初期虫歯の目安は黒い点が「シャーペンの芯」より大きいか
シャープペンシルの芯が入るかどうかも一つの基準
歯の頭の部分の「歯冠」と呼ばれる部分は、白いエナメル質と薄い黄色の象牙質という組織でできています。虫歯は、まずエナメル質を溶かして入りこみ、その後で柔らかい管の集合体でもある象牙質に侵入し、管を膨張させ破壊していきます。象牙質はエナメル質よりはるかに内部で拡がりやすい構造です。このためエナメル質が0.5mm程度の穴でも、内部はピーマンのようにスカスカになることがあります。
逆にこれ以下のごく僅かな黒い点程度のくぼみや、溝に沿って黒いスジに見えるような場合には、内部の進行はそれ程でもない場合もあります。そのため無理に削らずに、ブラッシングのみでの経過観察や、ごく初期の虫歯としてわずかに削って詰めるだけで完治させることができる可能性が高まります。
もし歯に穴を見つけて、それがシャープペンの芯よりも大きそうな場合は、少しでも早く歯科を受診するようにしましょう。
穴のない虫歯のメカニズム……表面だけが自然治癒?
虫歯は自然治癒しないと思われている方が多いかもしれませんが、正確には歯は毎日修復が行われています。唾液による「再石灰化」という現象です。虫歯の始まりである「歯を溶かす」という現象は、歯に含まれるカルシウムやミネラル成分が酸によって溶け出てしまう、脱灰という現象です。再石灰化はこの失われたカルシウムやミネラル成分を唾液によって補充する事によって、元の構造に戻そうとする働きです。特にプラークの付着がある部分は虫歯菌の出す強い酸、主に乳酸によってほかの部分より強く脱灰します。プラークが落とされて唾液が長期間触れると再石灰化が起こり、エナメル質は溶けずに元に戻ります。この現象は毎日の生活で常に繰り返し行われています。
歯の表面のエナメル質は、唾液がもっとも接触しやすいため、再石灰化が起こりやすく、その結果、外部のエナメル質は、唾液によって修復が起こりやすいといえます。その代わり内部の象牙質は、唾液が内部に浸透できない場合、エナメル質のように修復が進まずに、崩壊気味のまま、取り残されるような現象が起こることがあるのです。
よく見られるのは、歯と歯の間に起こる虫歯です。エナメル質に穴はなく、少し白いかなと感じる程度の白濁した状態で、内部の象牙質は虫歯によりかすかに変色して見える状態になります。目で穴が確認できないため、歯科医が診ても本当に虫歯か進行しているのか、疑問に思ってしまう事もあるほどです。
この場合は、レントゲンで確認することで判断するしかありません。象牙質への虫歯の進行が明らかであれば、虫歯菌に感染している部分を取り除き、樹脂で詰めるなどの治療を行う必要があります。
これらの穴がない虫歯は、あくまで小さな虫歯だけです。中程度以上の虫歯であれば、歯と歯の間の見えない部分でもしっかり穴が開いています。そのまま放置すれば、空洞内部の上部のエナメル質が崩落して自分で気がつく事になります。
痛みやしみるなどの自覚症状が出るのは進行した虫歯
みなさんが虫歯と感じる自覚症状は、次のものでしょう。・しみる
・歯が欠けた・穴があいた
・痛い
これらの自覚症状が出ている場合、すでに初期虫歯ではなく、中程度の虫歯に進行していることが多いです。
まず、歯の外側の殻にあたるエナメル質は無機質でできているため、酸で溶けようが、細菌が侵入していようが、知覚を歯に伝える事はできません。エナメル質の内部の象牙質に刺激などが伝わることで、初めてしみたり痛みが出たりするようになるのです。
エナメル質のみに虫歯の影響があるものが「初期虫歯」といわれるもので、唾液による自己修復機能が期待できます。象牙質に虫歯が侵入すると、しみたり痛みを感じたりするようになりますが、侵入直後に自覚症状が現れることはごくまれです。歯の神経の近くまできて、初めて自覚症状になることが多いからです。
まして突然歯に穴が空いた場合には、象牙質の内部が空洞になってから、エナメル質の天井が崩壊した可能性もあるため、虫歯自体の容積はかなり大きなものと考えられます。
このため初期虫歯は予防的な定期健診などで見つけることが一番効率的なのです。
【関連記事】