株式会社和光ケミカル『ワコーズ』とは?
前回の『ワコーズに聞いた、エンジンオイルの種類と選び方』に引き続き、ワコーズ技術部『和田岳広課長』にオイルについてお話を伺ってきました。実験室のご案内をお願いするとともに、オイルについての疑問に答えて頂きました。ワコーズは、1972年の創業以来40年以上に渡って潤滑油を主としたケミカル製品の総合メーカーです。モータースポーツの世界で磨き抜かれた、最高品質の製品を提供し続け、根強い人気があります。自社内に研究開発設備と研究者を有することで、現場での情報収集から分析・製品開発、そして現場へのフィードバックを一貫して行えるのがワコーズの魅力です。
常にトップレベルの製品を生み出す、高度な研究開発技術に加え、様々なニーズに合わせた製品を生み出すエンジンオイルのスペシャリストです。
ワコーズ技術部『和田岳広課長』にインタビューに行ってきました!
株式会社和光ケミカル技術部の和田岳広課長。2輪車が大好きで、それが高じて同社に入社したというモータースポーツ好き。――和田課長はどんな分野を担当されているんですか?
和田 実験室では新製品開発や廃油分析を行っていますが、それだけではなく、レースの現場に足を運び、使用済みオイルの分析ほか、現場の生の情報を収集しています。研究内容は、進化するクルマとオイルをマッチさせることですが、最近のクルマは、環境性能が重視されているので、地球にもエンジンにも優しいもので無ければなりません。
あなたのエンジンオイルの知識は間違ってないですか?
――エンジンオイルのスペシャリストである和田さんから見て、一般ユーザーのオイルの知識はどうですか?和田 ネット等の情報を全て鵜呑みにしてしまい、誤った解釈で認識されてしまう方も少なくないと感じます。例えば、エンジンオイルの交換時期です。交換時期は一般に、5000kmとか6か月とか言いますが、全てのクルマに当てはまることだとは思えません。確かに大半のクルマはトラブルに見舞われる確立が下がるとは思いますが。酸化についての話もよく出ますが、オイルそのものは簡単に酸化するようなものではありませんので、オイル缶に半分残ったものが使えなくなるなどということはほとんどありません。では、なぜ交換するかというと、汚れを排出するのと同時に、油膜(粘度)を適正に戻してあげるのが主な目的です。クルマの走行にともない発生するスラッジやブローバイガスなどによりオイルには汚れ・未燃焼のガソリン・水分が混入します。それらをなるべく早く排出することが大切なんです。それとオイルの交換率を上げるために、古いオイルを吸ったオイルフィルターは2回に1回といわず、できれば毎回交換してほしいですね。
――では、フラッシングしたほうがよいということですか?
和田 エンジン内部に付着した汚れを落とすだけでなく、オイルが抱き込んでいる水分・燃料分・スス等をより多く排出できますから、エンジンの調子を長期にわたり良い状態に保つのに効果的と考えています。オイル交換の回数は多いに越したことはありません。それと、チョイ乗りが多い車両は交換サイクルを短くした方がよいです。一番過酷なのは、車中泊などで長時間アイドリングした時などです。都市部では大半のクルマが短期間での定期メンテナンスが求められるシビアコンディションと考えていいと思います。都内だと、ほぼといっていいほど渋滞にひっかかりますからね。早めのオイル交換が望ましいですね。
――エンジンオイルの交換で、この色(黒くなってきたら)になったら交換しましょう!という記事を読んだことがありますが、そうなんですか?
和田 見ただけでオイルが劣化していると分かるスキルがある人もいるのかもしれませんね(笑)目視では分かりづらいと思います。状態にもよりますが、オイルが黒くもなる一番の原因はススですが、適正な粘度であれば大丈夫です。現在は、オイルの精製技術も上がり、寿命が長いです。だから、オイルが劣化するまで使って交換というケースってそうそうないんですよ。
――ちなみに、匂いでエンジンオイルの交換時期が分かるという記事もありましたが(笑)さすがに、これは無いか。
和田 いえ。確かに、「廃油」独特の匂いはあります。ガソリンみたいな、うーん。言葉では表現しづらいけどあります。ただ、それこそ私達みたいに何個も嗅いでいれば分かってくるといった感じです。あくまでも感覚です。
――輸入車のオイル交換が国産車より長いのはなぜですか?
和田 確かに、輸入車の中には20000km交換しなくていいですよ、オイルは足していけば良いですよと言われているものもあります。ですが、それはカーメーカーさんの考え方であって、私達のようにオイルを専門的に研究している立場からするとあまりオススメはできません。むしろ、交換の距離の目安や期間は、その人の乗り方によって変わると思います。
オイルの交換時期について
――どんな乗り方をするとオイルの交換時期は早まりますか?
和田 車中泊などのアイドリング状態の多い使い方ですね。他にも待機している時間の長い送迎車とかパトカーなどは、オイルが非常に痛みやすい使用環境だと思います。
――ワコーズさんのオイルは、レースにも使用されていますよね。レースなどで油温が上がった時に油圧が下がりますが、やはり即交換がよいのでしょうか。
和田 オイルの硬さは常に変化しています。油温が下がった時にまた油圧が回復するなら大丈夫ですよ。
オイル選びについて
――オイルは種類も沢山ありますし、どんなオイルを選ぶのがよいですか毎回悩まされます。
和田 まず取扱説明書に指定されている番手(粘度グレード)に合わせたものを選ぶこと。古くなったり距離が増えたら番手を上げることもありますが、プロのメカニックの判断が必要です。また、古いエンジンには油膜が張りやすいタイプのオイルがマッチングの良いケースが多いです。
――ハイスペックなオイルを選んだ方がいいですか?
和田 値段の高いものが良いとか、ハイスペックなものが必ずしも全てのクルマに対して最良とは限りません。いつもより、倍の値段のオイルを入れたから倍の距離を走れるというものではないです。
――固めのエンジンオイルをいれた方がトルクが上がると聞きました。これはどうですか?
和田 クルマの使用される環境にもよりますが、トルク感という感覚的な部分もあると思います。踏みごたえは出ますからね。ようは、アクセルが重くなるんです。その感覚が、力があるなという風に体感されてしまうことはあると思います。いたずらに固いエンジンオイルを使ってもメリットはあまりないです。
――オイルを選ぶうえで一番重要視することは?
和田 今の状態をどのように変化をさせたいか、その要望に近いコンセプトのオイルはあるのかを明確にすると、好みのオイルにたどり着く時間はグッと短縮されます。オイルの値段は様々ですが、チューニングパーツとしてみた場合は非常にリーズナブルだし、入れ替え(オイル交換)によってたくさんの銘柄を試すことができます。メンテナンスしながらチューニングできる素材としてオイルを認識してくださると、作った側も嬉しいですね。
おわりに
いかがだったでしょうか?今回の取材で一般的に言われている知識が必ずしも正解ではないということを改めて実感しました。私は10月から記事を執筆させて頂いていますが、正しい情報を伝えるためにしっかり情報収集や取材、勉強をしていこうと思いました。
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