上手な断り方で相手を不快にさせずに「ノー」を伝える
上手な断り方を身につける
人とのコミュニケーションにおいて、最も多い悩みは何だと思いますか?
それは、「うまく断れない」というものです。
私たち日本人は、欧米諸国の人たちと比べると、「ノー」と言うことに過剰に反応してしまいがちです。これは、「相手の気持ちを慮る」「相手の気持ちを大切にする」という日本人の美徳によるものでしょう。何事も穏便にすませるほうがいいことだと考える風潮のなか、「”断る”ことは”悪い”ことだ」という認識があるようです。そのため、言葉を濁して曖昧に返事をしがちです。
「いい人でいたいから断れない……」は危険!
「どうしても断れない」という人もいます。そんな人たちに詳しく話を聞いてみると、「断ろう」と決心しても、いざ断る時にいつもの「いい人でいたい」願望が出てきてしまう、と言います。「いい人病」が顔を出すのです。「断りたい。あ~、でも、いい人でいたいから断れない」というわけです。
さらに、こんなふうに思っている人もいます。
「いい人でい続ければ、必ず私のことを守ってくれるはず」と。「上司の言うことを我慢して聞いてさえいれば、自分は安泰だ」と思っている人も多いようです。
でも、本当にそうでしょうか?
断るべきときに断れないでいると、時に不穏なことが忍び寄ってくることがあります。その「不穏なこと」とは、「モラルハラスメント」(言葉や態度によって行われる精神的な暴力)です。大声で怒鳴られたり、人間性を否定することを言われたり、性的な嫌がらせを受けたり……。
こういった不当な行動に対して、通常であれば、もちろん反論していいはずです。ところが、「イエス」ばかり言い続けている人は、「ノー」と言う方法を忘れてしまっています。そのため、相手からどんなに理不尽なことを言われ続けても、それを認識することができず、受け入れてしまうのです。恐ろしいことですよね。
「断ることは悪いことではない」と再認識する
それでは、「上手な断り方」とは、どんなものでしょうか?たとえば、「明日、得意先にお断りの電話を入れなければならない」としたら、どんな気持ちになりますか? そのことを考えただけで、胃がキリキリし始めたり、不安な気持ちになったりする人もいるかもしれませんね。また、せっかくの相手の厚意・善意を踏みにじり、申し訳ないという気持ちになるかもしれません。
そんな人は、まずは、「”断る”ことは、決して悪いことではない」ということを知りましょう。その場の均衡を保つために曖昧な返事をしたり、ハッキリしない態度を取ったり、ギリギリになって返事をしたりするほうが最終的に相手を困らせてしまうのです。後の人間関係に悪い影響を及ぼすこともあるでしょう。
繰り返しますが、「ノー」と断ることは、悪いことではありません。
「イエス」があるから「ノー」がある。ただそれだけのことです。そのことに改めて気づくと、「ノー」と言うことへの抵抗がなくなってきませんか?
上手な断り方3つのポイント
ぜひ一度、試しに仲の良い友人と「イエス」だけを言い続けて会話をしてみてください。どんなことが起きると思いますか?じつは、「ノー」を言わずにすべて「イエス」と答えていると、会話が成り立ちません。思っていたよりも、早い段階で会話がストップしてしまうことに気づくでしょう。「イエス」と答えてばかりいると、いかに会話が成り立たないか、そして「ノー」という表現がいかにありがたいものかが、身をもってわかります。
「イエス」があるから「ノー」が存在するのは当然のこと。そうであれば、断ることを必要以上におそれる必要はありませんよね。愛をもって「ノー」と言う習慣を身につけることが得策です。
「断る」ことが苦手だという人の多くは、「断り方」が上手でない、適切でない、ということが多いのです。
気の乗らない誘いや飲み会を上手に断るためのポイントは以下の3つです。
- 余計な言い訳をしない
- なるべく早目に断る
- 断る理由を述べる
この3つのポイントをおさえれば、「断る」という行為をおそれることがなくなります。一度うまく断れるようになると、その次からはラクになってきます。
たとえば、友人からあるコンサートに誘われたとしましょう。
1の「余計な言い訳」というのは、たとえば「本当はあのコンサートにとても行きたくてしょうがないんだけど……」などと言うことです。相手からすると「そんなに行きたいのなら、なぜ来ないの?」と思われてしまい、後に「優柔不断な人」というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
2の「なるべく早目に」というのは、コンサートに行けない、もしくは行きたくないのであればその段階で断ったほうがいい、ということです。早く断ってあげたほうが、相手も他の人を誘うことができます。
さらに、3の「断る理由」ですが、そのコンサートに興味がないのであれば、思わせぶりな言い方をせずに、「あまり興味がなくて」「先約があって」などと素直に理由を伝えたほうがいい、ということです。理由を伝えることで、相手も断られてもスッキリとした気持ちでいられるでしょう。
「ノー」と言うことは、「あなたと相手との関係の終わり」を意味するものではありません。むしろ、上手に断ることができるようになると、それまで以上に相手との関係性が良くなっていきます。あなたの表裏のない姿勢が、さらに信頼関係を構築するきっかけとなるのです。
これからさらにグローバル化は加速し、私たち日本人も「断るのが苦手」とは言っていられない時代です。上手な「ノー」の伝え方を身につけておくことは誰にとっても必要なことです。断るときは、キッパリといきましょう。
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