肺・気道の病気

一日中咳が止まらない・熱はないのに咳が出る…長引く咳の原因は?

【医師が解説】風邪をひくと咳が出ますが、喘息などの病気が原因のことも。一日中咳が出たり、咳が長引いたりすると、体力を消耗し、とても苦しい思いをします。長引く咳に潜む病気について、咳が出る仕組みを含め解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

咳とは……体から異物を排除するための防御手段

咳が長引く・一日中咳が続く原因

咳がなかなか止まらない場合は、早めに医療機関を受診しましょう


人間の体には、異物を排除して体を守ろうとするはたらきがあります。「咳」もそのひとつ。咳が出るのは、異物から肺や気管、気管支を守るためなのです。異物とは、ほこりや煙などのほか、目には見えない細菌やウイルスなどがあります。また高齢者に多い、飲食物が気道に入ってしまう誤嚥も異物の侵入なので、激しい咳で排出しようとするのです。タバコの煙で咳き込む人を見ることがありますが、これはタバコの煙が人体にとって異物であることの証明といえるでしょう。

鼻や口から異物が気道に入り込むと、通常は気道の粘膜にある繊毛という組織がはたらいて、気道から喉・食道を通して胃の中へ送り込みます。しかし異物が大きかったり、刺激の強い性質のものだったり、あるいは抵抗力が落ちて繊毛のはたらきが鈍くなっていると、反射的に咳をして外へ追い出そうとするわけです。
 

咳症状から考えられる病気……風邪・気管支炎・咳喘息など

風邪などでも咳はよくある症状なので、私たちは咳が数日治まらなくてもあまり気にしません。しかし、咳が長引くようなら要注意です。長引く咳は隠れた病気の症状かもしれないからです。

咳が続いても3週間未満で治まれば、たいていの場合は風邪やインフルエンザ、急性気管支炎と判断されます。急性気管支炎は、気管支が急に炎症を起こしたもので、ほとんどは風邪が引き金となって起こりますが、マイコプラズマや細菌感染によるケースもあります。発熱や頭痛、食欲不振を伴うことが多く、激しい咳による胸の痛みが出ることもあります。

3週間以上も咳が続く場合、まず疑われるのが「咳喘息(せきぜんそく)」です。症状は一般的な喘息(気管支喘息)に似ていますが、喘息にみられるヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難はありません。激しい咳で胸が痛くなったり、嘔吐や失神したりすることもあります。放っておくと気管支喘息に進行する危険性が高く、咳が慢性化している人の40%近くが咳喘息患者だというデータもあります。

40歳以上の喫煙者の場合、「肺の生活習慣病」と呼ばれる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の危険性があります。階段の昇り降りや坂道を登っているときに息切れがするようなら、「年のせい」よりも「肺のせい」を疑ったほうがいいでしょう。慢性閉塞性肺疾患の怖いところは、自覚症状がなくても病気が進行していることで、ひとたび発症するとなかなか完治できないといわれています。慢性閉塞性肺疾患の原因はタバコなので、予防には早期の禁煙またはタバコを吸わないが望ましいです。

近年、患者数が増えている肺結核にも注意が必要です。高齢者だけでなく若年者でも感染が見られます。初期は、咳と痰、発熱など風邪と同じ症状なので、肺結核だと気づかないことが少なくありません。肺結核は人から人へ感染するので、早めの対応が重要です。

中高年での咳では、同じく早期発見が第一なのが、日本人の死因の中でもトップの病気である肺がんです。主な症状は、咳、息切れ、体重減少、痰、血痰(血の混じった痰)、胸の痛みなど。咳が続くときは、肺がんを疑ってみることも必要かもしれません。

ほかにも、咳が特徴的な病気はたくさんあります。たとえば、「アトピー咳嗽(がいそう)」は、アトピー素因のある人がエアコン、たばこの煙(受動喫煙)、会話(電話)、運動、精神的緊張などで咳が続く病気です。細菌性の病気では、「百日咳」や「マイコプラズマ肺炎」があります。子どもの場合は「心因性咳嗽」「気道異物」といったケースもあります。

 

病気以外の可能性も? 環境による刺激が原因の咳

病気以外にも、生活環境から受ける刺激も咳の原因になります。自動車の排気ガス、工場の排煙、工事現場で発生する粉塵、喫煙と受動喫煙もそうです。

咳は秒速40m、時速にすれば144km/hものスピードがあり、1回で約2kcal消費するといわれます。一日中咳がとまらなければ、体力を激しく消耗し、抵抗力も落ちてしまいます。また強い咳で肋骨を折ることさえあります。体力のない子どもや高齢者などには非常につらい状況なので、咳が長引きそうなときは、早めに医療機関を受診してください。

また、マイコプラズマ、百日咳などの感染症による咳である場合は、感染拡大の可能性もありますので、マスクなどの咳エチケットを行い、医療機関で病原体を特定し、治療を行ったほうが良い場合にもあります。ただ、多くのウイルス感染には、特効薬がないのが特徴です。

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