子育て

「カーリングペアレント」とはどんな親?

モンスターペアレントやヘリコプターペアレントは知られていますが、今、カーリングペアレントと呼ばれる親が問題視されています。オリンピック競技にもなっている、あの”カーリング”からきているネーミングですが、どのような状態を指すのでしょうか?

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

カーリングペアレントとは?スポーツでは人気者、育児だとNG!

カーリングペアレンツとは?

カーリングペアレンツとは?


「カーリング」というスポーツをご存知でしょうか? 氷上に投げられたストーンの進む道を、ブルームと呼ばれるブラシでゴシゴシとならし、ゴールでの得点を競う、あのスポーツです。オリンピック中継などで見たことがある方も多いと思います。とてもユニークなスポーツですよね。

見ていて面白いカーリング、でもそれが、「育児」に当てはまると困ったことになります。今、「カーリングペアレント」という存在が問題視されています。スポーツのカーリングでは、”ストーン”の進む道をならしていきますが、カーリングペアレントは、”子供”が進む道をならしてしまうのが特徴です。

この記事では、カーリングペアレントが、子供達に与えうる影響について、子育て心理学の見地からお伝えしていきます。

<目次>
 

カーリングペアレントの親を持つ子供がする経験

何でも親が先回りしてしまう弊害

何でも親が先回りしてしまう弊害


親が先回りして、子供の通る道をゴシゴシ。それによって作られる小石も水たまりもないスムーズな道は、子供達にとっては、なんとも快適です。スルスルっと人生が進むので、周囲にも「万事順調」という印象を与えるかもしれません。しかし、長い人生、ずっとスルスルと行くわけではありません。

親子で一緒に過ごす時間が多い幼少期は、親が先回りして子供の道を平らにすることは可能です。しかし、幼稚園、小学校、中学校…と進むにつれ、子供は一日の大半を親と離れて過ごすようになります。まっ平な道しか歩いて来なかった子にとっては、小さな石ころもちょっとした段差も、つまづきの原因になってしまいます。そして、大きな岩が目の前に出現したら、もうどうしていいのか分かりません。なぜなら、そんな大きな岩は見たことがないからです。

親が先回りし地ならしをする環境で育った子供達には、次のような経験が欠如してしまっています。
  • 困難にぶつかる経験
  • 自分で考える経験
  • プレッシャーに耐える経験
  • 失敗する経験
  • 辛い思いや不安な気持ちを乗り越える経験
「いや、こんな辛い感情、子供には必要ないでしょ」と思う方もいるでしょう。しかし、「レジリエンス」と呼ばれる”転んでも立ち上がれる力”は、このような経験で培われていきます。

アメリカ心理学会の会長をつとめたセリグマン博士も、
子供には失敗が必要である。悲しみや不安や怒りを感じることが必要である。一時の感情に駆られて子供を失敗から守ってやれば、技能を学ぶ機会を奪うことになる。
と言っています。

 

大事な経験を逸してしまうと、その結果どうなる?

親が子供の進む道をならし続け、子供達がすべき経験をできないと、次のような状態に陥ることが考えられます。

主には、
  • 我慢できない
  • 待てない
  • いざというとき踏ん張れない
  • すぐにあきらめてしまう
  • 自分で考えようとしない
そうです、よく聞く「育児の悩み」へとつながってしまうのです!

イギリスの大学が、70の研究を対象に行ったメタ分析では、過保護といじめのリスクの関連性も指摘されています。

親が過保護に育ててしまうと、子供の自分力が十分に伸びないため、何か問題に直面したときに立ち往生してしまうことが増えます。もし、子供同士の人間関係で発生する諸問題に上手く対応できないと、どうしてもターゲットになりやすくなってしまうのだそうです。先回りして地をならすのは、子供のためにはならないのですね。

 

親がすべきことは子供の道をならすことではない

親がやり過ぎてしまう傾向は、何も日本だけに見られる現象ではありません。そもそもモンスターペアレントやヘリコプターペアレントも、外から入ってきた輸入品です。アメリカやイギリスを始めとする諸外国でも、親が手を出し過ぎる傾向は強まっていて、問題視されているのです。現代の育児傾向と言っても過言ではありません。

先日、「フランスの子供は夜泣きをしない」の著者でもあるパメラ・ドラッカーマン氏が書いた「Curling Parents and Little Emperors」というタイトルの記事を読みました。訳すと「カーリングペアレントと小さな皇帝」。非常にインパクトのあるタイトルです。もちろん”小さな皇帝”は、子供達のことを指します。

親にとって、可愛い我が子の存在は、永遠のプリンス&プリンセスであるのは間違いありません。でも、いわゆる「王様状態」にしてしまうと、その子が将来困ってしまうことになります。どんなに可愛いプリンス、プリンセスも、自分の進む道上にある急坂や難所は、自ら乗り越えていかなければいけないのです。

親がすべきなのは、先回りして問題を解消することではなく、
  • どう解決したらいいかを教えてあげること
  • 困難を乗り越える際に、あふれ出た感情を受け止めてあげること
  • 失敗してしまったときには、次の策を一緒に考えて、励ますこと
このような接し方をすることで、子供たちは「平たんな道」では味わえない経験をし、それがその子の自分力になっていきます。はじめは、先回りをやめることに勇気が要ると思います。でも、お子さんの将来のためだと思って、「親は見守る、子は歩く」の体制に持っていきましょう。

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