子育て/子供の性格

人一倍敏感・繊細な子の親が知るべき5つのこと

人見知りや場所見知りが激しく、親として、「将来この子は社会でやっていけるのだろうか?」と心配してしまうこともある、人一倍敏感・繊細な子「ハイリーセンシティブチャイルド」。「人よりも内気で敏感な子」に接する上で、最も注意したいポイントを紹介します。

長岡 真意子

執筆者:長岡 真意子

子育てガイド

<目次>
 

「ひといちばい敏感な子(ハイリーセンシティブチャイルド)」の特徴

人一倍敏感・繊細な子の親が知るべき5つのこと

「ひといちばい敏感」な子も、子ども時代の接し方によって、社会で生き生きと力を発揮できる大人に育ちます。

よく知らない人の前では、下を向くなどしてほとんど話さない。周りの子どもが楽しそうに遊んでいても、慣れない場ではなかなか親から離れない。初めての体験や変化に適応するのが苦手。少しのことでもスグに泣いたり興奮したりと気持ちが高まりやすい。

服のタグが気になったり、光や音や匂いにも敏感。相手の声のトーンや表情や仕草も敏感に感じ取る。外では「聞き分けがよい子」とみなされることもあるけれど、家族の前では驚くほど我がままになることがある。

こうした特徴を持つ子どもを、心理学者のエレイン・N・アーロン氏は、「ハイリーセンシティブチャイルド(ひといちばい敏感な子)」と呼びます。

一見「発達障害」とも特徴が重なりますが、「自閉症スペクトラム」と異なるのは、相手の気持ちがよく分かり、共感力が高いこと。また「注意欠陥症」とも異なるのは、周りへの敏感さゆえに気がそれやすくとも、目の前の物事にも敏感であるため、取り組む課題なども最後までやり通せることにあるといいます。

こうして日常生活では表立った「困難さ」が見られないため、「ハイリーセンシティブチャイルド(ひといちばい敏感な子)」とは、「発達障害」のような医学的な診断ではなく、「個性のひとつ」としてとらえられています。そしてこうした「ひといちばい敏感な個性」を持つ子とは、5-6人に1人近くの割合でみられるといいます。
 

「ひといちばい敏感」なのは生まれつきの性質?

冒頭のような特徴は、赤ちゃん時代から予想できるという説もあります。例えば心理学者のジャローム・ケーガン氏は、生後数ヵ月の時点で、周りからの刺激に敏感に反応する「高反応児」と、比較的鈍感に反応する「低反応児」が見られるといいます。

そして「高反応児」は、年齢を経るにつれ「内気」「シャイ」「引きこもりがち」となり、「低反応児」は、「社交的」で「大胆」となる傾向にあるというのです。(*)

とはいえ、乳児期から「高反応」の特徴を示しながらも、中には、ティーンになる頃には、極端な内気さも見られず、比較的社交的で大胆に育つ子もいるといいます。

そして多くの研究者が、「大きくなるにつれ、こうした違いが生まれるのは、周りがその子にどう接してきたかが大きい」と一致しています。では、「ひといちばい敏感な子」が、年を経るにつれ引きこもってしまわないために、どんなことを気をつけたらいいのでしょうか?人一倍敏感な子・ハイリーセンシティブチャイルドが健やかに育つために気を付けたいことを5つ紹介します。
 

1:人一倍敏感な子には、時間をかけ慣れさせる

波打つ海に入ることを恐がるようならば、時間をかけ少しずつ慣れていきましょう。

波打つ海に入ることを恐がるようならば、時間をかけ少しずつ慣れていきましょう。

「敏感な子」を、ますます内気で引きこもりがちにしてしまう接し方には、「2つ」あるとされます。例えば、海水浴場で水の中に入るのが恐いという子に対しての、以下のような接し方です。
  • 無理やり引っ張って水につからせる
  • 「恐いのなら止めておきなさい」と一切水に入らせない
では、どうしたらよいのかというと、無理やり水の中に投げ入れるのでも、一切水に入る機会を与えないのでもなく、「少しずつでも慣れさせる」とのこと。

例えば、海を恐がる子とは、初めはビーチで砂山を作ったりして遊びます。遊びに夢中になる中で、砂山にかける水を汲むために、次第に波際に近寄るようになるかもしれません。足の先を水につけられるようになったら、次は一緒に浅瀬に座って波の動きを感じてみましょう。このように、「少しずつ慣れていく」ようにするというわけです。

周りの子より慣れるのに何倍も時間がかかります。「なぜ他の子は初めから嬉しそうに水に入って遊んでいるのにうちの子だけ……」とやきもきすることもあるかもしれません。それでも長い目で見たら、必ず、時間をかけ少しずつでも慣らしてやってよかったと思う日がくるでしょう。
 

2:人一倍敏感な子へ頭ごなしの「厳しいしつけ」は禁物

ひといちばい敏感な子(ハイリーセンシティブチャイルド)への「厳しいしつけ」は、ますます自分の殻に閉じこもることを助長してしまいます。

ひといちばい敏感な子(ハイリーセンシティブチャイルド)への「厳しいしつけ」は、ますます自分の殻に閉じこもることを助長してしまいます。

大声で怒鳴りつけても平気な子もいますが、「ひといちばい敏感な子」にとっては、何倍ものストレスになるものです。ますます自分の殻に閉じこもってしまいかねません。また厳しいしつけは、元々「周りのルール」にも敏感な子にとっては、過度な心配を引き起こすだけです。

「好ましくない行為」を目にしたら、まずは親自身の気持ちを落ち着け、なるべく穏やかなトーンで、諭すように向き合ってやりましょう。そう心がけることで、「敏感な子」が恐怖心や心配で心を硬直させることなく、こちらの伝えたいことも、その子の心に届きます。
 

3:人一倍敏感な子には「~したら恥ずかしいでしょ」と言わない

「お友達は皆楽しそうに遊んでいるのに、あなただけママの足にくっついて恥ずかしい!」「目に水が入ったくらいでそんなに騒ぐなんて、恥ずかしいわよ!」などの言葉は、避けましょう。

「恥ずかしい」という気持ちは、周りの様子にも「敏感な子」をますます引きこもりがちにしてしまうと分かっています。
 

4:敏感な子にシャイ・内気・神経質といったレッテルを貼らない

周りの物事や、自身の感情などにも「ひといちばい敏感」であることと、「シャイ」や「内気」や「神経質」であることとは同じではありません。後者は、社会的に作られれていくものとされています。

例えば、初めての場で、すぐにお友達の輪に入ることができないのも、周りが気にも留めない細部や深部に渡って、観察しているからかもしれません。そこへ、周りの大人が「この子は本当にシャイなんだから」と声をかけ続けることで、「シャイ」や「内気」な子になっていくというわけです。子どもの前では、「シャイ」・「内気」・「神経質」といった言葉を用いないようにしましょう。
 

5:敏感さのよい面を励まし、自己肯定感を高める

「敏感な子」が持つ「繊細さ」や「共感力の高さ」を、長所として励ましてやりましょう。例えば、「いちいちそんな小さなことで動揺しないの!」ではなく、「皆が気がつかないようなことまで感じられるのね!」と声をかけてやります。お友達が泣いてしまったと立ちすくんでいたら、「○○ちゃんが泣いているのを心配してあげて優しいね」と共感力の高さを認めてやりましょう。

人見知りをしたり、新しい物事にすぐには足を踏み出せないのも、周りの物事や刺激を敏感に感じ取っているため。それはまた、感受性がとても豊かであるという証です。大胆に動き回ったりお友達とはきはきと交流するといった活発さが見られなくとも、「敏感な子」の内面世界とは、それはそれは豊かで活発なもの。

文章や絵や楽器など、豊かな内面世界を「表現する手段」を与え培うのも、その子の自信に繋がるかもしれません。
 
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敏感であることの「良さ」を大切に、自信に溢れ、持てる力を発揮できる大人へと育つよう、サポートしてやりたいですね。




参考資料:
『The Highly Sensitive Child』 by Elaine N. Aron

(*)Kagan, Jerome and Snidman, Nancy. The Long Shadow of Temperament. Cambridge, Massachusetts: Belknap Press, 2004.

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