アドバイス1 家計の見直しは夫婦の健康管理が大前提
家計について考える前に、注意してほしいことが2点。まず、ご主人の健康面です。以前、うつになり休職されたわけですが、再発は避けなくてはなりません。うつになられた要因はわかりませんが、もし仕事の無理が影響しているのなら、ときに収入が下がっても仕事量をセーブすることも必要でしょう。もう一つが、奥様である紫音さんの体調です。データや相談文を拝見する限り、少々頑張り過ぎているかもしれない、という印象を受けます。もちろん、のんびり構える余裕はありませんが、紫音さんが倒れたら、それこそ大変です。転職活動もしているとのことですが、無理な仕事は禁物です。
夫婦とも収入アップは確かに望ましいですが、お子さんが3人とも幼いことを考えれば、安定した収入の継続がもっとも優先される事項です。したがって、健康管理を怠らず、決してオーバーワークをしないこと。これを基本としてください。
アドバイス2 ローンでしか買えないモノは買わない
では、家計を考えていきます。ただし、ご主人の収入には幅があり、年収ベースでどのくらいの額かが不明ですが、現状、収支で貯蓄に回せているのが、ボーナスも含めて毎月の積立投資3万5000円だけですから、平均の世帯収入は月額40万円程度と推測できます。したがって、それをもとに試算をしてみます。まず、基本的には安定的に貯蓄できる家計が本来の目標となりますが、当面は現状維持で「良し」とすべきでしょう。ローンの支払いが落ち着くまでは、貯蓄ペースを上がらないのも仕方がないと、割り切るということ。頑張り過ぎて、体調に無理がかかるような働き方をしては元も子もありません。焦らず、少なくとも自動車ローンが終わるまでの5年間は、現状維持を目指してください。
しかし、それはそれで簡単ではありません。現状維持とは、毎月の生活費をこれ以上増やさないことです。例えば、今後教育費が増えれば、その分、他の支出を抑えるなどして、全体の支出が増えないよう工夫する必要があります。そのためにも、現在、家計簿をつけていないなら、つけることをおススメします。無駄な支出、優先順位の低い支出が見えるようになります。
一方、絶対に避けて欲しいのは、これ以上の借り入れです。クレジットカードのリボ払いも同様です。「ローンを組めば何とかなる」ではなく「ローンを組まないと買えないモノは買わない」という発想に切り替えることが、今後のマネープランにとって不可欠だと言えます。
アドバイス3 現状で投資リスクは取れない
貯蓄はできていませんが、香港ドル建てで積立投資を行っています。しかも、積立額は月2400香港ドルですから約3万5000円、年間では42万円にもなります。超低金利の今、少しでも増やすことができれば、という気持ちはわかりますが、明日にでも解約して積立定期に切り替えるべきです。現状、元本を割るかもしれないというリスクを取る家計状態ではありません。とくに海外投資は為替も影響しますので、二重にリスクを抱えることになります。現金がほとんどなく、それこそ1000円でも無駄にできない状況ですべきは、大きく増やす可能性に賭けることではなく、コツコツと確実に貯めることなのです。
たとえ、収入がアップしなくとも、海外への積立投資を定期預金に切り替えれば、確実に5年後、200万円が貯まります。そのとき自動車ローンが完済となりますから、その分を全額貯蓄に回せば、それ以降の年間貯蓄額は80万円。さらに、その5年後には400万円貯蓄が上乗せされて、600万円になっています。ちょうど長女の方が18歳ですから、進学費用が用意できるということになります。
さらに10年後には壁の修繕費用のローンがなくなり、年間18万円が貯蓄に回せます。結果、年間100万円が貯められますから、次の5年間で新たに500万円が貯められ、次女、三女の方の進学費用もある程度、目処が立ってきます。
もちろん、これはあくまで計算上での話です。途中、お子さんが16歳になれば児童手当の支給がなくなります。その分、家計支出を削減し、貯蓄ペースを保つ必要があります。また、予期せぬ支出が発生する可能性もあります。それでも、コツコツ積立をし、まとまった額が貯蓄できていれば、慌てる必要はなくなります。精神的にも余裕が生まれるのです。そして、この状態に家計をすることが、最終的な目的でもあります。
アドバイス4 個人年金保険は教育資金の原資にもなる
最後に保険について。まず、ご主人加入の介護保険ですが、商品名から、介護保障を基本保障に医療保障、がん保障が付加されているようです。現状を考えれば、シンプルに必要な死亡保障を割安な定期保険等で確保する(死亡保障2000万円程度、保険期間15年)ことが、望ましいのですが、新たに保険加入が可能かどうかは判断が難しいところです。
加入できても、保険料が割高になる可能性もあります。各種共済保険などに問い合わせてみることは必要ですが、加入が無理なら、この介護保険を継続すべきです。また、団体割引がされているとのことですが、それでも高額です。ご主人の病歴が理由なのか、保障が厚いのか。後者であれば、少し保障額を減らして保険料を下げることを検討されてもいいでしょう。
個人年金保険については継続してください。ただし、教育資金が足りなくなった場合、解約返戻金をその原資に回すという条件付きです。そのために元本割れ(これまで支払った保険料の総額を解約返戻金が下回る)となっても、ある程度は仕方がありません。
問題は、長女の方が加入されている終身保険です。障害があり、心臓に病気を見つかったため、「生命保険を切るわけにいかず」と相談文にあります。
加入の目的が死亡保障であれば、もちろん考え方はいろいろですが、私は不要ではないかと考えます。死亡保障の本来の目的は、万が一のことがあった場合、遺された家族の生活費を確保するためのものです。お子さんは経済的に家計を支えてはいません。
さらに、商品名から類推して、数年後に保険料の更新があるのではないでしょうか。当然、コストはアップします。したがって、払済保険(※)にされてはと思います。
また、もし医療特約が付加されていて、それが必要というのであれば、継続する意味はあるかと思います。ただし、今後どの程度医療費が発生するかは不明ですが、一般的には、大きく医療費がかかっても、健康保険適用の治療には高額療養費制度が利用できます。医療費の実費分についても、保険料分を貯蓄していれば、そこから支払うことで、結果的に医療保険に加入しているのと、コスト面ではさほど差がないというケースが多いのも事実です。
しかし、保険に加入していることで気持ちの部分で安心できるというメリットもあります。それに重きをおくなら、継続加入でいいでしょう。一方、保険に頼らないと割り切れるなら、やはり払済保険(※)にされてはどうでしょう。
(※)保険料の支払いを止め、それまで支払った保険料分の保障と同等の保障を残す。ただし、一般に特約部分は解約となります。
相談者「紫音」さんから寄せられた感想
大変参考になりました。ただ、外資投資は今、解約すると全額返ってこず今しばらくはこのまま継続せざるをえないと言われました。クレジットカードを使わないに越したことはないですよね。本当に。焦るあまり収入アップばかりに目を向けていました。少しでも支出を減らし今は焦らず辛抱していきます。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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