2018年の初芝居、皆さんは何を御覧になりますか? 今年の新春舞台から、密度の濃い、意欲的な作品を厳選してご紹介します。別記事にて近日、「AllAboutミュージカル・アワーズ2018」も発表する予定ですので、どうぞお楽しみに!
【1~2月の注目!ミュージカル】
『
TENTH』1月4日開幕 ←観劇レポート(第一&第二&第三週)UP!(本頁)
『
ショーガール』1月8日開幕 ←観劇レポートUP!(本頁)
『
戯伝写楽』1月12日開幕 ←演出・河原雅彦さんインタビュー&観劇レポートUP!(
2頁)
『
マタ・ハリ』1月21日開幕←観劇レポートUP!(
2頁)
『
ジーザス・クライスト=スーパースター』2月1日開幕←稽古場取材&共同インタビュー&観劇レポートUP!(
3頁)
『
ブロードウェイと銃弾』2月7日開幕(
4頁)←観劇レポートUP!
【AllAbout ミュージカルで別途特集のミュージカル】
『屋根の上のヴァイオリン弾き』上演中 ←出演・
神田沙也加さんインタビュー&観劇レポートUP!
『ミュージカル黒執事 Tango on the Campania』上演中 ←出演・
古川雄大さんインタビューUP!
『リトル・マーメイド』上演中 ←斎藤舞さん・上川一哉さん・青山弥生さん・芝清道さん・荒川務さんインタビューをUP!
『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』2月開幕 ←出演・
瀬奈じゅんさん・大原櫻子さんインタビューUP!
『ラ・カージュ・オ・フォール』3月開幕 ←出演・
鹿賀丈史さんインタビューUP!
『メリー・ポピンズ』3月開幕←出演・
大貫勇輔さん・山路和弘さんインタビューUP!
『アニー』4月開幕←出演・藤本隆宏さんインタビューをUP!
1月4~31日=シアター・クリエ
『TENTH』
【見どころ】
2007年以来、海外ミュージカルを含む良質の作品を数多く上演してきたシアター・クリエの開場10周年記念公演が、1か月にわたって開催。第一部ではこれまでの上演作品から、『ネクスト・トゥ・ノーマル』『ニュー・ブレイン』『この森で、天使はバスを降りた』の3作を週替わりでダイジェスト上演します。また第二部のガラ・コンサートではこれまでこの劇場に出演してきた俳優たちが日替わりで登場し、クリエのレパートリーを披露。社会的問題を扱った作品からカルト的人気を誇る作品まで、クリエの幅広く、大劇場公演とは一味異なるテイストを、綺羅星のようなキャストで心ゆくまで楽しめる1か月となることでしょう。
【第一週観劇レポート】
『ネクスト・トゥ・ノーマル』ダイジェスト版 写真提供:東宝演劇部
第一部は双極性障害を持つ女性と彼女を支える家族の葛藤を描いた、2009年トニー賞作曲賞他受賞作『ネクスト・トゥ・ノーマル』。13年の日本初演ではブロードウェイ版と同じく3層のセットが使われましたが、今回は2部のコンサートと同じ、シンプルなステージを使用。ダイジェスト版ということで、本来2時間ほどの演目が90分にまとめられた結果、作品の醍醐味を十分に味わわせつつスピーディーに展開、主人公たちの感情のうねりがダイナミックに浮き彫りになった公演となっています。(演出・上田一豪さん)。
『ネクスト・トゥ・ノーマル』ダイジェスト版 写真提供:東宝演劇部
登場人物のおおまかな動き、シーンが変わるごとに学校の(ジリリリリという)ベル音が鳴るといった演出はマイケル・グライフによる初演版同様ですが、今回、鮮烈なのがヒロイン・ダイアナの息子、ゲイブの存在感です。初演ではキャストの持ち味もあいまって儚く、切ない青年像でしたが、今回は演じる海宝直人さんがアグレッシブで“リアル”なゲイブを、力強く、自在な歌声をもって表現。ゲイブが一家にとって“背景”ではなく、或る意味“中心”にあることが明確に示されます。
とりわけ、自身の存在をダイアナに訴えつつ自分も煩悶するゲイブのナンバー“I’m Alive”が、妄想の世界が現実に飛び出してくるこのシーンの”妙”を際立たせ、圧倒的。
『ネクスト・トゥ・ノーマル』ダイジェスト版 写真提供:東宝演劇部
また日本初演に続きヒロインを勤める安蘭けいさんは、症状に苦しみながらも主体性を失わず、聡明な女性像が共感しやすく、抒情的かつ激しいフォーク・ロック調の楽曲(作曲・トム・キット)を、“感情の爆発”と“音楽性”の微妙なバランスをとりつつ歌いこなしています。
長年、ダイアナの治療に寄り添いつつも出口が見えず、苦悩する夫ダンを生々しく演じる岡田浩暉さん、母親に愛されず育った娘ナタリーの哀しみをパワフルかつまっすぐに歌う村川絵梨さん、ナタリーに恋する心優しい青年をナチュラルに演じる村井良大さん、そしてダイアナを診察する二人の精神科医を、ブロードウェイ版も真っ青の(?!)弾けっぷりで演じる新納慎也さんもそれぞれに熱を放ち、困難の中にあっても怯まず、人生に立ち向かう人々の姿が、観る者に生きる活力を与える舞台となっています。
『TENTH』ガラ・コンサート(第一週) 写真提供:東宝演劇部
第二部のガラ・コンサートではこの日、中川晃教さん、伊礼彼方さん、海宝直人さん、Spiさん、浦井健治さん、昆夏美さん、濱田めぐみさん、米倉利紀さんが出演。
まずはスタイリッシュにきめた四人(中川さん、伊礼さん、海宝さん、Spiさん)が『ジャージー・ボーイズ』のナンバー(「シェリー」「Oh, What a Night」「My eyes adored you」「君の瞳に恋してる」「Who Loves You」)を披露、伊礼さん・Spiさんは今回が初参加なれど既に4人の息はぴったり、初演より若々しい空気も漂い、今夏再演への期待がいや増します。
『TENTH』ガラ・コンサート(第一週) 写真提供:東宝演劇部
続いてはジェイソン・ロバート・ブラウンの“決断”をテーマとしたソング・サイクル『ソングス・フォー・ア・ニュー・ワールド』を浦井さん、濱田さん、昆さん、米倉さんが椅子に腰かけ、楽曲の魅力を確認するごとく、しっとりと歌唱。「ザ・ニュー・ワールド~新しい世界」「I’d give it all for you」「Flying Home」のうち、昆さん・米倉さんが歌う2曲目では浦井さん、濱田さんが背後の階段に仲良く腰かけ、お二人の歌唱に聴き入る姿がほのぼのとしています。
『TENTH』ガラ・コンサート(第一週) 写真提供:東宝演劇部
4人と入れ替わりに現れたのは中川さんと綿引さやかさん。ブラインド・デートを巡る恋物語『ファースト・デート』から「物語はつづく」を“何かが始まる”わくわく感に包まれつつ歌います。
そして最後は衣裳スタッフが用意したイヌ風マントを嬉々としてまとった中川さんが、昨年そののびやかな歌唱で大いに観客を魅了した『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』「Supper Time」を披露。本編を御覧になった方にも、見逃した方にも嬉しいプレゼントとなりました。
『TENTH』ガラ・コンサート(第一週) 写真提供:東宝演劇部
カーテンコールでは出演者一礼の後、バンド・メンバーも登場。この劇場では比較的大所帯の9人編成のバンドであったことがわかり、厚みと躍動感に溢れる演奏だったのもなるほど、と頷けました。
【第二週観劇レポート】
『ニュー・ブレイン』ダイジェスト版より。(C)Marino Matsushima
基本的には前週と同じセットを使いながらも、下手側奥に都会の夜景を映し出し、がらりと印象の変わったステージ。第二週の第一部演目は、作曲家ウィリアム・フィンの実体験をベースとした『ニュー・ブレイン』です。
『ニュー・ブレイン』ダイジェスト版より。(C)Marino Matsushima
ある日突然、脳の血管に異常が見つかり、手術を受けることになった作曲家ゴードン。クリエイターとしてまだ、会心の作が書けていないのに、“死ぬかもしれない”状況におかれた彼は……。
『ニュー・ブレイン』ダイジェスト版より。(C)Marino Matsushima
ゴードンとその家族や恋人、仕事仲間らとの関係性も描かれるものの、今回のダイジェスト版ではとりわけ、“焦燥”や“恐怖”、理不尽さへの“憤り”など、様々な感情に襲われる彼の内面をフォーカス(演出・上島雪夫さん)。崖っぷちに立たされた主人公に押し寄せる感情の波を、演じる石丸幹二さんがその表現力豊かな声を駆使して赤裸々に描き出します。
普遍的な母の愛を歌うミミ(初風詢さん)はじめ周囲のキャラクターもそれぞれにカラフルですが、中でもユニークな存在がホームレスの女性、リサ。(紙幣ではなく)チェンジ(小銭)をおくれと道行く人に繰り返し、“チェンジ”にこだわる理由が後半のナンバーで判明する瞬間、作品世界が主人公の身の回りから一気に社会へと押し広げられてゆくのです。マルシアさんが歌うこのナンバー(“チェンジ”)は、まさに場内を揺るがさんばかりの迫力。
『ニュー・ブレイン』ダイジェスト版より。(C)Marino Matsushima
紆余曲折の果てに幕切れに登場するのは、もともとゴードンが子供番組のために作曲を依頼されていた「春の唄」。万感を噛みしめるような旋律と歌詞は主人公のみならず観る者の心にも染み入り、素直に人生の素晴らしさを感じられることでしょう。新たに一歩を踏み出したくなる新春にふさわしい演目です。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
そして第二部のガラ・コンサートにはこの日、石丸幹二さん、新妻聖子さん、伊礼彼方さん、田代万里生さん、藤岡正明さんが出演。まずは石丸さんと新妻さん、伊礼さんが『GOLD』から「翼を広げて」「腕の中の女」「愛の学習」「天使の園」「GOLD」を、和やかなトークを織り交ぜつつ披露。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
情念を戦わせるロダンとカミーユの歌唱の合間に差し挟まれたカミーユの弟ポールの「天使の園」が、伊礼さんの誠実な歌唱もあいまって印象を残します。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
伊礼さんによる『アンナ・カレーニナ』の「We were dancing」を経て、次は『ブラッド・ブラザーズ』。セーターにオーバーオール姿の藤岡さん、シャツにベストで“お坊ちゃま”風の田代さんが子供時代のミッキーとエディ(なんと7歳!)に戻って「長い長い日曜日」を歌唱。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
短いトークを挟んでの「言わない気持ち」「あいつに」では、瞬時に成長後の二人となって屈折した思いを歌い上げていらっしゃり、観客はそのまま物語の続きを観たい気分に。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
続いては田代さん、新妻さんが、結婚前夜の男女がすったもんだを起こす『トゥモロー・モーニング』をデュエット、あたたかみある歌声で場内を包み込み、最後は新妻さんが『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』「Fly, fly away」で主人公に恋した娘の、失恋を乗り越えてゆく痛みをダイナミックに歌唱。前週の第二部で登場したコーラス(男女2名ずつ)はこの日はおらず、5人がそれぞれじっくりと持ち歌を聞かせるひとときとなりました。
第二部ガラ・コンサートより。(C)Marino Matsushima
【第三週観劇レポート】
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
最終週の第一部演目は『この森で、天使はバスを降りた』。5年間の刑期を終え、仮出獄した娘パーシーは、人生をやり直そうと旅行パンフレットで見かけた小さな町ギリアドを訪れる。暗い過去を抱えた彼女は、保安官の斡旋で町の食堂で働き始めるが、そのうち女主人ハンナや同僚シェルビーも心に傷を負っていることに気づく……。
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
哀しみを抱えた人々が少しずつ心通わせ、互いに癒し合ってゆく“喪失と再生の物語”を、フォーク・テイストの音楽で彩った本作。小林香さん演出のもと、舞台は不安な旅立ちのシーンに始まり、“新参者”の居心地の悪さ、心優しいシェルビーやハンナとの交流、ハンナの秘密、シェルビーと保守的な夫ケイレブの葛藤、パーシーの過去、そして謎の人物の正体の露見……と、一つ一つの場面をスムーズかつスリリングに繋いでゆきます。
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
パーシー役の坂本真綾さんは伸びやかな歌声とともに、誰もが心寄り添わせずにはいられない親近感を漂わせ、暗い過去を語るくだりで観る者を引き込みます。
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
いっぽうパーシーの告白を受け止め、ソロ・ナンバー「ワイルド・バード」を歌うシェルビー役・土居裕子さんは、長年支配的な夫のもとで劣等感に苛まれ、心にダメージを負ってきた彼女だからこそ出来る激励をその清冽な歌声に込めて表現。
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
はじめは素っ気なく見えるも徐々に人間味を見せてゆくハンナ役・剣幸さんも味わい深い演技で役の年輪を描き出し、ケイレブ役・坂元健児さんは前時代的な観念に縛られた男の悲劇を骨太に、また噂好きの町の女性エフィー役・田中利花さんは“お気楽”なキャラクターを明るく見せ、パーシーの影響で故郷の魅力に気づかされる保安官ジョー役・平方元基さんは、素朴な青年を適度なリアルさを持って演じています。
『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェスト版 (C)Marino Matsushima
パーシーの登場をきっかけに影響を与え合い、新たな人生に向かってゆく人々。原作である映画版とは異なり、ささやかながら希望に満ちたエンディングは、新春の上演ばかりでなく、10周年を迎えた劇場の新たな時代への幕開けにも相応しいものと言えましょう。
『TENTH』ガラ・コンサート(第三週)より(C)Marino Matsushima
続く第二部のガラ・コンサート、この日の出演者は13名と大所帯。村井良大さん、ユナクさん、光永泰一朗さん、平間壮一さん、ソニンさん、宮本美季さん、上木彩矢さん、Spiさん、田中ロウマさんが舞台いっぱいに並び「Seasons of Love」を歌い始めると、一瞬にして『RENT』の世界へトリップします。
『TENTH』ガラ・コンサート(第三週)より(C)Marino Matsushima
ユナクさんの「One Song Glory」、平間さんがフル・メークをせず、本編とは違ったリラックス感のなかで歌う「Today 4 U」、(日によってはモーリーン役を演じる)ソニンさんがこの日はミミとして情熱的に歌った「Out Tonight」、エンジェルとコリンズの無償の愛がふつふつと甦る平間さん、光永さんの「I’ll Cover You」、上木さんと宮本さんが迫力の歌声で激突する「Take Me or Leave Me」、村井さん、ユナクさん渾身の「What You Own」、そして全員でのフィナーレへと疾走。半時間で見事に作品のエッセンスを体感させてくれました。
『TENTH』ガラ・コンサート(第三週)より(C)Marino Matsushima
彼らが去った後、その熱気冷めやらぬ中に登場したのが渡部豪太さん、高垣彩陽さん、東山光明さん、岡田亮輔さん、そして再び上木さんにSpiさん、田中さん。今度はこの7名が、恋のキューピッドZANAがとある高校を訪れ、騒動を起こすミュージカル『ZANA~a musical fairy tale』を歌います。ポップな曲調の「君にわかる?」「いつかくるかもしれない日」そして「Extra Love」を披露しつつ、合間には作品解説。高垣さんによる、作品愛溢れる丁寧な解説で、本編を観たくなること請け合いです。最後にはこの日の出演者全員がジョナサン・ラーソンの「Love Heals」を歌唱。
『TENTH』ガラ・コンサート(第三週)より(C)Marino Matsushima
様々な作品がダイジェスト、そしてガラ・コンサートで蘇った今回の『TENTH』。数年前の出演作を、新たな表現を加えつつ“まるで昨日のことのように”再現してみせる出演者たちに驚嘆させられるとともに、個性的かつ多様なラインナップを慈しみ、大切に回顧する劇場、シアター・クリエのスタンスが嬉しい3週間となりました。
1月8~14日=EXシアター六本木
『ショーガール』
【見どころ】
福田陽一郎さん作・演出で1974~88年にパルコ劇場で人気を博した伝説のステージが、三谷幸喜さん作・演出で2014年、復活。16年の再演を経て、待望の新作が登場と相成りました。ミニ・ミュージカルとショーという構成、川平慈英さん&シルビア・グラブさんという芸達者コンビはそのままに、今回は新たに“告白”というテーマが登場。三谷さんの手腕が光る小粋な恋物語が期待されます。また今回は初日の長澤まさみさんを筆頭に、連日日替わりゲストが登場。華々しいゲストたちとの掛け合いも楽しみな“大人のエンタテインメント”です。
【観劇レポート】
100分間に極上の歌とウェルメイド・コメディを
詰め込んだ“鉄板”のショー、再び
『ショーガール』vol.2 撮影:スズキメグミ
第一弾を踏襲して、今回も第一部は大人のラブコメ・ミュージカル、第二部は怒涛のショータイムという構成。第一部のミニ・ミュージカルでは、筆が進まない劇作家(シルビアさん)が滞在するホテルの客室で水が詰まり、配管工(川平さん)が訪れるが、話してみれば彼は意外に“モテ男”。“モテ”の秘訣を聞いた作家は、面白い物語が書けそうな気がしてくるのだが……という物語が、耳馴染みのいいオリジナル・ナンバーを織り交ぜ、展開してゆきます。
途中、ホテルのボーイ役でこの日のゲスト・新納慎也さんが、似合いすぎの制服姿で登場。(やる気の出ない)作家を励ますという“お題”に沿って、“知り合いのシルビア・グラブさんが酔っぱらった時の物まね”をしたり、先日すれ違った男性の“とほほ”な顛末を語って場を沸かせます。(新納さんはこの後、2部のショーの「恋のダイヤル6700」でも登場、お二人と息ぴったりの振り付きで、往年のヒット曲を楽しく、華やかに歌いあげました)。
『ショーガール』vol.2 撮影:スズキメグミ
第一部は大きなうねりがあるわけではなく、むしろ会話が進むにつれ作家と配管工の間に生まれるほのかな感情、その機微を拡大して見せる二人芝居。三谷幸喜さんの簡明にして練り上げられた台詞と、川平さん、シルビアさんの豊かな表現力を得て、芝居の行方に最後まではらはらさせられます。いったんはほろ苦いエンディングを迎えるものの、第二部の終了後、再度この登場人物たちが現れてお茶目なエピローグを演じるのも、第一弾と同じ趣向。
『ショーガール』vol.2 撮影:スズキメグミ
そして第二部はうきうきするようなテーマ曲「ショーガールのテーマ」(荻野清子さん・作曲)を皮切りに、「Cheek To Cheek」(トップ・ハット)等のスタンダード・ナンバーをお一人ずつ、あるいはデュエットで披露。シルビアさんは大きな会場をものみこまんばかりのダイナミズムで「Calling You」を、川平さんはベテランであるにも関わらず少年のようなみずみずしさで「Corner of the Sky」(ピピン)を歌い、“告白”がテーマのメドレーでは、「ハード・ノック・ライフ」(アニー)の替え歌から、市長がジャン・バルジャンであることを告白する「Who am I?」(レ・ミゼラブル)のほんの一節、川平さんとシルビアさんの日本名が発覚する「サッちゃん」を経て、シルビアさんの力強い高音が響く「Tonight」(ウェストサイド物語)まで、怒涛の23曲が披露されます。
『ショーガール』vol.2 撮影:スズキメグミ
歌に踊りに芝居にと、出し惜しみせず全開で取り組みながら、なおかつ余裕綽々に見えるお二人の力量、曲終わりから次の曲への川平さんの繋ぎが絶妙のテンポであることも手伝って、100分間のショー(休憩なし)はまさにあっという間。終演後、劇場を出た人の流れのあちこちから“楽しかったわ”と弾む声が聞かれました。
*次頁で『戯伝写楽』他の作品をご紹介します!