盛夏の候、涼しさを求めるなら劇場へ。この夏は華やかな歴史ロマン『魔都夜曲(まとやきょく)』やロック・ミュージカルの傑作『RENT』に加え、『アンデルセン』『ひめゆり』『ピーターパン』『にんじん』と、子供と一緒に観ても楽しい演目が大豊作です。この機会に、普段は御覧にならないタイプの演目に足を運んでみるのもお勧めですよ!

【7~8月の注目!ミュージカル】
『RENT』7月2日開幕←観劇レポートUP!
『魔都夜曲』7月7日開幕←秋夢乃さんインタビュー&観劇レポートUP!
『ひめゆり』7月13日開幕←観劇レポートUP!
『アンデルセン』7月15日開幕←鈴木涼太さんインタビュー&観劇レポートUP!
『ピーターパン』7月24日開幕←観劇レポートUP!
『にんじん』8月1日開幕←観劇レポートUP!

【All Aboutミュージカルで特集(予定)のミュージカル】
『ビリー・エリオット』7月19日プレビュー開幕 出演・ビリー役5名、柚希礼音さん・島田歌穂さんインタビュー掲載!
『DEATH NOTE THE MUSICAL』8月19日大阪、9月2日東京公演開幕 出演・浦井健治さん、柿澤勇人さん、小池徹平さん、石井一孝さんインタビュー掲載!
『黒執事』12月開幕 出演・古川雄大さんインタビュー掲載予定
『屋根の上のヴァイオリン弾き』12月開幕 出演・神田沙也加さんインタビュー掲載予定

音楽劇『魔都夜曲

7月7~29日=Bunkamuraシアターコクーン、8月5~6日=刈谷市総合文化センター アイリス、8月9~13日=サンケイホールブリーゼ

【見どころ】
『魔都夜曲』

『魔都夜曲』

1939年、ジャズの調べに彩られた上海。この地に降り立った日本の貴公子・白河清隆は日中のハーフ、紅花と恋に落ちるが、彼女には秘密があった……。
第二次世界大戦前夜、各国の策謀渦巻くなかで花咲く恋をマキノノゾミさん(脚本)が描き、河原雅彦さんの演出、本間昭光さんの音楽、そして藤木直人さんの主演で上演。橋本さとしさんや小西遼生さんら、ミュージカルでもご活躍の方々も多数出演します。主人公のモデルが近衛文麿首相の長男・文隆であることから、やはりモデルを同じくする劇団四季のミュージカル『異国の丘』を思い起こす方も多いかもしれませんが、現代的感性でエンタテインメント色を濃くした本作は、前者とは一味異なる風合い。暴力的であったり排他的な風潮が見られる世界情勢の今だからこそ観たい、ロマンティックにしてサスペンスフルなドラマが誕生しそうです。

【字春役・秋夢乃さんインタビュー】
秋夢乃undefined中華人民共和国広東省出身。03年劇団四季に入団、『アイーダ』『エビータ』『リトルマーメイド』等でヒロインを演じ、退団。『楽園』等の作品に出演している。(C)Marino Matsushima

秋夢乃 中華人民共和国広東省出身。03年劇団四季に入団、『アイーダ』『エビータ』『リトルマーメイド』等でヒロインを演じる。退団後も『楽園』等の作品に出演している。(C)Marino Matsushima

――秋さんは中国のご出身ですが、本作の舞台である1939年ごろの上海について、どんなイメージをお持ちですか?

「現存の資料は戦争関連のものが多いのですが、私自身は当時のカルチャーにとても興味を持っています。19世紀にアヘン戦争に敗れて以来、上海には各国の様々な文化が入ってきました。特に女性はファッションも化粧もがらりと変わり、煙草を吸う女性も少なくなかったそうです。そんな中で花開いたロマンスもきっとたくさんあった筈なので、今回の物語はとても嬉しいですね。皆でゼロからお芝居を作っていますが、村井國夫さんはじめ、諸先輩方の“本当にそこに生きている”としか思えない演技に毎日、刺激を受けています」

――秋さんが演じるのはジャズクラブの歌姫、字春(ユーチュン)役。このジャズクラブ「ル・パシフィーク」は橋本さとしさん演じるオーナー、新田日出夫のポリシーで、どこの国の人もわけ隔てなく、皆が“上機嫌で過ごす”場ということになっています。各国の策謀が渦巻く中で、ある種ユートピア的な場所なのですね。

「はい、字春も心に国境はないと信じて、日本人の外交官とお付き合いをしていますが、途中で“やはり僕らの恋は許されない”と苦難が訪れます。それでも恋する彼女は決して悲観的でなく、むしろ希望に満ち溢れて浮き浮きしていたと思うので、いかにも悲劇のヒロイン風にならないよう、意識していますね」

――歌姫役ということで、今回はジャズもいろいろ歌うご予定だとか。

「これが楽しいんですよ。海外から上海に入ってきたジャズは独自に進化しまして、今では“上海ジャズ”というジャンルで呼ばれています。中国の民謡をジャズに乗せて歌ったりするのですが、意外にもジャズのリズムに中国語がぴったりはまるんですよ。今回は民謡ジャズを2曲歌う予定で、どう歌ったらお洒落に聞こえるかと今、研究の真っ最中です」

――中国人役も登場するとあって、秋さんは今回、中国語指導も担当されているのですね。
『魔都夜曲』宇春役の秋夢乃さん

『魔都夜曲』字春役の秋夢乃さん

「指導させていただきながら、皆さんの熱心さに感動しています。日本語は口の中を半分位しか使わなくても発音できるのに対して、中国語は歯を含めて全部使います。それに四声というものがあって、同じ音でもイントネーションが4通りあるので、一つ間違えば“お母さん”が“馬”になってしまうんですよ。字面だけ覚えればいいわけではないので、日本の方が中国語の台詞を発するのはとても難しいと思うのですが、皆さん、物凄く勉強されています。特に春風ひとみさんは中国人にしか聞こえないほどの完璧さですよ」

――どんな舞台に仕上がりそうでしょうか?

「まずは台本がとても面白いです。主人公の恋人には秘密があって……と聞くと、皆さん暗く、重い方向を予想されると思うのですが、演出の河原雅彦さんはむしろ明るい舞台を目指していらっしゃるような気がします。(ネタバレになってしまうため)詳しくは言えませんが、クライマックスで登場するある歌が、国籍に関係なく、当時の誰もが抱いていたであろう平和への思いを象徴していて、感動的なんです。ただ、村井國夫さんが“音楽(の力)に負けないようにしようね”と戒めてくださって、私たちもしっかり芝居をやろうと頑張っています。衣裳などビジュアル面も華やかですし、きっと楽しんでいただけると思います」

――劇団四季時代には数々のヒロインを勤めていらっしゃった秋さんですが、今後についてはどんなビジョンをお持ちですか?

「私は大学を出てすぐ来日し、女優として日本で育てていただきました。これからは日中の懸け橋にもなりたいし、私にしかできないようなものを表現していきたいですね。その意味でも、今回の『魔都夜曲』はとても嬉しいお仕事です。国交正常化45周年の今年、この作品に携わる中で、自分にどんな役割ができるか。全力で臨んでいけたらと思っています」

【観劇ミニ・レポート】
『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

開演15分前、舞台には6人編成のバンドが上がり、コクのあるジャズを奏で始めます。2曲目には秋夢乃さん扮するクラブ歌手・字春も加わり、(上記のインタビューでも語っていらっしゃった)“上海ジャズ”を披露。中国語が乗ったジャズには意外な躍動感があり、もっと聞いていたい!と思わせますが本編がスタート。主人公・白河清隆(藤木直人さん)が周紅花(マイコさん)・周志強(小西遼生さん)と出会い、運命の歯車が回り始めます。
『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

清隆のモデルは“悲劇の貴公子”として知られる近衛文隆ということで、観る側としてはどうしても暗く重いストーリー展開を想像してしまいがちですが、実際の仕上がりはさにあらず。激動の時代らしく国をまたいだダイナミックな策略も登場しますが、クラブという舞台設定を生かし、シリアスな展開の中に時折、ショー・シーンが差し挟まれ、“エンタテインメント”としての楽しさ、華やぎをキープしているのです。そこではベテランの“あの人、この方”が踊り、歌うサプライズも。
『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

『魔都夜曲』撮影:桜井隆幸

また清隆と紅花の愛を中心としながらも、キャラクターの一人一人に見せ場があり、特にクライマックスでは川島芳子役を完璧な麗人姿で演じる壮一帆さん、清隆に複雑な感情を抱く志強役・小西遼生さんが大活躍し、見逃せません。

その意外な結末は、1939年上海という時代設定を借りた、現代人による世界平和への祈りの投影と言えるかもしれない『魔都夜曲』。ジャズの余韻に浸りつつ、観劇後にはワイングラスを傾けたくなる、ゴージャスな舞台です。

*次頁で『RENT』ほかの作品をご紹介します!