宇宙・天体

太陽フレアとは?日常生活への影響は?

2017年9月6日、太陽の表面で「太陽フレア」が発生し、大きく報道されて話題になりました。そもそも太陽フレアとはどのような現象なのでしょう? また、電子機器など日常生活への影響についてもわかりやすく解説し、太陽と私たちの関係に迫ります。太陽フレアの発生を事前に予測するために貢献している、太陽観測衛星「ひので」についてもご紹介。

執筆者:景山 えりか

「太陽フレア」とは、太陽系最大の爆発現象

太陽フレアとは?

私たちにとって、もっとも身近な「星」は太陽です。


2017年9月6日、太陽の表面で非常に大きな爆発が起きました。この爆発現象を「太陽フレア(または単に「フレア」)」と呼びます。

太陽フレアのエネルギーは、水素爆弾10万個から1億個分に相当するのだとか! 地球上はもちろん、太陽系に属する他の天体でも考えられない規模です。つまり太陽フレアは、太陽系最大の爆発現象といえます。

とはいえ、太陽フレアの中でも小規模クラスは日常的に起きています。ですから驚くほど珍しい現象ではありません。それなのに、なぜ今回の太陽フレアが大きく報道されて、ネットでも話題になったかというと、2006年以来11年ぶりとなる、滅多にない最強クラスの爆発だったからです。

そうなると、心配なのが私たちへの影響です。過去のケースもあげながら、具体的にみていきましょう。

電子機器には要注意、人体には影響なし

私たちが住む地球は大気の層(大気圏)で覆われていますが、その外側には磁力の働く磁気圏をもっています。いわば、地球を守るバリアのような存在です。

太陽フレアが起きると、爆発とともに電気を帯びたガスが噴出されます。爆発が最強クラスになれば、そのガスも大量です。それが地球周辺に到達すると、磁場が乱れ、バリアが弱まります。

この影響により、想定される主な事態は次の通りです。

・人工衛星のトラブル
・電子機器の故障
・GPSの誤差の増大
・通信障害
・大規模停電

また、オーロラの活動が活発になり、ふだんは見ることのできない日本でもオーロラが見られる可能性があります。
太陽フレアの影響でオーロラが発生することも。

通信障害は困るけど、オーロラは見てみたい!


【過去の目立った影響】
1859年:欧米で火花放電が起きて火災が多発。
1989年:カナダで9時間におよぶ大停電。
2000年:日本のX線観測衛星が故障。

【2017年9月、フレアの発生から影響まで】
・6日18時頃と21時頃に太陽フレアが発生。
・爆発で噴出したガスが、8日9時頃に地球に到達し始める。
・8日の日中に、GPSの精度がかなり悪くなる時間帯があった(国土地理院が報告)。
・南極で、ふだんは見られない色合いのオーロラが目撃された(国立極地研究所が報告)。
・11日未明に再び太陽フレアが発生。しかし、前回に比べてやや小規模なため影響は小さいとされた。

連日の報道を見ていたかぎりでは、生活を揺るがすような影響や被害の報告はなかったようです。

けれど、もしも私たちが日常的に利用している通信やGPSに大きな支障をきたしたとしたら……そう考えると、太陽フレアが自分には全く関係ないとは言い切れず、無関心をよそおうわけにはいかないように思います。地球から太陽までの距離は、約1億5000万km。それほど遠く離れた太陽で起こった現象でも、私たちの暮らしを大きく揺さぶる可能性があるのですから。

ちなみに、太陽フレアによって噴出したガスが、人体に影響を与えることはありません。私たちは大気圏によって守られていますから、どうかご安心ください。
 

太陽は身近な「星」 関心を持ち続けることが大切

太陽は、地球が所属している太陽系の中心に位置する天体であると同時に、銀河系(天の川銀河)を構成する数千億個の星(恒星)のひとつです。

星といえば、夜空にキラキラと輝く姿を思い浮かべますが、私たちにとって一番身近な星は太陽です。地球に季節をもたらし、大地に恵みを与えてくれる――そんな近い存在だからこそ、私たちに与える影響は大きく、これからも関心を持ち続けていくことが大切です。

スマホやGPSが普及している現代社会において、太陽フレアの被害による経済的損失は、今後大きくなる可能性が十分に考えられます。

最先端科学をもってしても、太陽フレアの発生を事前に正確に予測するのは、まだ難しいのが現状ですが、対策としてできることはあります。そのひとつは太陽を長期的に観測すること。

これに貢献しているのが日本の太陽観測衛星「ひので」です。鹿児島の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたのが2006年9月23日。そう、もうすぐ打ち上げ11周年を迎えます!

「ひので」には世界最高レベルの3つの望遠鏡が搭載され、今も高度680kmの宇宙空間から太陽の活動を観察し続けています。その観測データに基づく研究が、近い将来に太陽フレアの発生を事前に予測する道を開くことに期待しましょう。

最後に、本記事に関連する、太陽の構造や現象の名称を以下にピックアップしたので参考にしてください。
 

太陽フレア関連用語集

【光球】
可視光で見る太陽の表面。温度は約6000度。

【黒点】
光球に現れる黒い斑点。周辺より温度が低く、約4000度。

【彩層】
太陽表面のすぐ外側にある大気層。

【フレア】
彩層内の大規模な爆発現象で、おもに黒点の周辺で起こる。この爆発によって、強力なX線や紫外線、電気を帯びたガス(帯電粒子)が放出される。爆発は5つの等級に分類され、弱い方からA、B、C、M、X。2017年9月のフレアは、最強のXクラスだった。

【プロミネンス】
コロナ

太陽を取り巻くヴェールのような「コロナ」。

彩層からコロナへ吹き上がる巨大なガスの炎。紅炎(こうえん)とも呼ばれる。

【コロナ】
もっとも外側の大気層。とても希薄なので通常は見ることができない。皆既日食のときに、筋状に見ることができる。非常に高温で、約100万度。


ところで、太陽フレアとよく混同されるのが「プロミネンス」です。プロミネンスとは太陽の周囲に見られる炎のことで、太陽フレアは爆発という現象のこと。別物だと覚えておきましょう。

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