市民マラソン、マラソン大会の競技前後の食事のコツ
市民マラソンに選ばれて喜んでいる人も多いことでしょう。レースの前後の体調管理を食事の面から考えるにはどのようにしたらよいのでしょうか?
日常生活では一気に走ることはほとんどない42.195キロ。体調を万全に整えて臨まないと、思った結果が出せないうえ、翌日の仕事に支障が出てしまう可能性もあります。マラソン大会に備えて、食事はどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
マラソン前に避けたい食べ物……レース中の体調悪化の原因にも
市民マラソンは、アスリートとして厳しくタイムを競う方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらかと言うと仲間と走ることを楽しみたい方や、自分自身の趣味の延長として参加される方、競争ではなく自己目標として完走を目指す方なども多いように思います。実際に東京マラソンの応援に行っていると、マラソン用のウエア姿のランナーに混じって、袴姿やアニメのキャラクターなどに扮装したエンターテイメント色の強いランナーも毎年たくさん見かけます。こう考えると、アスリートとしてのストイックな食事法というよりも、「楽しく完走を目指すための食事のコツ」をまずは解説するのがよいかもしれません。この前提に立つと、栄養学的に絶対に食べるべきではない食べ物はありません。
ただ一般論になりますが、競技の前日の食事には少し配慮が必要です。
競技当日に「気持ちよく朝が迎えられる」ように消化のよい食べ物を食べておくことと、競技中や競技後も疲れを残さないように、疲労回復を早める食事を摂る工夫は必要かと思います。 そして、前日の夜くらいからは体調不良を起こすリスクがある刺身などの生ものや、胃に負担が大きいトンカツなどの揚げ物は避けるようにした方がよいでしょう。
もちろん、アルコールで二日酔いの状態で挑むのはさすがにオススメはできません。毎日飲酒の習慣がある方も、前日の夜のアルコールはほどほどに留めましょう。
あくまでも翌日のレースに向けて、気持ちが上がるような、それでいて体に負担がかからない、消化のよいものを食べるのがよいでしょう。
そして、一般の市民ランナーであっても好タイムを狙いたい方や、翌日の仕事が休めない方は、マラソン大会に出る少なくとも3日前からは「低糖質ダイエット」は控え、古典的な「栄養バランスのよい食事」に切り替えることをおすすめします。レース後に疲れにくくなるからです。
好タイムを狙いたい人が食べるべき食べ物・おすすめの補食
さらに好タイムを狙いたい人のために、プロのマラソンランナーの調整法についても少し触れておきましょう。プロのランナーは練習時は筋肉をつけるために「たんぱく質」を主眼においた「栄養バランス食」を摂っていますが、レースの48時間前からは「高糖質食」を摂るようにしています。これを「カーボローディング」と言います。
「低糖質食の方が体にいいはずなのに大丈夫?」と思う人もいるかもしれませんが、糖質はエネルギー源に変換されるスピードがもっとも早い栄養素です。そのため、レース中に必要なエネルギーをすばやく取り出せる状態で身体に溜めこむことができ、好タイムにつながることが期待できるのです。
もし糖尿病などの病歴がなく、本気で好タイムを狙いたい人は、プロのランナーの真似をして「高糖質食」にトライするのも有効です。その場合、レースの2日前からは「ダブル炭水化物」がオススメ。「ラーメン+チャーハンセット」や「ラーメン+餃子」など、普段なら体重管理が気になってしまうような組み合わせが適しています。
本気で好タイムを狙いたい人は、レース前には「カーボローディング」と呼ばれる方法でエネルギーを身体にチャージしましょう。
そしてレース当日の朝は、消化のよい「糖質」を食べましょう。寒い時期の大会であれば、温かいうどんとおにぎりのセットなどもよいでしょう。他にも消化のよく糖質が多い食品としては、「カステラ」「おにぎり」「大福」「バナナ」「羊羹」などが持ち運びにも便利だと思います。
マラソン中の補水・水分補給のコツ
市民マラソンの場合、吸水所にスポーツドリンクなどが用意されていることも多いと思います。吸水所を見かけたら、できるだけ受け取り、しっかりと水分補給を心がけましょう。また、ペットボトル等を携帯して走っているランナーもよく見かけます。せっかく携帯するのであれば、糖分の入った飲物を持っていくのがよいでしょう。私のオススメは、100%オレンジジュースです。糖分もしっかり入っていますし、クエン酸も入っているため疲労回復にも役立ちます。
レース後の食事は糖質・たんぱく質を多く含む食品を
レース後は、糖質が枯渇した状態になっています。まずはレース前と同じく「糖質」を多く含む食品をできるだけ早く食べるようにしましょう。今思うと、小学校のマラソン大会の後の「おしるこ」は理にかなっていたというわけなんですね。体の火照りや精神的な高揚が落ち着いたら、筋肉疲労を回復させるための「たんぱく質」です。どのような内容の食事であっても、レース後は食欲がない人が多いと思いますので、少量ずつを回数を増やして食べるようにしましょう。
レース前後に関わらず、「ビタミン」と「ミネラル」はエネルギーを作るのに絶対必要な栄養素になります。ビタミンとミネラルが不足しないように気をつけて下さい。
レースに向けてのトレーニング中の栄養については、「スポーツ栄養とは? 効果的に運動能力を伸ばす食事法」で詳しく説明しました。その他、好タイムを目指すための陸上競技に必要な栄養の考え方は、ザバスなどのサイトでも詳しく解説されています。
このように「スポーツ栄養」の考え方は、「メタボ対策」の食事法とはかなり異なります。レース中に「疲れない」ことと、レース後の「疲労回復」を考えると、摂りたい栄養素の優先順位がひっくり返ってしまうのです。そう考えると、自分の体や目的に合わせた栄養情報を的確につかむ力が必要な時代になってきていると感じます。
最後になりましたが、ランナーに選ばれた皆さん!
ケガをしないように体調をしっかり整えて、最後まで頑張ってください!