、痛みがあるにも関わらず無理にストレッチを行ってしまうことです。ケガの予防などに行うことの多いストレッチですが、肉離れが疑われるときに無理にストレッチをしてはいけません。
肉離れを起こした後は、しばらく傷めた部位を伸ばさないことが基本原則でしたが、最近は患部の炎症症状が収まってから(およそ2~3日)積極的に患部を動かし、最大伸張ができるようにストレッチを行うことが推奨される傾向にあります(参考書籍「基礎から学ぶスポーツセルフコンディショニング」)。筋肉が短縮した状態のままにしておくと、修復過程でできた瘢痕(はんこん)組織=かさぶたみたいなもの、が硬くなって筋線維内にとどまり、運動再開後に肉離れを再発しやすくなるためです。ただし早期のストレッチは痛みを伴うことが多いため、必ず医師の指導のもとに実施するようにしましょう。
肉離れの予防法・再発防止法……ウォームアップ・ストレッチ・筋トレなど
太もも裏の筋肉を鍛えるためにはヒップリフトが効果的
- 筋肉の柔軟性の低下
- 筋肉の温度が低く、筋線維が伸び縮みしにくい状態(ウォームアップ不足)
- 左右や前後の筋力差が大きいこと
また左右の筋力差が大きかったり、特に太ももの場合は前後の筋力差が大きい場合も、肉離れを引き起こす一因とされています。通常、太ももの前側の筋肉である「大腿四頭筋」は、後側の「ハムストリングス」に比べて筋力が大きいのですが、あまりにも前側の筋力が強いと、ハムストリングスはいつも伸ばされた状態を強いられ、さらに太ももの裏側を伸ばすような動作を行うと、その外力に耐えられなくなった筋肉は筋線維がブチッと切れやすくなります。肉離れはよく再発しやすいと言われていますが、筋力が低下した状態のまま運動を再開すると起こりやすいので、痛みがなくなった段階でストレッチと並行しながらトレーニングも行うようにしましょう。
肉離れは日頃のケアやトレーニング、ウォームアップやクールダウンなどで十分予防することが出来ると考えられています。運動やスポーツで肉離れを起こさないためにも、正しい知識を理解し、ぜひ実践してくださいね。
■関連書籍
・基礎から学ぶスポーツセルフコンディショニング(西村典子著・日本文芸社)