運動と健康

寒い時期の運動リスクとウォームアップのコツ

【アスレティックトレーナーが解説】準備運動をしても身体が温まりにくい冬。身体がしっかりと温まらない状態で強い運動を始めてしまうと、筋肉や関節に負担がかかり、思わぬケガにもつながります。寒い時期の運動で気をつけるべきポイント、十分に身体を温めるためのウォームアップのコツ、注意すべき脱水症状の予防法について解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

冬の急なストレッチは逆効果! ウォームアップの順番も意識を

ウォームアップ前の女性

ストレッチをする前に軽く身体を温めることで筋肉へのダメージを予防しよう

気温が低いときは、身体から熱が奪われないように筋肉は緊張しています。それにより柔軟性も低下しているため、少し動きづらさを感じることがあるかもしれません。「まずストレッチをして筋肉を伸ばそう」と考える方がいるかもしれませんが、筋温が低い状態で急にストレッチを始めてしまうと、伸び縮みしにくいものを無理に伸ばそうとすることで、逆に筋肉を傷めてしまうことがあります。

寒い時期は特にウォームアップの順番にも気をつけたいところです。身体が温まるようにウォームアップジャケットなどを着用し、ウオーキングやジョギングを行ってからストレッチを始める方が柔軟性も改善されやすく、筋肉を傷めるリスクも減少します。

ウォームアップのときは体温調節がしやすいようなウエアを準備しておきましょう。風を通さず、羽織りやすいものを重ね着し、身体が温まってきたら脱ぐというようにしておくと調節しやすいと思います。逆に運動が終わった後はだんだん身体が冷えてきますので、身体を冷やさないように一枚ずつ羽織ることで、上手に保温することができます。

温かい飲み物補給も効果的……しょうが・カフェイン活用も

しょうが紅茶

しょうがの辛み成分であるショウガオールが体脂肪燃焼を後押し!

ウォームアップではまず軽い運動で身体を温めるようにしますが、その前に温かい飲み物をとっておくと、身体の中からもポカポカと温まり、ウォームアップ効果が高まります。

ホットミルクやホットココア、コーンスープなど好みの飲み物を準備しておくのがよいと思いますが、特にオススメしたいのはしょうがを使った飲み物です。しょうがにはさまざまな成分が含まれており、中でも辛味成分であるショウガオールには加熱することで体温を上げる効果があると考えられています。しょうが紅茶などを運動前に飲んでおくと、体内からも温まりやすく体脂肪を燃焼させやすい効果も期待できます。この他にもお味噌汁にすりおろしたしょうがを入れて飲んでもよいでしょう。

またカフェインにも体脂肪を燃焼させやすくなる効果が期待できるので、糖分を含まないブラックコーヒーなどを運動前に飲んでおくと、体脂肪をより効率よくエネルギーに変換し、燃焼させることにつながります。

ポケットカイロをうまく活用!

スポーツ観戦する女性

スポーツ観戦時にもカイロで首の後ろを温めると身体全体が温まって過ごしやすい

気温の低い中で運動をする場合、上手に活用したいのが使い捨てのポケットカイロです。ウォームアップを行う前や風が強くてなかなか身体が温まらない時は、小さなポケットカイロを使って身体を温めましょう。よくポケットカイロを手で握りしめて寒さをしのいでいる人を見かけますが、身体全体を温めるためには手で握るよりも、首の後ろにカイロをあてる方が効果的。太い血管のある部位を温めると全身に血液が循環されるので、身体全体がポカポカと温まりやすくなります。

運動前に身体を温めるための小技として使えるだけではなく、屋外でのスポーツ観戦や、子どもたちのスポーツ教室などで見学が必要なお父さんお母さんたちにもぜひ活用していただきたい方法です。

冬も脱水症状を起こしやすい

トイレ

実は冬にも脱水になりやすい要因がある。トイレを気にして水分補給を控えてしまうのもその一つ

運動するときは脱水予防のためにもこまめな水分補給が不可欠です。脱水というと夏などの暑い時期のことと考えがちですが、寒い時期の環境下でも脱水は起こりやすいと言われています。

特に冬は空気が乾燥し、皮膚や粘膜、呼気などから知らず知らずのうちに体内の水分が失われやすくなっています。こうした環境要因に加え、体感温度が低いと喉の渇きを感じにくくなりますし、「身体を冷やしたくない」「トイレが近くなる」といった理由で、水分補給を控えめにした状態で過ごしてしまうことも少なくないようです。運動をしていない日常生活においても脱水のリスクが高くなりやすい時期とも言えます。運動を行うときはさらに注意してこまめに水分補給を行わないと、気がついたときには、めまいや身体全体の倦怠感、頭痛や吐き気など脱水症状におちいって体調を崩してしまうリスクもあります。

またこの時期は吐き気や嘔吐、発熱などを伴うインフルエンザや胃腸炎などの感染症によっても、脱水症状を起こしやすくなります。感染症を予防するための手洗い・うがいはもちろんですが、万が一感染症にかかってしまった場合は、冬の脱水症状には注意が必要だということも覚えておきましょう。

寒い時期の運動は、身体を温める工夫とこまめな水分補給が欠かせません。身体を冷やさないように十分注意しながら、寒い冬も楽しく運動を続けていきましょう。
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