運動と健康

スポーツにおすすめの補食とは…バナナ・塩昆布など

【アスレティックトレーナーが解説】全国各地でも盛んなマラソン大会。初めは軽いジョギングからスタートし、マラソンに挑戦し始める方も多いようです。マラソンを始めとするさまざまな有酸素運動は、長時間に渡って行うことが多く、運動中の適切な補食が欠かせません。運動時の消費カロリーや補食の役割・また手軽に補給できるおすすめ補食についてご紹介します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

体内のエネルギーを使い果たす長時間にわたる運動

雨のマラソン大会

フルマラソンを走りきると一日分の摂取カロリーに匹敵するほどのカロリーを消費する

運動をすることでどのくらいのカロリーが消費できるのか、気になる方は多いでしょう。運動による消費カロリーは、運動強度「メッツ」によって計算する方法と、体重や距離などから簡易的に計算する方法があります。

■運動強度「メッツ」を用いた消費カロリーの計算方法
メッツとは、厚生労働省がメタボリックシンドロームをはじめ生活習慣病の予防のために打ち出した「健康づくりのための運動指針」の中で定めた運動強度を表す単位です。安静にしている状態を1メッツとし、息が弾み汗をかく程度の運動を3メッツとしています。ジョギングやランニングによるメッツの例を挙げます。
  • ゆったりとしたペースのジョギング(約8.0km/h)=8.3メッツ
  • ランニング(約9.6km/h=フルマラソンで約4時間22分ペース)=9.8メッツ
  • ランニング(約11.3km/h=フルマラソンで約3時間44分ペース)=11.0メッツ
(参考資料:厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」

メッツを用いた計算方法は「メッツ×体重×運動時間」で算出されますので、体重50kgの人が時速9.6kmペースでフルマラソンを完走した場合は約2136kcal(9.8×50×4.36)となります。

■簡易的な消費カロリーの計算方法
メッツを用いない簡易的な方法では、体重(kg)×距離(km)で大体の消費カロリーを導き出します。先ほどの例と同様に体重50kgの人が42.195kmのフルマラソンを完走した場合の消費カロリーは約2110kcal(50×42.195)になります。

フルマラソンを完走するだけで2000kcalを軽くオーバーし、一日の摂取カロリーに匹敵するほどエネルギーを使うということになります(成人男性で約2600kcal、成人女性で約2000kcal程度)。また食事時間をはさんで運動を続けることになるため、運動を継続するためには運動中にエネルギーを補給する「補食」が必要不可欠なものだとわかると思います。

補食とは……運動によるエネルギー不足を補うために不可欠

給水所での水分補給

長時間にわたって運動を続けるときは補食を上手に利用してエネルギー源を補おう

身体を動かすエネルギー源となるのは主に糖質と脂質です。長く運動するにつれて糖質から脂質を利用する割合が高くなると言われていますが、脂質だけをエネルギー源として利用するのではなく、必ず糖質も必要になります。言い換えると糖質が不足してしまうと脂質を利用することが出来ず、エネルギー不足に陥ってしまうことになります。

糖質は肝臓と筋肉に「グリコーゲン」という形で貯蔵され、血液中にも「血糖」として存在しているのですが、長時間にわたる運動では筋肉内のグリコーゲンを利用し、さらに肝臓のグリコーゲンを分解・利用して身体を動かし続けようとします。しかし糖質はもともと体内に貯蔵できる量が少ないため、補給しないまま運動を続けているとやがて脚が動かなくなったり、体が重だるくなったり、思考能力が低下して頭がボーッとしたりといったエネルギー切れの状態になってしまいます。身体をずっと動かし続けるためには、運動中にも糖質を含む補食をとってエネルギー源を補給することが大切になってくるのです。

片手で手軽にとれるおすすめ補食……おにぎり・パン・バナナ・ようかんなど

補食のバナナ

手軽にとれる補食として重宝されるバナナ。消化吸収の良い果糖を含み、エネルギーに変換されやすい

補食は運動前にも軽く補給していることが多いと思いますが、運動を始めると身体に蓄えられている糖質(=グリコーゲン)が利用され、時間が長くなればなるほど減っていきます。「お腹が空いた」と感じる状態は、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの量が残り少なくなってきているサインですので、運動中は「お腹が空いた」と感じる前に補給することがポイントです。

マラソン大会などの場合は各ポイントにエネルギー補給を目的としたエイドが設営され、そこで必要なものをとることが出来ますが、自分のタイミングでとりたい場合などはあらかじめ準備して持っておくのがよいでしょう。補給の目安は一口サイズのものからおにぎり1個、パン1個など250kcal前後を目安とし、摂取カロリーをチェックしておくと良いですね。

補食といえばまず思いつくのがバナナ。持ち運びしやすく、糖質の中でも比較的消化・吸収の早い果糖を含むため、エネルギーに変換されやすいことが特長としてあげられます。果物などは口の中が甘くなってしまい気になる人もいると思いますが、甘さを控えめに改良した低糖度のバナナであれば、食後もあまり口の中が気にならず、運動を続けることができそうです。

また片手でも補給しやすい補食として最近注目されているのがスポーツようかんです。スポーツシーンを想定し、スティック状になっているので持ち運びも便利で食べやすく、持続的なエネルギー補給を手軽に行うことができます。こちらも甘さを控えめにして口の中に残らないよう工夫がされており、ランニングだけではなく登山の時などにも携帯しておくと重宝しそうです。

汗によるミネラル分を補える補食……エネルギー補給食品・塩昆布など

塩昆布と酢昆布

水分補給とあわせて行いたいミネラル分補給。塩昆布は自分で持ち運びもできて利用しやすい

運動などによって起こる脱水症状を予防するためには、こまめな水分補給が欠かせませんが、汗などによって排出されるミネラル分も同時に補給する必要があります。スポーツドリンクは運動によって失われるミネラル分を補う目的でつくられていますが、運動中に大量に携帯するには少し重さが気になるかもしれません。

スポーツシーンを想定して作られたゼリータイプなどのエネルギー補給食品には糖質だけではなくミネラル分も含まれているので、こうしたものを上手に利用しながら、エイドなどで水分補給を行うようにすると、マラソンなどの長時間にわたる運動においても水分やミネラル分摂取を効率よく行うことができます。

またミネラル分を補給できる手軽な補食として最近注目されているのが塩昆布です。塩昆布にはミネラル分であるナトリウム(塩分)だけではなく、筋肉の収縮に必要とされるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル分を豊富に含み、電解質バランスの乱れによって起こる足のけいれん予防にもつながります。塩分量が気になる人は減塩タイプの塩昆布を利用してもよいと思いますし、何より持ち運びに便利なので小分けの袋などに準備して、ポーチなどに入れておくと良いですね。


マラソンなど長時間にわたって行うスポーツの場合、運動中の補食は非常に重要な役割を占めます。エネルギー源の補給と同時にミネラル分にも気をつけながら、自分に合った補食をぜひ準備して臨んでくださいね。


■参考サイト
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