健康診断の胸部レントゲン検査でわかること

胸膜肥厚の原因・症状 健康診断の胸部レントゲン検査の結果で「胸膜肥厚」を指摘されたら

「胸膜肥厚」は健康診断を受けると高い率で指摘されることがあります


胸部レントゲン写真は、主に肺や気管支に病気がないか、あるいは心臓の形や大きさに異常がないかを見つけるために行う検査です。肺や心臓の他、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう:血管が病的に拡張した箇所)が見つかることもありますし、本当にごく稀ですが甲状腺、胃・脾臓などの異常が疑われることもあります。

CT検査でも言えることですが、もともとレントゲン写真は放射性物質の空気・水・石灰の通り抜けやすさの違いを利用した検査方法です(専門用語ではこの性質を透過性と呼びます)。簡単に言えば、肺の中のように空気が多い部分は黒く、肺の内部を走行する太い血管や心臓のように血液や厚い筋肉で構成された部分は白っぽく、カルシウム成分を主体とする骨は最も白く写し出されます。ちなみに、空腹時に撮影されたものであれば、胃の一部が「胃包(いほう)」という黒く抜けた部分として、お腹の左側、胸部レントゲン写真では向かって右下に写ります。


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健康診断などで見つかる胸膜肥厚(きょうまくひこう)とは?

健康診断でレントゲン写真を撮影した場合、明らかに病気が疑われる場合には「要精査(精密検査)」、医師の側でも判断に迷うときや、時間を空けてもう一度検査をしたほうが良いという場合には「経過観察」といった言葉を用います。そんな中で、異常を指摘された患者さんから「胸膜肥厚とは何ですか?」という質問を時々いただくことがあります。

胸膜肥厚という判定は珍しいことではありません。胸膜とは肺を覆っている膜のことを指しますが、例えば炎症を起こして治癒すると、胸膜が厚みを帯びることがあります。言うなれば傷跡のようなものですが、これを胸膜肥厚と呼びます。肺の天辺(てっぺん)の部分は「肺尖部(はいせんぶ)」と呼ばれ、胸膜肥厚の見つかることが多い部分です。このとき、肥厚が高度な場合には肺結核や胸膜腫瘍を疑う所見の1つとなります。

しかし、こうした病気でもないのにいわゆる「所見」として胸膜肥厚を指摘されることがあります。このように病的ではない胸膜肥厚を「Apical cap(肺の尖端の帽子と訳すとニュアンスが伝わるでしょうか?)」 と表現することもあります。

年齢別には、一般的には20代~40代ぐらいの若年者であれば胸膜肥厚があったとしても病的なものではないことが多いのですが、50代以降で胸膜肥厚を指摘されたときに注意したいのは肺結核や石綿(アスベスト)による胸膜中皮腫の危険性です。
 

初めて胸膜肥厚を指摘されたときの考え方

胸膜肥厚
わかりにくいのですが、赤い線と点線で囲んだ範囲の白っぽくなっている部分が胸膜肥厚です。骨と肺との境が帯状に変化して見えています
去年までの健診では何も言われたことがなかったのに、今年初めて「胸膜肥厚」を指摘されることもあります。その原因は主に3つあります。
  • 撮影したときの写り具合が前回と違った
  • 本当に新しい病気が出現した
  • レントゲンの担当医(読影方針)が変わった
特筆すべきは最後に挙げた「担当医(もしくは読影方針)が変わった」というのもあり得ることなのです。例えば、「明らかに治療が必要な病気ではないと考えられる胸膜肥厚」を見たとき、ある医師は、

「病気とは言えないのに所見を記載したことで患者さんが心配するといけないから、あえて胸膜肥厚という記載は省略しておこう」

ということもありますし、同じ写真であっても他の医師の場合には、

「いや、一応は所見としては認められるから胸膜肥厚とした上で、精密検査の必要はないと記載しておこう」

あるいは

「わずかな変化だけれど胸膜肥厚は間違いなく存在するし、精密検査をしなければ病気ではないと断言できない」

ということもあります。普通の胸部レントゲン写真は人間の眼で判定をする検査ですので血液検査のように数値化することが難しく、胸膜肥厚にしても医師が異なれば解釈も異なる可能性があるのです。

このように同じレントゲン写真であっても医師の診断が異なることもありますし、何と言っても病的な所見を見落とさないということが更に重要ですから、2人の医者が別々にレントゲンをチェックして、後でつき合わせて判定するというダブルチェック、3人で確認するトリプルチェックといったことで、1枚のレントゲンを巡って診断精度を高めようとこうした方法が取られることもあります(そこまで努力してもごく早期の肺がんはレントゲンでは見つからないこともあります。このお話はまた別の機会にさせていただきます)。
 

胸膜肥厚と判定されたときの対処法・対策法

胸膜肥厚と判定されたとき、特にこれまで「異常なし」であったのにと心配なさる方もいらっしゃいますが、50歳以上であっても多くの場合には良性です。ただし、進行すると胸膜肥厚が肺全体にまで及んでしまう胸膜中皮腫は50代を超えてから発症することが多く、ごくわずかな胸膜肥厚をきっかけに病気が見つかることもありますので、医者の側でも精密検査を勧めるべきか、判定に悩むことが多くなりました。

原因として疑われる病気によっては、慎重に様子を見る場合には1ヶ月から数ヶ月後に再検査、あるいは良性の変化であると考えられるときには1年後の定期検査など、胸膜肥厚の経過観察期間や方法にもかなりの幅があると思います。

最後にガイドは放射線科ではありませんが、昨年5月から9月末にかけて山口県予防保健協会からの委託を受け、肺がん検診で撮影された胸部レントゲン写真(間接撮影)五千数百枚を読影しました。これは放射線専門の先生方と比べるとごく少ない枚数ですが、わずかな変化までも含めると胸膜肥厚が見られたのは数え切れないぐらいでした。過去の石綿(アスベスト)使用が社会的問題となっている昨今、次にレントゲンを撮ったときにはあなたも異常が指摘されるかもしれませんが、決して焦らないようにしてください。


【関連リンク】
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健康診断で肺に影があると言われたら…再検査?病気?(All About がん・がん予防)
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50代から急増する石綿(アスベスト)の健康障害(All About 50代からの健康法)
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