定年・退職のお金/老後の生活費と家計管理

お金がなくても幸せなおひとり様、71歳男性の場合

私が今まで見てきた幸せな老後を送っている方、とはご夫妻の場合、「夫婦仲良く」がお金があってもなくても楽しく暮らすコツのような気がします。では、おひとり様が楽しく暮らすには、何が必要だと思いますか?

安田 まゆみ

執筆者:安田 まゆみ

老後マネー相談ガイド

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数か月に一度、お金のご相談にいらっしゃるダンディな「おひとり様」

老後マネー相談をしている私は様々な幸せな老後を送っている方々にお会いしてきました。
ご夫妻の場合、夫婦仲良くが、(お金があってもなくても)楽しく暮らすコツのような気がします。では、おひとり様が楽しく暮らすには、何が必要だと思いますか?
 
お金がないおひとり様が老後を楽しく過ごすコツ

お金がないおひとり様が老後を楽しく過ごすコツ



数か月に一度、お金のご相談にいらっしゃるダンディな「おひとり様」がいらっしゃいます。和人さん(71歳)です。彼は、毎回、お会いするたびに「安田さん、僕はね、いま、人生楽しくてしょうがないんだ」とおっしゃるのです。

65歳の時に奥様と死別。お子さんはいません。最愛の奥様を無くした3年間は、死んだようになっていたといいます。お勤め先は、大企業ではありませんので、お給料は飛びぬけて良かったわけではありませんが、地方の山間に小さなマンションタイプの別荘をお持ちでした。体の弱い奥様のために購入したものです。

「子どもにお金がかからない分、私にでも買えたんだよ」と和人さん。
奥様がなくなられてから数年たって、やっと一人暮らしになれたころ、和人さんは自治体主催の教養講座で水彩画や写真の楽しみを覚えたそうです。そのころ私が講師を務めていた講座に参加されたのがきっかけで、和人さんの相談を受けるようになりました。
 

“よそ者同士”で畑仲間になったり、スケッチ仲間に

和人さんは今、東京の家を売り払って、別荘住まいです。数年前に決断をする時にはお手伝いをしましたが、別荘暮らしは彼にとって「正解」でした。いま、本当に活き活きと暮らしていらっしゃいます。

畑を借りて野菜を作り、ドライブをしては、スケッチをして楽しむ毎日です。美しい山々を見ながら、ピクニック。お仲間とおしゃべりをしたりするのも楽しいのだとか。

その別荘の周りには、他の地域から移ってきた人も住んでいて、“よそ者同士”で畑仲間になったり、スケッチ仲間になったりしたそうです。もともと、夏には、毎年1か月ほど別荘にいるという生活をしていたのですが、引っ越してみると全く感じが変わって見えたといいます。暮らし始めてからは、どんどん友人が増えていったそうです。

「もうね、まわりは70を過ぎている人ばっかり。でも、みんな前向き。明日どうする?どこ行く?っていう話が多いんだよ。“よそ者”だからさ、その周りでも、行きたいところがいっぱいあるんだよね。中には会社のお偉いさんだったと思える人もいるけれど、会社勤めをしていたときのことは一切言わないね。役員やっていたとか、海外赴任だったとかは、聞かなし、話さない。もっぱら、野菜や絵の話が中心でさ、楽しいよ。気持ちのいい人たちに出会えてよかった」と。
 

体が元気な間、数年間であっても、充実した日々を暮らす

もちろんその中には、「素敵なガールフレンド」(本人談)もいらっしゃいます。結婚するつもりはないそうですが…。「青春だよ。一緒にいて楽しいもん。生きていてよかったよ」ですって。

「朝起きるでしょ。カーテンを開けた時の景色がいいのよ。寒い朝には、樹氷が見えたりするわけさ、朝からもう最高な気分。日中は、お友達と畑仕事したり、おしゃべりしたり、時々出かけたりして、もう退屈なんてしないわけ。夜は、一人で自炊してもさみしくないよ。昼間、さんざん友達とおしゃべりしているから。じっくり本を読んだりワインを飲んだりして。いい時間が流れていくんだ。妻が亡くなって一人になって、東京にも友達はいたけれど、さみしかった。いま、田舎暮らしで、夜になると外は真っ暗だけど、一人でいてもさみしくないね。人生でこんな充実した時が来るとは思わなかったね」と和人さん。

何ともうらやましい。
「自炊しているでしょ。物価が安いし、畑で野菜も取れるし、農家の人から、余ったものをもらったりもするから、あんまりお金がかからないんだよ。少ない年金でも十分生活できちゃうんだよね」。年金は17万円で、あまりが出るときも多いとか。

和人さんの住まいは、車がなくては生活できない地域です。具合の悪い時は、タクシーも呼べますが、雪道を運転できなくなったら、里に移るという覚悟はできています。

東京の家を引き払って、こちらに来るべきか悩まれたときに、私に相談に来られました。本当にやりたいことがあるなら、たとえそれが短い時間であっても、心底楽しんだことは、記憶に残るし、人生に彩を与えてくれるのでないか、という話をしました。

結果、この山間の別荘に移るとしても、終の棲家にはならないかもしれないということを大前提に引っ越しが決まりました。車を運転することができなくなって、病院に通院することが必要になったときは、里に出て、病院通いがしやすいところに引っ越す。体が元気でいる間、たとえそれが数年間であっても、充実した日々を暮らせるのであれば、山間の別荘で、目いっぱい人生を楽しもう、と。
 

「楽しく暮らす」秘訣は、一緒に楽しめるパートナーや仲間がいること

2組の「老後を楽しく暮らす」方たちのリアルな生き方と覚悟をご紹介しました。いかがでしたでしょうか?住まう場所や現役時代の肩書や年収、退職金や年金の多寡で、暮らし方が決まるわけではないのです。

なが~い老後を「楽しく暮らす」秘訣は、夫婦関係が良好なこと。これにつきます。おひとり様も、同じ。一緒に楽しめるパートナーや仲間がいること。そして、良好な関係が築けていることが一番なんです。(お金も大事ですけどね)

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