運動と健康

女性の運動習慣にはリスクも?知っておきたい注意点

【アスレティックトレーナーが解説】女性の身体はデリケート。運動習慣は健康的で身体を美しく引き締めてくれますが、体調には配慮が必要です。また、競技選手の場合は、過度な食事制限による摂食障害、運動性無月経、骨粗鬆症に陥ることもあるので注意が必要。男性とは違う女性の身体的特徴と運動のコツ・注意点について解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

女性は筋肉を鍛えると身体全体が引き締まる!

トレーニングをする女性

女性はトレーニングを続けてもムキムキにはなりにくい

日本人男女の身長と体重について調べてみると12歳頃までは男女間の差はほとんどみられず、14歳以降になって顕著に体格差が現れます(2017年度の文部科学省学校保健統計調査資料より)。身長と体重はいずれも男子の値が高くなり、体型も大きくなります。また皮下脂肪と筋肉量については、女性は男性に比べて皮下脂肪が多く、逆に筋肉量は男性の60~65%程度と少ないことが知られていますが、これは女性が将来、妊娠・出産を経験することを想定したものと考えられます。

有酸素運動能力を示す最大酸素摂取量についても女性は男性の75%程度であり(日本体育協会「女性とスポーツ/身体的特徴について」)、このような身体的な特徴が顕著になってくると男性と同じように運動やトレーニングを行っても、相対的な筋肉量は増えるものの、男性のように筋肉がついてムキムキした体になることはあまり考えられません。女性が運動をして筋肉を鍛えると、筋肉が「大きく太くなる」というよりは「身体全体を引き締める」ことにつながると考えられます。

運動習慣のある女性が注意すべき、特徴的な三要素

ビュッフェでのスイーツ

過度な食事制限の影響によって精神的過食症におちいることも

運動を続けることで女性に起こりやすい医学的な問題点として、1997年にアメリカスポーツ医学会(ACSM)によって提唱されたものが「女性アスリートの三主徴(FAT)」です。

特に減量などが必要となる、体操、フィギュアスケート、陸上長距離、スキージャンプ、柔道などの競技選手に多くみられ、過度な食事制限を行うことで摂食障害を引き起こし、運動性無月経、骨粗鬆症とあわせてこの3つが相互に関連性をもつことが知られています。一般女性でもダイエットを目的として過度な食事制限をしてしまうとこれに当てはまる場合がありますので、必要最低限の栄養は確保し、運動とあわせて体重管理することが大切です。

■摂食障害
摂食障害には大きく神経性食欲不振症(拒食症)と神経性大食症(過食症)の2つに分けられます。これらは相反する行動のようにみえますが、拒食症から過食症へと移行する場合も多いといわれており、栄養失調、月経異常、低体温症にくわえ、嘔吐を繰り返すことで電解質バランスが崩れ、肝機能や心臓血管系にも悪影響を及ぼします。拒食症が進行すると生命の危険にさらされる場合もあるので注意が必要です。

■運動性無月経
これまでにあった月経(生理)が3ヶ月以上停止した状態である続発性無月経のうち、運動が原因と考えられるものを運動性無月経といいます。運動性無月経が起こる主な理由としては摂食障害などによる栄養不足、精神的・身体的ストレス、体重・体脂肪の減少、ホルモン環境の変化などが挙げられます。栄養不足(体脂肪減少)が続くと身体は視床下部-下垂体-卵巣という軸を介する生殖器系のホルモン分泌を休止させて生命維持に努めようとするため、運動性無月経になってしまうといわれています。

■骨粗鬆症
骨粗鬆症とは骨量が減少し、骨がもろくなって骨折しやすくなった状態をいいます。一般的には閉経後の高齢者に多くみられますが、運動性無月経が長期にわたって続いてしまうと卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが減少し、骨量の低下が進行して疲労骨折などを起こしやすくなることが知られています。

女性アスリートの三主徴(FAT)がもたらす影響

体重を気にする女性

女性アスリートの三主徴は身体のむくみや疲労感を伴うことも多い

摂食障害、運動性無月経、骨粗鬆症の3つは相互に関連し、女性の身体的コンディションに大きく影響します。特に体重を減らしたいと考えている女性は必要以上に食事制限をしていないか、運動強度は適切かといったことを日頃からチェックするようにしましょう。こうした三主徴がみられるようになると、女性の身体はさまざまな症状がみられるようになります。

■短期的な影響
  • 競技パフォーマンスの低下
  • 慢性的な疲労状態(オーバートレーニング)
  • 脱水症状
  • 血液中の電解質バランスが崩れる
  • 競技に対する集中力やモチベーションの低下
  • 睡眠不足
  • 情緒不安定、うつ症状 等々

■長期的な影響
  • 思春期発達の遅れ(10代の低身長)
  • 除脂肪体重の減少(脂肪から分泌されるレプチンが不足し無月経を引き起こす)
  • オーバーユース(使いすぎ)によるスポーツ障害の完治が遅い
  • 疲労骨折
  • 本格的な摂食障害(神経性食欲不振症、神経性過食症)
  • 栄養欠乏症(鉄欠乏性貧血等)
  • 骨粗鬆症の早期発症 等々 
こうした影響が長期にわたって続いてしまうと、成長段階において高齢者によくみられる骨粗鬆症や、それに伴う疲労骨折などがみられるようになり、無月経など生殖機能不全が続いてしまうと将来の妊娠・出産においても大きな影響を及ぼすことが懸念されます。またこうした影響があることを知らない女性アスリートが多いことも懸念材料の一つです。過度な食事制限や長期的に続く激しい運動は自分自身の将来的な健康を脅かすことを理解しておきましょう。

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