ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

新演出で楽しむ!ミュージカル『アニー』鑑賞ガイド(5ページ目)

日本で33年間連続上演され、“国民的ミュージカル”との呼び声も高い『アニー』。2017年に山田和也さん演出でリニューアルされ、改めてその魅力が浮き彫りとなりましたが、そもそもどんな作品でしょうか? 実は大人にこそ響く作品のあらすじや見どころ、作品の時代背景やキャラクターを、藤本隆宏さん、青柳塁斗さんへのインタビューを交えてお届けします!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

2018年版『アニー』観劇レポート
さらに滑らかな運びの中で、
各キャラクターが生き生きと活躍する舞台

『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

『アニー』2018年 アニー役・宮城弥榮(wキャスト チーム・モップ)(C)Marino Matsushima

オーケストラが軽快にオーバーチュアを奏で終わると、するすると幕が昇り、孤児院が現れる。閉塞空間の中ですっかり煮詰まった孤児たちとハニガンの生活が描かれ、場面はそこをまんまと抜け出したアニーとともに街中へ。しかし大恐慌のさなか、彼女はホームレスの人々が集う集落で警官につかまり、孤児院へ連れ戻される。ハニガンに怒られるアニーだが、偶然訪れた大富豪ウォーバックスの秘書グレースの目に留まり、邸宅でクリスマスを過ごすことに。

明るく機転のきくアニーを気に入ったウォーバックスは、彼女を養子にと望むも、彼女の本当の夢が本当の両親との再会であることを知り、莫大な懸賞金をかけて捜索を開始。そのニュースを聞いたハニガンの弟で詐欺師のルースターは、よからぬアイデアをひらめかせる……。
『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

『アニー』2018年(wキャスト チーム・モップ)(C)Marino Matsushima

山田和也さんによる新演出となって2年目の今年は、滑らかでスピーディーな展開に磨きがかかり、アニー役の新井夢乃さん、宮城弥榮さんをはじめとする子役の皆さんの生き生きとした姿が引き立ちます(wキャスト2組とも拝見)。

いっぽう大人キャストも各キャラクターを鮮やかに演じ、前回から続投のウォーバックス役・藤本隆宏さんはいっそうの“ブルドーザー”ぶりで、登場からしばらくはまるでトランプ大統領のような風情。成功のためにはかなり強引な手法も使ってきたのだろうと想像させ、後半との落差が際立ちます。
『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

今回が初役となるグレース役・白羽ゆりさんは抜群の安定感ある歌声はもちろん、一挙手一投足に品があり、“優雅さ”という役名そのもの。終盤、ウォーバックスから暗に求婚され、どぎまぎする様も可憐です。

ハニガン役の辺見えみりさんは、(ほぼ)どの衣裳のスリットからものぞく脚線美が女性性をもてあますハニガンの雰囲気を醸し出し、鬱積したものがとげとげしさとなって表れてしまうことがナチュラルな台詞からよく伝わってきます。
『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

そして今回最も目を引くのが、青柳塁斗さんと山本紗也加さん演じるルースターとリリーの悪党カップル。登場の度に切れの良い身のこなしとせりふ回しで、ユーモラスでありながらもどこか油断ならない緊張感をもたらし、アニーの親に扮するくだりでは迫真の詐欺師っぷりを見せています。

特にアニーの(偽の)親としてウォーバックスに近付く際、へつらっているように見せても抜け目なく何かを狙う、山本さん演じるリリーが絶品。賞金のことを知らずに来たという設定だったのにウォーバックスから“5万ドル”という言葉を聞いたとたん、欲深い二人が反射的に“おーーっ”とアニメーションのような動きで吸い寄せられるさまも捧腹絶倒。続投コンビならではの成果と言えるかもしれません。
『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

『アニー』2018年(C)Marino Matsushima

ユーモアと涙とスリルをほどよく織り交ぜ、最後には大団円となる物語。華やかさに満ちた幕切れで、今年も年齢を問わず、誰もが笑顔で帰途に就くことのできる舞台に仕上がっています。

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