セクシュアルマイノリティ・同性愛/LGBT

約10万人が参加!東京レインボープライド2017レポ

5月6日(土)7日(日)、代々木公園イベント広場で東京レインボープライド2017「フェスタ&パレード」が盛大に開催されました。爽やかな5月の空の下、約5000人が渋谷の街をパレードし、2日間の来場者はのべ約10万人となり、過去最高を記録しました。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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東京レインボープライド2017に約10万人が参加しました

東京レインボープライド

パレード出発前のフォトセッションより。スタッフの方や参加者の方、いろんな方たちの笑顔が素敵です。

今年も4月29日(土)から5月7日(日)までの9日間、東京レインボープライドの「レインボーウィーク」として、たくさんのLGBT関連のトークイベントやシンポジウム、ワークショップ、映画上映、アート展、スポーツイベントなどが開催され、充実したプライドウィークになりました。

例えば、「一橋大学アウティング事件 裁判経過の報告と共に考える集い」というイベントでは、裁判を担当する南和行弁護士からの報告や有志による追悼集会、裁判傍聴の報告、明治大学教授の鈴木賢先生による基調講演、パネルディスカッションが行われ、定員を上回る数百名の方たちが会場を埋め尽くしたそうです(ゴトウも行くつもりだったのですが、熱を出してしまい、断念しました……)。

他のトークイベントなども概ね盛況だったそうで、LGBTの社会的課題に関心を持つ方の層の厚さ(熱さ)を窺わせるものがありました。

そして、5月6日(土)7日(日)、今年も東京レインボープライドのフィナーレとして代々木公園イベント広場で「フェスタ&パレード」が盛大に開催され、爽やかな5月の空の下、約5000人が渋谷の街をパレードしました。イベントの参加者数も、昨年の7万人という記録をさらに更新し、今年は「フェスタ」で約35000人、「パレード」で約65000人、2日間でのべ約10万人となりました。

そんな東京レインボープライド2017のレポートをお届けします。

 

東京レインボープライド2017 オープニングレセプション

東京レインボープライドオープニングレセプション

ゲイであることをカミングアウトした声優の三ツ矢雄二さんが乾杯のスピーチをされました。

2015年、東京レインボーウィークと東京レインボープライドが合体して一大プライドウィークとなってますますパワーアップし、2016年からは「レインボーウィーク」の開幕を告げる「オープニングレセプション」が都庁45階南展望室「Tokyo Cafe 202」で開催されるようになりました。

4月29日(土)に開催された今年の「オープニングレセプション」もフジテレビの阿部知代さんが司会を務めました。阿部さんは「5月5日19時過ぎにフジテレビ社屋がレインボーカラーにライトアップされることになりました」と発表し、会場が沸きました。

また、今年ゲイであることを正式にカミングアウトした三ツ矢雄二さんが登壇し、「このような場にお声かけいただいて、びっくりしました。今はゲイという言葉の重みをかみしめています。これがカミングアウトのスタートラインだな、と思います。誰もが普通に生きていける世の中になればと思います。今日は誇りを持ってこの場に立っています」とご挨拶し、乾杯が行われました。

その後、三ツ矢さんや東ちづるさんらを交えてトークセッションが行われました。トークセッションでは三ツ矢さんがカミングアウトに至る経緯を披露。
「周りはみんな知ってて、母も「結婚しなくていいからね」と言ってたくらい。でも家族に迷惑かけちゃいけないなと思っていて。60も過ぎて、この辺りで言ってもいいかな、と思った。僕がこの世に生まれた意味を受け入れてくれると信じています」

同性パートナーシップ証明制度をスタートさせた渋谷区と世田谷区の両区長さん、たくさんの国会議員やLGBT議員の方々(党首としては、民進党党首の蓮舫さんが初登壇)、そして企業の代表の方々もご挨拶しました。

2本目の「ミニトーク」では、丸井グループ・サステナビリティ部マルイミライプロジェクト担当課長の井上道博さん、チェリオコーポレーションの菅大介社長、そしてダイヤモンド社から発売された新雑誌『Oriijin(オリイジン)』編集長の福島宏之さんが登壇し、企業としてどのようにLGBTを支援していくかという、具体的な取り組みや気持ちの部分をお話してくださいました。

こうして華やかに進行した「オープニングレセプション」は、中村 中さんの素晴らしいライブでフィナーレを迎えました。(なお、すべてのトークに、手話の同時通訳がついていて、ろう者の方への気遣いが素晴らしいと思いました)

スゴい人たちが次々に登場し、LGBTへの支援の気持ちを表明してくださる、祝福感に包まれた本当に素晴らしい一夜となった「オープニングレセプション」。来年も楽しみです。


 

東京レインボープライド2017「フェスタ」

5月6日(土)7日(日)、東京レインボープライドの(レインボーウィークのフィナーレとなる)フェスタ&パレードが代々木公園イベント広場で盛大に開催され、過去最高となるのべ約10万人を動員しました。

両日とも(土曜日は雨の予報も出ていましたが「パレードは晴れる」のジンクスの通り)とてもよく晴れて、絶好のイベント日和となり、代々木公園には朝からたくさんの方たちが訪れ、ステージで行われたパフォーマンスを楽しんだり、広場に所狭しと並んだ100軒以上のブースを見て回ったり、思い思いにセクシュアルマイノリティのお祭りを満喫していました。

東京レインボープライド

画像だと巨大さがあまり伝わらないかもしれませんが、mixiが出展した「にじはち」モニュメントはブースの概念を覆すものがありました。

今年、会場に着いて驚いたのは、「ブース」が革命的な進化を遂げていたことです。これまで全国で行われてきたあらゆるパレードの「ブース」は、基本的にテントを使い(区切って半分ずつ使ったり1張まるごと使ったり)、レインボーに飾り付けし、テーブルにチラシやグッズを並べて、人が立って応対して、というものでした。ところが今回、そうしたブースの概念を覆すような、参加者の度肝を抜くような「モニュメント」が登場したのです。広場のど真ん中に出現したレインボーのお花で飾られた巨大な(高さたぶん6mくらいの)ハチ公像「#にじはち」は、mixiが出展したもので、たくさんの人でごった返す広場の中の待ち合わせスポットになってくれたら……という意味で、レインボーのハチ公像が誕生したのだそうです。その発想力がまず素晴らしいのですが、それを実現させるために、テント4つ分くらいのスペースを使い、お花もふんだんに使い、おそらく数百万円の予算を投じて製作したmixiの心意気にも拍手! です。

そんな「#にじはち」をはじめ、DISELや伊勢丹、Panasonicなどが、圧倒的におしゃれな巨大ブース(やはり、テント何張分ものスペースを使った豪華な、カッコいい空間)を出現させていたほか、息をのむほど美しかったり、とっても元気だったり、希望を与えてくれたり、実に多彩なブースが、2日間かけても全部を見て回れないほど、本当にたくさん出展されていました。 

東京レインボープライド

「フェスタ」ステージのトリをつとめたのは、あの星屑スキャットのみなさん。シングル「ご乱心」をはじめ数曲を披露し、盛り上げてくださいました。(Photo by カケジク)

ステージでは、ブルボンヌさんと阿部知代さんが司会を務め、朝からたくさんのLGBT+アライの方たちのパフォーマンスが繰り広げられました。2015年のフェスタのステージでゲイであることをカミングアウトした清貴さん、素晴らしすぎるダンスパフォーマンスを披露してくれた東京ゲゲゲイのみなさんも登場して拍手喝采を浴び、ミッツ・マングローブさん&ギャランティーク和恵さん&メイリー・ムーさんによるユニット、星屑スキャットが大トリを務めました。お昼過ぎにはソウル・台北・東京のコミュニティセンターのスタッフが登壇した「HIVとアジア~韓国・台湾・日本 We are All Living Together with HIV in ASIA」というシンポジウムも開かれ、有意義でした。

なかには都合でパレード当日は参加できなかったという方もいらしたかと思いますが、「フェスタ」のステージと、広場のブースを楽しむだけでも、充実した1日になったのではないでしょうか。


 

東京レインボープライド2017「パレード」

東京レインボープライド

渋谷のMODI(マルイ)のデジタルサイネージがプライドを祝してレインボー仕様になる中、晴れやかに行進しました(Photo by カケジク)

GWの最終日であり、「レインボーウィーク」の最終日でもある5月7日(日)に東京レインボープライド2017のフィナーレとして「パレード」が開催されました。

過去最高となる23ものフロートが出走したパレードでは、MODI(マルイ)のデジタルサイネージが東京レインボープライド開催を祝うレインボー仕様になり、沿道でも多くの方たちが見守ったり、ハイタッチしたりしながらパレードを応援し、お店から出てきて応援してくれる方などもいて、約5000人の行進を盛り上げてくれました。

ステージ上でも、エスムラルダさんとアロム奈美江さんが司会を務め、「“みんな”でブラス!」の演奏や「新宿エイサー新虹(あらぬーじ)」の演舞、欧州の大使や議員さんのご挨拶などが行われました。「チャリティーサポーター」のドラァグクイーンやGOGO BOYの皆さんがステージに登場すると、一気に華やかな雰囲気になりました。そして最後に、今回のスペシャルゲストである中島美嘉さんのライブが行われました。

東京レインボープライド

パレードのトリを飾ったのは「MAKE LOVE NOT WALLS」というメッセージを掲げたDIESELのおしゃれなフロート。写真を手がけたのは世界的なフォトグラファー、デヴィッド・ラシャペル(ゲイであることをオープンにしています)だそうです。

『雪の華』『一番綺麗な私を』『僕が死のうと思ったのは』『花束』など6曲を熱唱、MCでも「今日呼んでいただいてうれしく思います。誠心誠意心を込めて歌います」と語り、会場を埋め尽くした何万人もの観客から大きな拍手が贈られました。感極まりながらの渾身のライブでした。

中島美嘉さんはイベント終了後にインタビューにも応じ、昨年、ピンクドット沖縄でお友達のゲイカップル(那覇市の同性パートナーシップ証明取得第1号となったお二人)の結婚式にサプライズ出演したことをきっかけに、東京レインボープライドにも呼んでもらえて、「即答で」OKしたということ、今までのライブにもLGBTのお客さんが来ていて、メッセージをもらったりしていたことなどを語ってくださいました。「私はそれ(ゲイであること)は変だと思っていません。好きな相手と一緒にいることがなぜ悪いのか、私はわかりません」とおっしゃった時の毅然とした美しさが印象的でした。 

こうして、東京レインボープライド2017「フェスタ&パレード」は大盛況&大成功のうちに幕を閉じました。このような大規模で有意義なイベントを、ボランティアで運営しているスタッフの皆さんに、心から感謝申し上げたい気持ちです。ありがとうございました。


レインボーイベント年間スケジュール

GW前の4月23日(日)には、実は青森でもパレードが開催されました。2014年にたった3人だけで始めたレインボーパレードですが、毎年少しずつ歩く人が増えていって、今年はついに100人を超えました(桜が散るなか、歩いたそうです)。青森を応援しようという気持ちで東京や北海道などからも駆けつけた方たちもいらしたそうで、胸が熱くなります。ゴトウは青森出身なので、一度は参加しなければと思いつつ、日程がいつも合わず……来年こそは、と思っております。

さて、ここで、現在わかっている2017年のレインボーイベント(パレードや映画祭等のLGBTコミュニティイベント)の年間スケジュールをお伝えします。開催時期がまだ発表されていないイベントについては、昨年の開催実績をお伝えします。

2017年のトピックとしては、同性パートナーシップ証明制度が施行される札幌でパレードがひさしぶりに開催!ということが挙げられます。以前のレインボーマーチとは別の、新しい方たちが手がけるパレードだそうです。札幌はしばらく行ってないなぁという方など、ひさしぶりにお出かけしてみてはいかがでしょうか。

4月23日(日) 青森
青森レインボーパレード2017

5月6日(土)・7日(日) 東京
東京レインボープライド「フェスタ&パレード」

5月27日(土)・28日(日) 名古屋
NLGR+ 2017

7月2日(日) 東京
プレリュード2017 

7月8日(土) 青森
第12回青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル

7月8日(土)~17日(月祝) 東京
レインボーリール東京(旧・東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)

7月(日付未定) 那覇
ピンクドット沖縄(開催未発表。昨年は3連休の中日でした)

8月13日(日) 東京
第18回 東京レインボー祭り

9月16日(土) 名古屋
第6回 虹色どまんなかパレード(9/16~9/24にNAGOY RAINBOW WEEKも開催)

9月16日(土)大阪、17日(日)豊中、10月27日(金)~29日(日)京都
関西クィア映画祭 

9月23日(土) 和歌山
レインボーフェスタ和歌山

10月7日(土) 大阪
レインボーフェスタ!&関西レインボーパレード2017

10月8日(日) 札幌
さっぽろレインボーマーチ+ 

10月29日(日) 高松
第13回香川レインボー映画祭

11月(日付未定) 福岡
福岡レインボー映画祭(開催未発表。昨年は九州レインボープライドの前日でした)

11月5日(日) 福岡
九州レインボープライド2017

11月(日付未定) 熊本
レインボーパレードくまもと(日程未発表。昨年は11月第2土曜でした)



 

今月のトピック

この3月から4月の間にいろんなニュースがありました。ダイジェストでお知らせします。

3月3日、第40回日本アカデミー賞の授賞式が開催され、リアルなゲイの姿が描かれていたとして話題を呼んだ映画『怒り』で綾野剛さんとともにゲイカップルを演じた妻夫木聡さんが、最優秀助演男優賞を受賞しました(おそらく、同性愛者の役で日本アカデミー賞の男優賞または女優賞を受賞したのは、妻夫木聡さんが初めてです)。妻夫木聡さんは「これも綾野剛くんと一緒に作り上げた役で」と感謝の気持ちを表し、会場にいた綾野さんも目を潤ませ、ステージを降りた妻夫木さんと熱くハグし、「めっちゃうれしいよ」と声をかけていました。 

3月9日、LGBTへの差別をなくし、世間の人たちの理解を深め、より公正で平等な社会をつくるための法制定を国会議員に求める「レインボー国会」という院内集会が衆議院第一議員会館で開催され、平日の昼間にもかかわらず300名もの参加者が集まり、大会議室は熱気に包まれました。与野党の国会議員による超党派の「LGBT議連」のメンバーら12人のほか、来賓として三枝成彰さん、勝間和代さん、経団連や国連の方らが挨拶し、数名のLGBTからの訴えが行われ、法律の研究者の方の話で締めくくられました。

3月12日投開票の入間市議選で、FTMトランスジェンダーであることをオープンにして選挙に臨んだ新人候補・細田智也さん(25歳)が初当選を果たしました。FTMトランスジェンダーの方が議員になったのは初めてのことです(MTFトランスジェンダーとしては上川あやさんがいらっしゃいます)

同性カップルも一緒のお墓に入れる時代になりました。法的に夫婦と認められないことなどが壁となって、亡くなった後で一緒のお墓に入ることができない同性カップルのために、「多様な性に寄り添い、悩む人の助けになりたい」と、東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ 浄土真宗)が新しい形のお墓を提供することになったのです。

3月21日、札幌市は市議会予算特別委員会で同性カップルもパートナーとして公的に証明する「札幌パートナーシップ制度」を6月1日から施行することを明らかにしました。

オリイジン

『Oriijin(オリイジン)』 ダイヤモンド社
本体907円+税

3月23日、ダイヤモンド社からLGBTをフィーチャーした新雑誌『Oriijin(オリイジン)』が刊行されました。井ノ原快彦さん、小島瑠璃子さん、ヒロシさん、小林幸子さん、渋谷区長の長谷部健さんらのインタビュー、エスムラルダさんのエッセイなどのほか、「世界各国&都市のLGBTフレンドリー」という特集の大半を、ゴトウが書いております。ぜひお買い求めください!

3月24日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が策定した「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 持続可能性に配慮した調達コード」が発表され、性的指向・性自認に関する差別の禁止が盛り込まれました。東京五輪に提供する商品やサービスの製造・流通等に関わるすべての企業がLGBT施策の実施を求められることになりました

4月3日、国内の大学としては初となる、性的マイノリティ学生とジェンダー・セクシュアリティについて関心のある学生のためのリソースセンター「早稲田大学GSセンター」がオープンしました。

4月5日、大阪市が市内に住むゲイカップルを、さまざまな事情で実の親元で暮らせない子どもを一定期間、預かり育てる「養育里親」に認定しました。同性カップルが養育里親に認定されたのは全国で初。歴史的なことです。めでたく養育里親となったゲイカップルは、「里親制度というのは『子どもを育む役割を引き受ける』ものです。『子どもがほしい』大人のための制度ではなく、子どものために『育つ家庭』を用意する、子ども中心の制度です。多くの大人が、家庭を必要とする子どものために、『育てる役割』の担い手になることに関心を持ってもらえたらと思います」と語りました(素晴らしい!)

4月5日、東京都文京区は、性的マイノリティ(LGBT)が行政の窓口や学校で差別的な言動を受けないようにするため、区職員や教員向けに対応指針を策定しました。自治体による網羅的で具体的な指針の作成は全国的にも珍しいそうです。内容も、当事者へのきめ細かな配慮が素晴らしく、他の自治体の模範になるようなものになっています。

4月19日、同級生にゲイだとアウティングされたことが原因で一橋大法科大学院(ロースクール)の学生Aさん(当時25歳)が自死した事件について訴訟を起こした原告(遺族)側が記者会見を開き、これまでの訴訟で判明した事実や訴訟の進行状況、今後の訴訟方針などを明らかにしました。明治大学の鈴木賢教授は「彼が亡くなったのは、彼が同性愛者だからではない。同性愛者を差別し、蔑み、認めない社会があるから」「一橋大学は事件をもみ消し、事件から何らの教訓も引き出さないでスルーしようとしていました。裁判になった後も、亡くなった本人の責任だとしています。一橋大学はこの事件から教訓を引き出せていませんし、まだ責任を死者に押し付けようとしています」と語りました。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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