マジカルな演出とドラマとしての見ごたえが同居するミュージカル『メリー・ポピンズ』が2018年、日本に上陸。ここではキャストへのインタビューを中心に、舞台をじっくり楽しむための作品ガイドをお届けします!
『メリー・ポピンズ』製作発表にて、メリー役の濱田めぐみさん・平原綾香さん、バート役の大貫勇輔さん、柿澤勇人さん(C)Marino Matsushima
- 原作小説『メリー・ポピンズ』とは?(本頁)
- ディズニー映画『メリー・ポピンズ』とは?(本頁)
- 舞台版『メリー・ポピンズ』とは?(本頁)
- 2月13日公開稽古レポート(本頁)
- メリー・ポピンズ役 濱田めぐみさんインタビュー(2頁)
- バート役 大貫勇輔さんインタビュー(3頁)
- ジョージ・バンクス役 山路和弘さんインタビュー(4頁)
- 2018年開幕『メリー・ポピンズ』観劇レポート(5頁)
【原作小説『メリー・ポピンズ』とは?】
英国の作家P.L.トラヴァースが1934年から1988年まで執筆した、8冊の児童文学シリーズ。ロンドンの銀行員ジョージ・バンクス一家のもとにやってきたナニー(母親に代わって子供を育てる女性。子守プラス家庭教師といったニュアンス)のメリー・ポピンズが、不思議な能力を駆使して子供たちと冒険を繰り広げます。銀行員だったトラヴァースの父は、アルコール依存症となり、彼女が7歳の時に逝去。アイルランド系の父から聞かされていた数々の物語や父の存在そのものが『メリー・ポピンズ』のインスピレーションとなっていることは、映画『ウォルト・ディズニーの約束』でも示唆されています。
【ディズニー映画『メリー・ポピンズ』とは?】
原作小説を気に入ったウォルト・ディズニーの肝いりで、20年間がかりで映画化権を獲得し、1964年に公開。メリー役を『サウンド・オブ・ミュージック』のジュリー・アンドリュースが、バート役をディック・ヴァン・ダイクが演じ、人間とアニメーションが共演する趣向が盛り込まれ、「チム・チム・チェリー」等のメロディアスな楽曲(作曲=シャーマン兄弟)に彩られた映画は大ヒットしました。アカデミー賞では主演女優賞(ジュリー・アンドリュース)、作曲賞・主題歌賞(シャーマン兄弟)など5部門を受賞しています。【舞台版『メリー・ポピンズ』とは?】
ミュージカル界を代表するプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュとディズニー・シアトリカルがタッグを組み、脚本にジュリアン・フェローズ(ドラマ『ダウントン・アビー』)、振付にマシュー・ボーン(『スワン・レイク』)を迎えて2004年、ミュージカル化。英国での初演を経て2006年にはブロードウェイで開幕、2013年までロングランを行いました。原作小説や映画に登場する“魔法”を華やかな演出で魅せる一方、一家離散の危機に瀕しているバンクス家のドラマ、とりわけ幼児体験がもとで“家族”に素直になれない父親、自分の存在意義に確信を持てない母親の心情が丁寧に描かれ、演劇的な見ごたえがアップ。子供から熟年世代まで、誰もが楽しめる舞台として、これまで英米のほかスウェーデン、ハンガリー、オーストラリア等各国で上演。現在、2018年1月までドイツ版が上演中です。
『メリー・ポピンズ』日本版キャストの皆さんが会した製作発表。(C)Marino Matsushima
『メリー・ポピンズ』公開稽古レポート
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
2018年2月13日、都内の稽古場で『メリー・ポピンズ』の階に上がると、受付前は取材陣が脱いだ靴・ブーツで埋め尽くされた状態。本作への関心の高さがうかがえます。場内に入り、何とかスペースを見出して前を向くと、スタジオ奥では濱田めぐみさんと大貫勇輔さんが振付をおさらい中。既に息はぴったり合っているものの、少しの間も惜しまず、完璧を期している様子です。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
開始時刻となり、まずは今回の演出補・ジャン・ピエール・ヴァンダースペイさんからご挨拶。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
現在、稽古は全体の四分の三くらいに差し掛かっており、素晴らしいキャストが本当に熱心に取り組んでいるので期待してほしいという旨と、これから披露する2ナンバー『鳥に餌を』と『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』の説明を熱弁。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
いよいよ一つ目のナンバー『鳥に餌を』がスタート。メリーが子供たちを父ジョージの働く銀行に連れていき、“お金の価値は金額の大小ではなくどう使うか”であることを教えた帰り道に、鳥のえさを売る女性に出会い、ぼろをまとった女性を気味悪がる子どもたちに、“見た目の奥を見なさい”と教えるシーンです。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
まず一組目、島田歌穂さん演じるバードウーマンが通りをゆく人々に近付くも相手にされず、そこに平原綾香さん演じるメリーと子供たち(この時間はまだ子役たちは学校に行っているため、取材時には不在)が通りかかる。毅然とした立ち姿がトレードマークのメリーとしては、腰をかがめることはもちろん、ほとんど動くわけにもいかないが、その内面は通行人の誰よりも“優しさ”を知っていることを示さなければならず、表現の難しいシーンに見えますが、二人の歌唱、そして心に寄り添うような曲調の効果もあって、ほろりとさせる一シーンに。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
続いてwキャストの濱田めぐみさん、鈴木ほのかさんも同シーンを演じ、稽古場があたたかな空気で満たされます。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
続いての『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』は、公演のミセス・コリーの“おしゃべりのお店”で、1オンスの会話(15文字のアルファベット)を買い、メリーと子供たちが34文字の世にも不思議な言葉を生み出すシーン。バートのつっこみを受けながらもメリーが確信を持って「スーパー~」と珍語を連呼するうち、辺りの人々も巻き込まれて大騒ぎに。平原さん&柿澤勇人さん組、濱田さん&大貫さん組とも、全身を使ったジェスチャーをふんだんに盛り込んだ忙しい振付をこなしながら歌い、底抜けに楽しいシーンとなりました。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
続く囲み取材では、「連日19時までの稽古(居残りで20時までのことも多々)でカンパニーの連帯感は半端ない」(柿澤さん)と稽古場の空気が明かされ、作品に登場する魔法の数々については「今は魔法の先生について(笑)、小さい魔法から習っています」(平原さん)「壁から伝って天井をタップするシーンがあるのですが、床を踏むタップとは全然違う感覚です」(大貫さん)とコメント。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima
役柄については「自分とメリーは共通する部分もあるので、それをどんなバランスで取り入れるか、考えながらやっています」(濱田さん)、そしてどういった方に御覧いただきたいかとの質問に「今回は4歳から入場いただけるので幅広く御覧いただきたいですが、特に、お父さんに見ていただきたいですね。父親ジョージの、とてもいいシーンがあるんです」と大貫さんが言うと、柿澤さんが「僕のおやじに見てほしい。性格変わります、たぶん」と笑わせ、和やかに会見が終わりました。
『メリー・ポピンズ』公開稽古にて。(C)Marino Matsushima