肌寒さとうららかさ、そして花粉(!)がないまぜとなったこの季節。今回は話題の『キューティ・ブロンド』日本初演など、春の話題作、そして“ミュージカルの日(3月26日)”のイベント情報もお届けします。随時追加掲載する観劇レポートもどうぞお楽しみに!

*3月の注目!ミュージカル
『エルコスの祈り』3月18日初日←観劇レポートUP!
『キューティ・ブロンド』3月21日初日 演出家インタビュー&稽古場レポートUP!

*注目のミュージカル・イベント
ミュージカル・スペシャルトークショー『大劇場/小劇場ミュージカル それぞれの魅力』3月26日開催

*4月の注目!ミュージカル
『きみはいい人 チャーリー・ブラウン』4月9日初日

*AllAboutミュージカルで特集した(予定の)ミュージカル
『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!』3月17日初日 出演・福井晶一さんインタビュー&稽古場レポートを掲載!
『オペラ座の怪人』3月25日初日 稽古場レポート&佐野正幸さん・山本紗衣さん合同インタビューを掲載!
『紳士のための愛と殺人の手引き』4月8日初日 出演・ウエンツ瑛士さんインタビューを掲載!
『アニー』4月22日初日 稽古場レポート&キャスト・スタッフインタビューを掲載予定

キューティ・ブロンド

3月21日~4月3日=シアタークリエ、その後4月30日まで愛知、高松、大分、福岡、広島、静岡、福井、大阪を巡演
『キューティ・ブロンド』

『キューティ・ブロンド』

【見どころ】

おしゃれな女の子が恋人に振られ、一念発起して弁護士を目指すさまを描いて大ヒットしたハリウッド映画『キューティ・ブロンド』を舞台化、07年にブロードウェイで初演されたミュージカルが本邦初演。主人公エルを神田沙也加さんが演じるほか、佐藤隆紀さん、植原卓也さん、樹里咲穂さん、長谷川初範さんらが出演します。

ローレンス・オキーフ&ネル・ベンジャミンによる軽快な音楽に乗せテンポよく進むストーリーは、とにかくポジティブ! はじめは恋のために、途中からは“法律で人を救う”使命感を持って頑張るヒロイン、そして彼女に巻き込まれてゆく周囲の人々の姿に、観ている側は鼓舞されること受け合いです。神田さんはもちろん、『エリザベート』での重厚な役どころから一転、朴訥な青年を演じる佐藤さんからアンサンブルまで、キャスト一人一人のチャーミングな演技もお見逃しなく!

【演出家・上田一豪さんインタビュー】
上田一豪undefined84年熊本県生まれ。早稲田大学在学中にミュージカル研究会に所属。劇団TipTapを旗揚げ、オリジナル作品を作・演出。東宝演劇部契約社員として様々な大作にも携わる。(C)Marino Matsushima

上田一豪 84年熊本県生まれ。早稲田大学在学中にミュージカル研究会に所属。劇団TipTapを旗揚げ、オリジナル作品を作・演出。東宝演劇部契約社員として様々な大作にも携わる。(C)Marino Matsushima

――今回、東宝での初演出にあたって『キューティ・ブロンド』を選ばれたのは?

「何本か候補があって、最終的に2本に絞ったところで、神田沙也加さんがこの期間、出演していただけるかもと聞き、“それなら『キューティ・ブロンド』しかないでしょう!”ということになりました」

――ヒロインのエル役が神田さんにぴったり、と?

「チャーミングなところはもちろんですが、何より、生き方がぴったり。これまで(演出部スタッフとして関わった)『ダンス オブ ヴァンパイア』などの現場で彼女を見てきて、ひたむきに、誰よりも努力する、という印象がありました。演出家が求める以上の地点にどうやったら辿り着けるかを常に考えている神田さんなら、きっと作品を引っ張ってくれると思えたのです。実際、開放的で一生懸命すぎて一見おバカに見えるけど、実はすごく賢いエルを、彼女は非常にわかりやすく演じてくれています。演出家としてはご一緒していて楽しくて、頼もしいです。」

――『キューティ・ブロンド』ブロードウェイ版は、アメリカのティーンエイジャー向けのコメディ番組のノリというか、観客の歓声を想定した間合いで作られていますね。
『キューティー・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

「それもそうだし、何より、映画版を御覧になった人を想定しているかのような、ものすごいスピードで進んでいきます。日本でも幸いなことに、映画版が好きで舞台も観ようと思ってくださった方が多いようなので、その点ではあまり心配していませんが、ほぼ全編途切れることなく音楽で繋がっているので、翻訳作品ではいつものことですが、訳詞に苦労しました。基本情報だけではつまらなくなってしまうので、簡潔に、かつ“おかしな”言葉を探しましたね」

――“マジヤバイ”とかですね。

「台本が書かれた時代と今とでは若干のタイムラグがあるので、時代的にちょっとだけふくらみを持たせ、10代から30代くらいの女性が“分かるなあ”と思っていただける言葉をあてるようにしています」

――アイリッシュ・ダンスにチアリーディングと、アメリカの白人社会ではお馴染みの要素が盛り込まれた作品でもあります。

「おそらくアメリカのお客さんは、あそこで突然チアリーディングが出てきただけで盛り上がるのだと思うけど、僕らが見ると一瞬、“ど、どうした?!”と思う。でもその“どうした!?”が面白いんだと思うんです。
『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

例えば『モンティ・パイソンのSPAMALOT』というミュージカルの冒頭に(唐突に)フィンランドの歌が出てきます。本来は(モンティ・パイソンというコメディ・グループが過去に発表した)fish slap danceというスケッチ(場面)の焼き直しなんですが、モンティ・パイソンを知らない人には、意味のわからない歌がいきなり挿入されてる馬鹿馬鹿しさがおかしい。今回のチアリーディングも、そんな感じなのかなと。とにかく、馬鹿馬鹿しく出演者の熱のこもったパフォーマンスで、納得させる。チアにしてもアイリッシュ・ダンスにしても、今回皆さん、かなりの熱量で頑張ってます」

――女性やゲイへのキワどいジョークもアメリカ的ですね。

「作者自身もブロンドの女性だし、実際にゲイのお友達がいる“当事者だから言える自虐ジョーク”だと思うんです。対象への愛がベースにある。そもそも本作の原題“Legally Blonde”はLegally Blind(法律上の失明)という言葉をもじったもので、非常にアイロニック。でもすべてに愛があるから(ジョークも)言い合えるし、(排他的ではなく)ポジティブ。そんな愛に溢れたコメディなんです」

――エルを見守る先輩弁護士エメット役は佐藤隆紀さん。ちょっと意外な配役でした。

「このキャラクターって、(貧しい境遇に生まれて)ずっと努力をしてきたけど、不器用で(弁護士事務所への就職など)次のステップに進めない。一歩踏み出せない男なんだけど、そういう人って、見てて“しっかりしろ!”と思っちゃう(笑)。でもそれで嫌われるのではなく、応援したいと思わせる人がほしかった。あったかさとか、情けなさがキュートに見えるものを持ってる人と考えた時、すぐ佐藤さんがいい、と思ったんです。『エリザベート』の稽古場で彼を見ていたので、彼が本来持っている、人に対する優しさ、素朴さがぴったりだな、と」

――どんな舞台が期待できそうですか?

「とにかくスピーディーで、深く考えずに楽しめると思います。心が疲れていたり、仕事がうまくいってない方が御覧になっても“楽しかった!”と笑顔で帰ってくれるといいな、と思っています」

【稽古場レポート】
『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

夕方に訪れた稽古場は熱気がむんむん。第一幕の通し稽古は、管楽器入りの華やかなバンド演奏に彩られて始まります。お洒落で社交的な大学生のエルは、完璧な彼氏からプロポーズされる……筈が、「別れよう」と言われてしまう。上院議員を目指す彼に、私は見合わないの?と一度は落ち込むものの、「それなら私も!」と一念発起。猛勉強の末、彼を追ってハーバード大学法学院へ……という目まぐるしい展開が、映画さながらのテンポで描かれてゆきます。

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

始まってすぐに感じられるのが、フレッシュな若手が多いアンサンブルの“熱”。本作をステップとして羽ばたこうとするかのような気迫を秘め、生き生きと躍動する彼らがまず、爽やかです。そして彼らの熱量に圧倒されることなく、眩しいオーラを放ちながらセンターに立つのが、神田沙也加さん。お洒落で明るく、ポジティブにして強い芯を持つエルを、驚くほどのフィット感で演じています。本作に多々登場する“笑い”も達者な間合いでこなしており、コメディエンヌの資質は、大。いっぽう、エルを振ってしまうワーナー役の植原さんは、登場の瞬間からダンスの才能を生かしたポージングで要所要所をキめ、歌声も二枚目。嫌味に見えがちな役どころを魅力的に見せています。そしてエルを見守る先輩、エメットを演じる佐藤隆紀さんは、穏やかで優しいオーラが終始漂い、1幕も3分の2を過ぎてやっと歌い始めると本領発揮。朗々たる歌、というより多分に演劇的なエルとの掛け合いナンバーを、安定感たっぷりに聞かせてくれます。

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

『キューティ・ブロンド』稽古より。写真提供:東宝演劇部

ミュージカル・コメディでは構造的に、華やかな場面が多ければ多いほど、静的なシーンが退屈に感じられることもありますが、この日の稽古ではそのような場面はまるでなく、一気に一幕終わりまで疾走。ダンスも大人数の登場もなく、エルと出会った美容師ポーレットが滔々と恋愛観を歌う(静的な)くだりも、ポーレット役・樹里咲穂さんの力強い歌唱が場面を立体的に膨らませ、強い印象を残します。

主人公役からベテラン、そして若手に至るまで、それぞれに輝く出演者たち。このカンパニーなら、本番では飛び切りの舞台を見せてくれるのでは。浮き立つような心をおさえ、稽古場を後にしました。

エルコスの祈り

3月18日~4月4日=自由劇場
『エルコスの祈り』

『エルコスの祈り』

【見どころ】

今から50年後の世界、徹底的な管理教育で子供の個性を奪う“ユートピア学園”に、経費削減のためロボットが送り込まれる。生徒一人一人の個性を理解し、深い愛情を注ごうとするロボットに、子供たちは心を開き始めるが、人間の教師たちはロボットに仕事を奪われると思い、悪だくみを始める……。

近未来の設定とは言っても、たぶんに現代の画一的な教育を思い起こさせ、劇団四季のファミリー・ミュージカルの中でも大人たちに“考えさせる”テーマを持つ『エルコスの祈り』。管理教育の徹底ぶりが、加藤敬二さんのスピーディーな振付を一糸乱れず踊って見せる俳優たちのダンスによって十二分に表現され、後半はエルコスを巡る人間たちの葛藤ドラマとして観る者を引き込みます。15~16年の年末年始に自由劇場で上演、全国公演を経て東京に戻ってきたカンパニーの、さらに練り上げられたパフォーマンスが期待できそうです。

【観劇ミニ・レポート】
『エルコスの祈り』写真提供:劇団四季

『エルコスの祈り』写真提供:劇団四季

15年の暮れに自由劇場で開幕以来、全国で巡演を続け、また自由劇場に帰ってきた“エルコス”。1年あまりの旅を経て、シリアスな中にもコミカルな要素を多くまぶした舞台はさらにメリハリを強め、生徒たちが珍妙な“国民体操”をさせられるシーンなどでは、客席からリラックスした笑いが起こっています。

物語は非人間的ともいえる徹底した管理教育のもとにある子供たちが、人間ではないロボット=エルコスによって人間性を取り戻す、という皮肉に満ちたものですが、このエルコスに動機を与えるのが、開発者であるストーン博士の“祈り”。この日演じた深水彰彦さんの歌唱には慈愛が滲み、鈴木邦彦さん作曲の憂いに満ちたメロディも手伝って心に響きます。そしてそんな博士の思いを一身に受けて生まれたエルコス役、古田しおりさんは“感情を持たない”ロボットでありながら、その行動は優しさに溢れているという難しい役どころを、安定の歌声ときれいな所作で好演。エルコスが悪者たちの悪だくみによって……という終盤、思わず目頭をおさえる観客もあちこちにお見受けしました。
『エルコスの祈り』写真提供:劇団四季

『エルコスの祈り』写真提供:劇団四季

なお、筆者は今回、6歳の子供と鑑賞。小学校入学直前のタイミングに本作を観て「自分が行く学校もユートピア学園みたいなところ?!」と怖がるかな、と親の側はちょっぴり心配でしたが、鑑賞後、子供にはポジティブな印象が残ったらしく、「エルコスは私の心の中にいるんだよね」と頷いていました。ただ、白塗りの悪役先生たちは最後まで怖かったらしく、終演後ロビーでの“お見送り”では、彼らがいるゾーンを避けて通行……。なお、公演プログラムには現在、日本で活躍中の様々なロボットや、ロボットに関する児童文学を紹介した読み物ページも。子供は「これ、科学博物館で触ったことある!」などと写真を指差し、帰路にも“エルコス”の世界を楽しんでいました。


ミュージカル・スペシャルトークショー『大劇場/小劇場ミュージカル それぞれの魅力

3月26日18時~19時半=GOOD DESIGN Marunouchi 

『第二回東京ミュージカルフェス』

『第二回東京ミュージカルフェス』

【見どころ】

日本におけるミュージカル文化の普及を目指し、俳優(『エリザベート』等)・ミュージカル映画監督の角川裕明さんらMusical Of Japanが昨年、立ち上げた「東京ミュージカルフェス」。“ミュージカル”にちなんで3月26日に行われた昨年に続き、第二回の今年は5日間にわたり、都内各地でイベントを開催します。

そのラスト・イベントとして行われるのが、ミュージカル俳優と作曲家によるトークショー。観客を別次元に誘う大劇場ミュージカルと、日本で少しずつ増えてきている小劇場ミュージカルそれぞれの魅力を、双方で活躍する木村花代さん・上野聖太さん(お二人ともこの日は『キューティ・ブロンド』に出演中)と若手作曲家・音楽監督の小澤時史さんのトークで解き明かします。小ぶりの会場ですが最後には歌唱の披露も予定され、ミュージカルの楽しさ奥深さ、そして出演者たちの魅力をたっぷり味わえる、文字通り“スペシャル”なトークショーとなりそうです。(司会進行は松島まり乃が担当)

きみはいい人、チャーリー・ブラウン

4月9~25日=シアタークリエ、以降5月10日まで福岡、大阪、愛知を巡演
『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』

『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』

【見どころ】

世界で最も愛されているキャラクターの一人(一匹)、スヌーピー。その原作漫画『ピーナッツ』の世界観を舞台化した1967年の名作ミュージカルが、新キャストを得て日本では久々に上演されます。みんなに「いい人」と呼ばれるチャーリー・ブラウンが「いい人って何だろう」と疑問を抱き、友人たちと様々な経験を重ねてゆくが……。シンプルにして深淵な人生のテーマが、『SHOW-ism』シリーズ等を手掛けてきた小林香さんの演出のもと、チャーリー・ブラウン役・村井良大さん、スヌーピー役・中川晃教さんらによって描かれます。簡明だけど何度もかみしめたくなる台詞満載の作品を今回の若手キャストがどう表現するか、注目が集まります。