ユニークなRRレイアウト。スタイルはシンプルだが凝っている
新車価格が100万円台で、諸経費を加えても乗り出し200万円前後に収まる、なんて輸入車は、とても少ない。わずかにVW up!と、フィアット500、そしてこのルノートゥインゴぐらいのもの。輸入車ワールドへの入門車であると同時に、どのモデルも個性は立派にガイシャ級、というのが、このクラスの魅力である。
トゥインゴの魅力は何か。まずは、エクステリアデザイン。シンプルだけど凝っていて(例えばボディサイドのキャラクターライン)、キリッとしているけれどもどこか可愛げのある(例えばフロントマスク)、そんな雰囲気に包まれていること。そして、インテリアに目を向けると、これまたペダルカーかと思うほどシンプルで、仕立ても幼稚園級に可愛らしい。アソビ心に貧しい日本人からすれば、オトナ用コドモ服みたいなもの。ハマる人にはハマるが、気嫌いする人もいらっしゃるはず。とはいえ、個性とは、そういうものだから、それでいい。
ただし、見るからに安普請で、本当に安いクルマなんだからそれで仕方ないだろう、といういかにもフランス的な合理精神も目につく。それをデザインでカバーした、というにはあまりに演出がポップ過ぎるので、何だか散らかる前の幼児ルーム風に見えてしまった。
もうひとつの魅力は、そのユニークなエンジンレイアウトにある。このクルマはRRといって、エンジンリア置きのリア駆動で、言ってみればポルシェ911のミニチュア版だ。クルマ事情通ならば、トゥインゴがダイムラー社との協業で生まれたスマートの兄弟車であることなども先刻承知だろう。ルノーもまた、RRを得意としているから、互いの戦略が一致した。
RRのメリットは、コンパクトなサイズに十分なスペース効率を確保できること。つまり、実用性の高いスモールカーを設計しやすい。さらに、小回りが驚異的に効くため、取り回しがラク。そして何より、乗り味も独特。多くの若い人が免許を取って初めて乗るのがコンパクトカー。だからこそ、個性を重視する、というのが欧州ブランドのクルマ造りと言ってよさそう。
乗れば乗るほどに親しみがわいてくる
RRレイアウトによりフロントのサスペンションやステアリング機構の配置に自由度が増したことにより、前輪切れ角を49度とし最小回転半径4.3mを実現した。中立付近で正確な操作感が得られるバリアブル ギアレシオステアリングを装着した
実際、その走りはびっくりするほど快活で、印象深い。乗り始めこそ、まるで一体感がなく、バラバラに動いているような錯覚に見舞われる。何だか未完成のクルマに乗った気分なのだが、五分、十分と経つうちに、クルマが少しずつ我を取り戻すというか、各部が引き締まっていって、しまいにはドライバーもその一部分として取り込まれ、妙にワクワクとした気分になるから、面白い。なるほど、それは海外旅行にも似ていて、歩き始めこそ見知らぬ土地で緊張するけれども、歩けば歩くほどに慣れて楽しくなっていくアノ感覚に似ていなくもない。
トゥインゴには、4つのグレードが用意されている。3ペダルの5速マニュアルの設定があるのも、昔ながらの欧州車ファンには嬉しいところ。その5MTモデルは、ゼンMTと言って、71psの自然吸気1Lエンジンを積む。その他のグレード、ゼンEDC、インテンス、インテンス・キャンバストップは、いずれもデュアルクラッチ付き。
ただし、EDCと呼ばれるデュアルクラッチは、制御もおおざっぱで、シングルクラッチを少し滑らかにしたという程度のシロモノ。スムースに走らせるためには、慣れとコツが必要で、そのあたりもまた、逆に、飽きないキャラと言えるかも。いきなり水のように馴染んでしまうパートナーよりも、乗れば乗るほどに親しみのわいてくるパートナーのほうが、飽きもこず、結果的に長い付き合いになるのかもしれない。
オススメは、腕に覚えがあるのなら3ペダルのゼンMT、と言いたいところだけれども、一般的にはゼンEDCかインテンスだろう。トゥインゴのポップなキャラには、キャンバストップも似合う。ゼンEDCにプラス9万円でアルミホイール、もう+10万円でキャンバストップ、と考えると悩むところだけれども、性能や機能に大差のあるわけじゃない。ここはフランス人の合理精神を見習って、安いクルマなんだから安ければ安いほうがいい、とゼンEDCを選んで正解、だと思う。