そんな都会のオアシスが一段と華やかになるのが、寒い冬の後にやってくる春の季節。中でも毎年多くの人が花見を心待ちにしている桜の風景に注目が集まります。
東京で楽しめる数々の桜の風景の中で、ガイドが毎年必ず逢いに行く桜があります。その桜とは、駒込・六義園(りくぎえん)にある「しだれ桜」。日中はもちろんのこと、ライトアップされた夜桜も美しい六義園のしだれ桜をご紹介します。
<目次>
大老・柳沢吉保が造った回遊式庭園、六義園
六義園(Googleマップ)は、東京都文京区駒込にある庭園です。300年以上の昔、徳川幕府五代将軍・綱吉の時代に老中、大老まで上り詰めた大名・柳沢吉保により7年の歳月をかけて造られました。真ん中に配置した池(大泉水)の周囲をぐるっと散策すると、景色の変化が楽しめる回遊式庭園となっており、1938年(昭和13年)に旧・東京市の庭園として一般公開されています。
ソメイヨシノとは違った魅力がある「しだれ桜」の咲く風景
春夏秋冬それぞれの季節にあわせてさまざまな美しい風景が楽しめる六義園ですが、たくさんの人が逢いに来るしだれ桜の木が正門近くの広場に植樹されたのは昭和30年代に入ってからのこと。 国内でよく見られるソメイヨシノとは異なり、このしだれ桜は長寿となる樹が多いエドヒガンと呼ばれる品種です。 余談になりますが、ソメイヨシノは六義園の近くにあった染井村においてエドヒガンとオオシマザクラの交配により育成された桜の品種。ソメイヨシノではありませんでしたが、染井村に近かった六義園が現代の桜の名所となったのには何かご縁があるのかも知れません。圧倒的なボリュームのしだれ桜の見頃は3月中旬~下旬
植樹から70年近くの歳月を経た今も六義園のしだれ桜はなおゆっくりと成長を続けており、木の高さはこの20年で2メートル伸びて約15メートルになりました。しだれ桜の前の広場がコンパクトなスペースということもあって、目の前で見ると15メートルよりも高く感じます。 そして特筆すべきは、幹から両サイドに広がるしだれ桜の枝ぶりの幅。こちらもガイドが初めて見た2004年当時から3メートル広がり、現在では約20メートルに達しました。 満開の時に見るとその圧倒的な花のボリュームとその美しさに驚き、忘れられなくなるほどの凄さです。東京を代表する桜の風景は? と聞かれた時、千鳥ヶ淵や上野恩賜公園、飛鳥山公園など桜並木がメインの名所を挙げられる方も多いのですが、六義園にはこの1本のしだれ桜の咲きっぷりを見たい! と毎年多くの人が訪れています。 満開時期が近づくと入園券購入の行列も長くなりますし、しだれ桜の前の広場が桜を見に来た人たちで埋まってしまいます。それでも逢いに行きたくなる魅力いっぱいの桜です。
ちなみに六義園のしだれ桜は、例年だとソメイヨシノよりも一足早く3月中旬には花が開花します。見頃を迎える時期も3月中旬~下旬とソメイヨシノより早めなので、東京に桜の便りが聞こえてきたら、六義園のWebサイトや東京都公園協会のWebサイトを日々確認することをおすすめします。
夜桜が幻想的な姿を見せる! ライトアップイベントと混雑情報
六義園は東京都公園協会が管理する公園として、通常は日中のみ開園しますが、紅葉の時期と春に桜が咲く時期にあわせて特別イベントとして夜間開園が行われます。春の特別イベントのタイトルは「春夜の六義園 夜間特別鑑賞」。回遊式庭園の中心をなす池とその周囲、そしてしだれ桜がライトアップされた美しい夜景を楽しめます。以前は「しだれ桜と大名庭園のライトアップ」という名称でしたが、2023年にリニューアルされました。 ライトアップイベントは18時半スタート開始。日没後の残照が残った状態から夜のとばりが下りるのにあわせて、しだれ桜を照らすライトが明るくなっていく様子を見られます。
以前は夕方入園後、ライトアップが始まるまで園内に留まることができましたが、イベントリニューアルに伴って入替制となり、夜間開園後改めて入園する形に変わりました。 駒込駅に近い染井門から入園し、しだれ桜へ向かう散策路を歩いていくと、前方にライトアップされたしだれ桜が見えてきます。 夜の闇が空全体を支配した時、ライトに照らされたしだれ桜の姿は幻想的で、何度見ても飽きることがありません。 しだれ桜の前の広場にはこの美しい姿を見ようとする人で埋め尽くされることも多いのですが、それでも毎年逢いに行きたくなってしまいます。 ちなみに、しだれ桜の向かいには正門につながる内庭大門という小さな門があり、この門をくぐった向こう側から門越しに見えるしだれ桜を望むことができます。門越しに見えるしだれ桜の圧倒的な存在感は忘れられない瞬間となるでしょう。
メインのしだれ桜以外にもある、素敵なしだれ桜
最後に「六義園のしだれ桜」というと今まで紹介したしだれ桜を指すことが多いのですが、実は他にも素敵なしだれ桜が咲いています。まずは吟花亭のしだれ桜。「第二のしだれ桜」として紹介されており、徳川五代将軍・綱吉の娘、鶴姫がお花見を楽しんだ吟花亭の跡に咲いています。 そして、もう1つがメインのしだれ桜の近くにある竹林のそばに咲く背の高いしだれ桜の木。この木もライトアップされます。メインのしだれ桜よりも遥かに高い位置から桜の花が降り注ぐように咲く風景は、また違った美しさを感じられます。 アングルを工夫するとメインのしだれ桜と一緒に竹林近くのしだれ桜を望むことも可能。こちらもおすすめです。
数ある東京の桜の風景の中でガイドいち押しの六義園のしだれ桜をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。春ならではのしだれ桜の風景をぜひ間近で目に焼き付けてくださいね。
六義園へのアクセス
地図:Googleマップアクセス:
<鉄道> 山手線・東京メトロ南北線 駒込駅下車。正門は駒込駅から本郷通りを歩いて7分ほど。 桜が見頃を迎える時期は、駒込駅から徒歩2分ほどの染井門からも入園することができます。また都営地下鉄 三田線 千石駅からも徒歩10分ほどの距離です。
<バス> 文京区コミュニティバス「B-ぐる」千駄木・駒込ルート 25番六義園入口バス停 下車。このバスは、六義園と同じく桜の名所である小石川後楽園を経由するので両方の桜を楽しむ時に便利です。
<車>
六義園専用の駐車場はありません。鉄道・バス等の利用をお勧めします。
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- 六義園(東京都公園協会)
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