賃貸不動産経営管理士の仕事内容と将来性
賃貸不動産経営管理士は、主に賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家です。現在は民間資格であり、国家資格とはなっていませんが、その職務の重要性から、今もっとも注目されている公的資格の1つです。ただ、不動産関連の資格は数多く、不動産業界にいる方でもすべてを知っている方は少ないと思います。
まずは、不動産業における位置づけと他資格との関連について確認します。
大雑把に言えば、図の「不動産取引業」を行うためには「宅地建物取引業」の免許を受ける必要があります。また、免許を受けるためには、事務所に一定数の宅地建物取引士を設置しなければならず、免許を受けた宅建業者が媒介や代理、売主として関わる場合は、宅地建物取引士に対象となる不動産について事前に説明させたり、契約書等に記名押印させたりしなければなりません。
同じ不動産業でも、「不動産賃貸管理業」はもっと複雑です。
自社物件を直接店舗等として貸し出す不動産賃貸業や貸家・貸間業、駐車場業は免許や登録を義務付けるような規制がありません。
不動産管理業はビル・店舗の管理、分譲マンションの管理業、賃貸住宅管理業に分類されます。分譲マンション管理業はマンション適正化法の適用があり、登録を受けた管理業者が管理組合から委託を受けて管理を行わなければなりません。管理業者は一定数の管理業務主任者を設置し、管理組合に重要事項説明をする義務が課せられています。
賃貸住宅管理業は、まだ任意ではありますが、国土交通大臣の登録を受けることで、賃貸不動産経営管理士の設置や、貸主や借主に対する重要事項説明や契約書等へ記名押印等が義務付けられます。
近年、不動産業がフローからストックビジネスに移行していると言われています。賃貸管理業と賃貸不動産経営管理士は今後ますます重視されると予想されます。
賃貸不動産経営管理士の役割
賃貸不動産経営管理士は次の8つの場面での活躍が求められています。- 家賃・敷金等の受領に係る業務。賃貸管理業では基幹事務と呼ばれる中心となるものです。専門知識を有する賃貸不動産経営管理士が行うことが期待されています。
- 賃貸借契約の更新に係る業務。これも基幹事務の1つです。更新の際の書面作成と交付にも積極的に関わることが期待されています。
- 賃貸借契約の終了に係る業務。これも基幹事務の1つです。原状回復や敷金での充当など、1つ手順を間違えると訴訟に繋がりかねない重要な仕事です。不動産法務の専門家として賃借人と交渉することが期待されています。
- 貸主に対する管理受託契約時の重要事項説明と記名押印業務。いわゆるオーナーに対する説明義務です。賃貸不動産経営管理士が行わなければならない重要な仕事です。
- 管理受託契約書への記名押印業務。これも賃貸不動産経営管理士が行わなければならないものです。
- 借主に対する管理事務の説明、サブリース方式の場合の契約時の説明等。サブリース契約(転貸借)の場合は、宅地建物取引業の免許が不要な取引なので、宅地建物取引士による重要事項説明等が義務付けられていません。したがって、賃貸不動産経営管理士が主導的に関わることが期待されています。
- オーナーに対する定期的な管理事務の報告業務
- オーナーに対する賃貸経営に係る提案業務。ある意味、これが一番重要な職務といえます。収支を計算して予算計画書を作成したり、中長期的な修繕計画等を提案したりします。ビジネスの基本は信頼関係です。賃貸不動産経営管理士の専門知識で、目先の利益だけでなくリスクも踏まえた長期的な提案をすることが期待されています。
賃貸不動産経営管理士の資格を取得するメリット
- 管理業者や宅建業者等に勤務する方の場合
- 不動産投資の知識を身に付けられる
- 就職・転職の強力な武器になる
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