2位「廃墟も価値ある物件に~空き家を活かす決断」
年々、深刻化する空き家問題。総務省が5年ごとにまとめる住宅・土地統計調査によると、1993年に 448 万戸だった空き家の数は、2013年 には 820 万戸と、この 20 年間で 1.8 倍に増加。空き家率(総住宅数に占める割合)は1998 年に1割超えの11.5%となり、その後も一貫して上昇を続けている。こうした統計からも、空き家の増加は今後も続くと予想される。その一方で、空き家の活用に乗り出す動きも活発になってきた。
国境なき医師団(MSF)日本が今年7月、全国の15歳~69歳の男女1,000人を対象に行った「終活と遺贈に関する意識調査2017」によると、18.2%の人が、両親もしくは自分自身の死後に自宅が空き家にならないよう、話し合いや対策を行っていることがわかった。
空き家を対象としたクラウドファンディングやマッチングサイトなども登場。エアリーフローが2015年10月に立ち上げた「家いちば」もその一つだ。このサイトは空き家専門の売買掲示板で、空き家を売りたい人が物件情報を掲載すれば、買いたい人と業者を通さず直接やりとりすることができる。
また、空き家を賃貸物件にリノベーションし、増え続けている外国人居住者を受け入れる動きも見られる。日本人は新築好きだが、外国人は中古物件に抵抗がなく、築年数にもこだわらないというメリットもある。
国も空き家対策に力を入れ始めている。国土交通省は今年8月、約1,000の市区町村が参加し、関係団体等と情報共有・展開・対応策検討を行う「全国空き家対策推進協議会」を設立した。さらに、これまで各自治体が個別に運営してきた「空き家・空き地バンク」のサイトも全国統一化。全国の情報を集約し、移住希望者が物件を探しやすくするのが狙いだ。そのサイトの試行運用が今秋から始まった。
入居を断られやすい高齢者や低所得者向けの賃貸住宅として空き家を活用すれば、改修費用などの補助が受けられる、「新たな住宅セーフティネット制度」も、10月25日にスタートした。今後はこの制度が空き家問題に貢献していくだろう。
ガイドの解説コメント
「これからの家族と住まい」ガイド 大久保 恭子
住宅のリフォーム工事の受注高は2012年度以降継続して増加しており、特に2016年度は前年度比37.6%の増加。背景には、空き家の利活用があります。一戸建て住宅を保育所や老人ホーム、ホテルや旅館などに転用する動きが目立ちます。ただし住宅から他の用途への変更には、建築基準法の壁が立ちはだかっています。基準を満たすためには、大掛かりな工事と資金が必要となり、転用が進みません。そこで国は、建築基準法を見直し、地域のニーズにあった建物への用途変更をしやすくするよう、現在検討中です。実現すれば、更に空き家活用が活発化するでしょう。