小学校に入学しても読み聞かせは続けたい! 6歳児におすすめの絵本とは?
心の成長と一人読みへの移行の準備のためにも、入学してもぜひ読み聞かせは続けてください!
大方の生活習慣は身に付き、自立心が高まりますが、新しい環境を不安に思ったり、友だちや兄弟姉妹と比較して落ち込んだり、ちょっとした嘘をついたりすることも。揺れ動く子どもの気持ちに寄り添いながらも、心の世界を広げていける絵本を選んであげたいですね。長い物語も、かなり読めるようになる頃です。
また、入学をきっかけに読み聞かせをやめてしまうご家庭もあるようですが、小学校低学年のうちはまだ読解力が充分に発達していないので、読んでもらった方が絵本の世界を楽しむことができるのです。自分で読むよう働きかけながら、読み聞かせはぜひ続けてくださいね。
1 国も世代も超えて愛される冒険物語『チムとゆうかんなせんちょうさん』
『チムとゆうかんなせんちょうさん』(世界傑作絵本シリーズ・イギリスの絵本)
ところがある日、嵐に巻き込まれ、船には、逃げ遅れたチムと、自ら船に残った船長だけ。
船長は言います。「やあ、ぼうず、こっちへ こい。なくんじゃない。いさましくしろよ。わしたちは、うみのもくずと きえるんじゃ。なみだなんかは やくに たたんぞ」
たとえ「もくず」の意味を知らなくても、子どもたちは船長の気持ちをしっかりと受け止めます。そしてチムと一緒に思うのです「もう びくびくするものか」と。
ペンで描かれた線と落ち着いた色の水彩は、人物や風景を表情豊かに表現し、チムのいる場所の空気を伝えてくれます
船乗りになるにはまだ小さすぎると笑う両親に黙って家を出たチム。その必死の思いが、周りの大人を少しずつ変えていきます。
一歩一歩、新しい世界へと進んでいく子どもたちに、チムの姿は大きな勇気を与えてくれるでしょう。
【書籍データ】
書名 『チムとゆうかんなせんちょうさん』(世界傑作絵本シリーズ・イギリスの絵本)
作 エドワード・アーディゾーニ
訳 せたていじ
出版社 福音館書店
価格 1404円
■アーディゾーニの絵本
2 美しく、驚きに満ちたホネの世界『ホネホネたんけんたい』
『ホネホネたんけんたい』
「ぼくは ヘビ。くねくね ぐにゃぐにゃ やわらかい。でも ちゃんと、しっぽの さきまで ホネが ある。じゃあ、どこまでが どうたいで、どこから しっぽか、わかるかな?」
様々な生きもののホネが、読者に語りかけてくる『ホネホネたんけんたい』。ホネなんて、ちょっと怖い……? と思いきや、そのあまりの美しさに、ほれぼれしてしまうほど。
カメの甲羅に、意外と長いウサギのしっぽ、飛ばなくなった鳥キーウィの大きな足にコウモリの指。ズラッと並んだホネは、生きものそれぞれの持つ特徴をよく表していて、「ひとりひとり、みんな、ちがう。ホネになっても、みんなちがう」というメッセージには、素直にうなずけます。
巻末の「ホネホネたんけんたいマキコ隊長のホネ研究室」もお見逃しなく。『ホネホネたんけんたい』の監修・解説・イラストを担当された、大学や博物館のコレクションや標本制作をされている西澤真樹子さんによる詳しいホネの解説は、イラスト付きでぎっしりと書き込まれており、大人でも読み応えがあります。
ちなみに、ヘビの胴体としっぽの境目は、肋骨が教えてくれますよ。ぜひ『ホネホネたんけんたい』で、写真をご覧くださいね。
【書籍データ】
書名 『ホネホネたんけんたい』
監修・解説 西澤真樹子
しゃしん 大西成明
ぶん 松田素子
出版社 アリス館
価格 1620円
■ホネホネシリーズ
3 子どもも大人も、大きな声で元気が出る『おっと合点承知之助』
『おっと合点承知之助』(声にだすことばえほん)
「その手は桑名の焼蛤」や「恐れ入谷の鬼子母神」― 近頃あまり聞かないこんなことばが、子どもたちは大好き。「しーらんペッタンゴリラ」「ただいま帰ってキタキツネ」、そんなふうに言うときの子どもって、たいていうれしそうに顔をピカピカと光らせていませんか?
『おっと合点承知之助』では、おじいちゃんと子どもたちが、生活の中でことば遊びを楽しみます。とぼけたキャラクターのおじいちゃんに、愛嬌のあるお兄ちゃんや妹と、子どもたちはたくさんのことばを覚えていきます。
「驚き 桃の木 山椒の木」「さよなら三角 また来て四角」などは、あっという間に日常に溶け込み、何度も出てきますよ。それはもう、ちょっとうるさくなるくらい!
この本を監修されたのは、『声に出して読みたい日本語』やEテレ「にほんごであそぼ」でおなじみの齋藤孝さん。『おっと合点承知之助』には「大きな声を出すことで、自分自身も元気になる。そうした回路をつくってあげたい」という思いがこめられています。
『でこちゃん』のつちだのぶこさんの絵は、ユーモアたっぷり、勢いがあって楽しく、子どもたちの気分にぴったり。家の中の雰囲気はどこか懐かしく、お孫さんと読んでいるというおじいちゃん・おばあちゃんにも好評です。
【書籍データ】
書名 『おっと合点承知之助』(声にだすことばえほん)
文 齋藤孝
絵 つちだのぶこ
出版社 ほるぷ出版
価格 1296円
4 はなこさんみたいな子、いるいる! おおらかな空気で笑顔になる『くいしんぼうのはなこさん』
『くいしんぼうのはなこさん』(世界傑作絵本シリーズ)
顔の真ん中に鼻がにゅっと突き出た子牛のはなこ。むくむく大きくて、体がぴっかぴっかと光っているのは、家の人たちにかわいがってもらい、わがままを言ってはごちそうばかり食べていたからです。
ある春の日、山の牧場でほかの子牛たちと出会ったはなこは、ちゃんばらに勝って牧場の女王になります。お百姓さんがおいもとかぼちゃを山ほど持ってくれても、はなこは、いつものように「ちょっと おまち!!」とひと吠えし、一人で食べてしまいますが……。
「同じクラスにはなこさんみたいな子いるよ」「ぼく、はなこさんくらいくいしんぼうかも」、誰にでも、心に浮かぶ自分のはなこさんがいるようです。
驚くほどいばりんぼうなはなこさんがかわいらしく感じられるのも、ちょっぴり教訓的な結末を皆で気持ちよく「はなこ、よかったね」と笑い合えるのも、穏やかでユーモアのある文章のなせる技。
遠くから見てもはっきりと分かる柔らかく美しい色遣いや、くるくる変わる子牛たちの愛らしい表情が、とても印象的な絵本です。
書名 『くいしんぼうのはなこさん』(世界傑作絵本シリーズ)
文 いしいももこ
絵 なかたにちよこ
出版社 福音館書店
価格 1188円
5 お姫さまになりたい全ての人への贈りもの『のはらひめ おひめさま城のひみつ』
『のはらひめ おひめさま城のひみつ』
「お姫さまになりたい!」と切望する子、心の中ではいつもお姫さまになっている子、たくさんいますよね。そんなお姫さま志望の子に、ぜひおすすめしたいのが『のはらひめ おひめさま城のひみつ』です。
いつもお姫さまになりたいと思っていた、まりのところに、ある日、キラキラとまぶしく輝く金色の馬車がやってきます。御者は、こう言います。「あなたさまこそ、きっと、すばらしいおひめさまになられるおかたです」と。
着いたところは「おひめさま城」。世界中、どこでもお姫さまになれるよう、勉強するところです。笑い方、美しい寝顔ですやすや眠り続ける方法、怪物たちとの戦い方などなど、勉強する項目は数え切れません。
面白いのは、「世界中」という視点。世界各国のことばはもちろん、上品な食事の仕方では、ナイフとフォーク・お箸・手で食べられるようにするだけでなく、寝そべって食べるお稽古をしますし、「どの王子さまの国がいちばん大きいかとか、どの王子さまがいちばんお金もちか」をすぐ思い出せるよう、世界地図や算数の勉強もします。
どのお勉強にも、世界各国の物語や風習が入り込んでいて、なんともにぎやか。見ていてとても楽しくなります。
隅から隅までお姫さまのお話ですが、ふんわりとした絵が美しくユーモアがあるので、グリム童話などの物語が好きならば男の子でも楽しめます。また、大人の女性にも、ぜひこの懐かしさと自由さを味わっていただきたいと思います。
さて、まりは、どんなお姫さまになったのでしょうか?
【書籍データ】
書名 『のはらひめ おひめさま城のひみつ』
さく なかがわちひろ
出版社 徳間書店
価格 1512円
6 わたしってだあれ? 視点を変えると見えてくるもの『わたし』
『わたし』(かがくのとも傑作集)
「わたし」「おとこのこから みると おんなのこ」「あかちゃんから みると おねえちゃん」「れすとらんへ いくと おじょうさん」― 「わたし」は「わたし」、でも、他の人から見ると、「わたし」ではなくて……。
『わたし』を読み進めていくうちに、驚くほどいろいろな「わたし」と出会います。「むすめの みちこ」「にんげん」「ちきゅうじん」。じゃあ、「きりんから みると」「おまわりさんから みると」「しらないひとから みると」、「わたし」ってだあれ?
「おともだち」で、「せいと」の「わたし」
新しい「わたし」の発見は、少し不思議で、とても面白い。たくさんの「わたし」は、なんだか自由。
読み終えた直後はもちろん、折に触れて、子どもたちの口から「わたし」「ぼく」を表現することばが出てきます。谷川俊太郎さんの文と長新太さんの絵が、「自分とは何だろう」という問いや、「自分のまわりには沢山の人がいる」という気づきをそっと手渡してくれます。
「みちこ」をお子さんの名前に変えたり、「お兄ちゃんから見ると?」とクイズのようにしたり、読み方次第で、様々な顔を見せてくれるのも、また魅力的です。
【書籍データ】
書名 『わたし』(かがくのとも傑作集)
ぶん 谷川俊太郎
え 長新太
出版社 福音館書店
価格 972円
7 嘘ついちゃった! どうしよう……『いじわるなないしょオバケ』
『いじわるなないしょオバケ』
触っちゃいけない、ママの大事な真珠の首飾り。サラがこっそり首に巻いてみたら、わあ、大変! 糸が切れちゃった!! いつもと様子の違うサラに、ママは「どうしたの?」と聞いてくれますが、「ううん、べつに。」と答えてしまいました。すると、サラの口から小さなオバケが飛び出します。
パパのひざにも座れず、イライラしたり泣いたりしているうちに、家の中はないしょオバケでいっぱいになってしまいました。嘘をついてしまったときのなんとも言えない息苦しさが、サラだけでなく、子どもたちの胸をも締め付けます。その緊張感は、大人の方が驚くほどです。
誰もが経験する、ちょっとした嘘とその痛み。大人だって、全く嘘をつかないというのは難しいですよね。
だからこそ、ないしょオバケがでないように頑張るサラの、「いまも、ないしょオバケは ときどき とんでくるよ。なんでも みんなに、はなせるわけじゃないから」というオバケとの距離感になんだかほっとします。
何事にも全力で向き合う子どもたち。自分の嘘や間違いに、大人が感じるよりもずっと傷ついているということがあるように思います。そんなとき、子どもの心にそっと寄り添ってくれる絵本です。
【書籍データ】
書名 『いじわるなないしょオバケ』
作 ティエリー・ロブレヒト
絵 フィリップ・ホーセンス
訳 野坂悦子
出版社 文溪堂
価格 1404円
8 絶対に盛り上がる、二進法の数あそび『ウラパン・オコサ』
『ウラパン・オコサ』(絵本・こどものひろば)
「1と2だけでかずあそびしよう」「1はウラパン 2はオコサ」
サルが1匹ならウラパン、バナナが2本でオコサ、シマウマが3頭でオコサ・ウラパン― そう、『ウラパン・オコサ』は、二進法の本なのです。
コンピュータやプログラミングが子どもたちにも身近な今、二進法にも触れる機会が増えているようです。子どもには、ちょっとややこしいように思える二進法ですが、皆で「ウラパン!」「オコサ!!」と大声で叫んでいるうちに、体で理解してしまいます。
ライオン1頭なら……ウラパンですね。ニューギニア付近のある島の数え方であるウラパンとオコサ。雰囲気のあるのびのびした絵も魅力的
何より、数を数えるのがまだまだ楽しい年頃の子どもたち、新しい数え方に大喜び。普段の生活にも「オコサ・オコサ・ウラパン!」なんて声が飛び出してきます。小さなお子さんも一緒に遊べますが、ある程度数の概念がしっかりしてきた頃に読むと、より面白さが伝わるでしょう。
【書籍データ】
書名 『ウラパン・オコサ』(絵本・こどものひろば)
作 谷川晃一
出版社 童心社
価格 1404円
9 服が小さくなったらどうする? 『ペレのあたらしいふく』
『ペレのあたらしいふく』(世界傑作絵本シリーズ・スウェーデンの絵本)
自分だけが世話をする、自分だけの子羊を持っているペレ。やがて、ペレも子羊も成長し、子羊の毛はそれはそれは長くなりましたが、ペレの上着は短くなるばかりです。
そこでペレは、新しい服を作ろうと、子羊の毛を刈り取り、おばあちゃんに毛をすいてくれるよう頼みました。そのかわり、ペレは草取りを手伝います。もう一人のおばあちゃんにも、糸を紡いでもらいました。ペレは、今度は牛の番をします。そして次は……。
糸を染めたりきれを織ったりと、一着の服が作られていくその工程が、スウェーデンの人々の暮らしを背景に、一つ一つ丁寧に描かれています。
テキパキと手を動かすゆるぎない暮らし、家の外に植えられているのはもちろん、部屋の中にもそっといけられた美しい花々、愛らしい衣服、ペレにくっついて歩く小さな子どもたちの姿― それらはどれも、素朴だけれど、明るく穏やかです。
そんな中で、ペレは、自分の力を存分に発揮し、とうとう新しい服を手に入れます。達成感はもちろん、大人に認められているという誇らしさをも、きっと味わったことでしょう。
新しい服を着てほっぺを真っ赤にしたペレは、誰にお礼を言いに行ったのでしょうか? 仕立てやさんのおかみさんと子どものお揃いコーディネートにもご注目を!
大人には、子どものできることが、実はたくさんあるのだということを、改めて教えてくれます。
【書籍データ】
書名 『ペレのあたらしいふく』(世界傑作絵本シリーズ・スウェーデンの絵本)
さく・え エルサ・ベスコフ
やく おのでらゆりこ
出版社 福音館書店
価格 1296円
10 優しい時間を取り戻せる『としょかんライオン』
『としょかんライオン』(海外秀作絵本17)
図書館ってちょっぴり敷居が高いな、と思う人は、どうも少なくないようです。静かに、走らずなど、理由があってのこととは言え、決まりが多いというのがその理由。
そんな「決まりだらけ」の図書館に、ライオンがやってきました。図書館が気に入った様子のライオンに、館長は「決まりを守って静かにするなら来てもいい」と言います。はじめは戸惑っていた人たちも、穏やかで賢いライオンを好きになっていきます。でも、ある日、ケガをした館長を助けるため、ライオンは、決まりを破って大声を出してしまいました……。
ライオンが、図書館にいる人たちと心を通わせる過程が丁寧に描かれ、あたたかな気持ちになります。ふかふかの毛のライオンに寄りかかってお話を聞く子どもたちが羨ましくて、ため息がこぼれることも。その分、図書館に来られなくなってしまったライオンが、雨の中、図書館の前に座っている姿には、胸をつかれます。
「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです」という一文にはっとするのは、図書館の人たちだけではないはず。
そう、きっと誰だって、なんらかのルールの中で生きているのです。決まりは、みんなが気持ちよく過ごせるように作られた、大切なこと。でも、時には決まりよりも大事なことがあるのだと、最後のページの皆の笑顔が教えてくれます。
【書籍データ】
書名 『としょかんライオン』(海外秀作絵本17)
さく ミシェル・ヌードセン
え ケビン・ホークス
やく 福本友美子
出版社 岩崎書店
価格 1728円
■としょかんライオンのモデルは……?
としょかんライオンのモデルは、ニューヨーク公共図書館のシンボルのライオンだと言われています。着ぐるみのライオンが、レゴで作られたニューヨーク公共図書館のライオンの間で『としょかんライオン』を読んでいる写真はこちら!→ 作者ヌードセンさんのブログ