肺・気道の病気/咳・痰・喘鳴(ぜいめい)

アトピー咳嗽の原因・症状・治療法…1ヶ月以上続く咳

【医師が解説】「アトピー咳嗽(がいそう)」は、アトピー体質に関係して、長引く咳症状が起こる病気。咳が長引く病気は、気管支喘息や咳喘息など様々ですが、アトピー咳嗽も1ヶ月以上続く咳症状を起こします。アトピー咳嗽の原因、症状、治療法について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

アトピー咳嗽とは

聴診器を持つ医師

その咳、1ヶ月以上続いていませんか?

アトピー素因のある人が、痰のからまない咳を1ヶ月以上していたら、「アトピー咳嗽」の可能性があります。通常、咳は、気道に入ってしまった異物を外に出そうとして起こる体の防御機能で、「咳反射」と呼ばれます。咳が全く出ないようでは、異物が気道から入ってしまいます。

しかしこの「咳」をする感度が亢進しすぎて(咳感受性の亢進)、ちょっとしたことで咳をしてしまうのが、アトピー咳嗽の症状です。本来なら咳の必要がない程度の状態でも咳き込むので、長い咳症状が続いてしまいます。
 

アトピー咳嗽の症状…喘鳴も痰もない長引く咳が特徴

  • 8週間以上のノドのイガイガ感のある痰を伴わない咳嗽
  • 喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)、呼吸困難がない
  • 咳嗽は寝てから、深夜から早朝、起床時に多い
  • 咳嗽は、エアコン・タバコの煙(受動喫煙も)・会話(電話)・運動・精神的緊張であるストレスなどによって誘発される
  • アトピー素因(血液中の好酸球が多い、IgE値が高い、ダニなどに対するIgEが陽性、アレルギーを起こす物質に対する皮膚テストが陽性、ぜん息以外のアレルギーの病気があるか以前あった)
  • 呼吸機能検査(肺活量など)は正常
  • 気道過敏性亢進はみられない(咳喘息とは異なる)
  • 咳」をする感度(咳受容体感受性)が亢進している
  • 痰の中に好酸球がみられる
  • 気管と気管支の組織を採取する生検では、好酸球が集まって炎症を起こす好酸球性気管支炎がある
  • 気管支を洗って採取した洗浄液には好酸球がない
  • 治療では、抗ヒスタミン薬、ステロイド吸入・内服が効果がある
  • など
上記の特徴がある場合、アトピー咳嗽を疑われます。
 

アトピー咳嗽の診断基準

以下の4つの項目が満たすときに診断されます。
□喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽(痰がない咳)が3週間以上続く
□気管支拡張薬が無効
□アトピー素因があるまたは痰の中の好酸球が増えている
□抗ヒスタミン薬またはステロイド薬で咳嗽発作が消失

アトピー咳嗽になりやすい人の特徴……女性

アトピー咳嗽は中年の女性に多い。アトピー素因のある人は注意をした方がよいでしょう。
■アトピー素因の簡易チェック法
□アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にかかったことがある
□アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患ももっている
□血液中の好酸球が多い
□血液中のIgEが高い
□ダニ、卵白などの特定の物に対してのIgEが陽性
□アレルゲン(アレルギーを起こす物質)の皮内テストが陽性

これらに該当する項目があれば、アトピー素因と考えて良いと思います。

咳は、寝ているとき、深夜から早朝、起床時、早朝の順番に多く見られます。

 

アトピー咳嗽の治療法・対処法

内服薬が治療の中心になります
治療は「アトピーの治療 内服薬」でも解説しました抗ヒスタミン薬が中心になります。有効率は約60%です。

■抗ヒスタミン薬
第1世代(眠気が多い薬):ポララミン・レクリカ・タベジールなど

第2世代(眠気を抑えた薬):(ザジテン)・アゼプチン・セルテクト・ゼスラン・ニポラジン・ダレン・レミカット・アレジオン・エバステル・ジルテック・リボスチン・タリオン・アレグラ・アレロック・クラリチン、ザイザルなど

上記の内服薬で効果がみられない場合は、ステロイド吸入を行います。この点は喘息治療に似ています。喘息治療については、「喘息を治すには、どうする?」をご参照ください。

■ステロイド吸入薬:キュバール・フルタイド・パルミコート・オルベスコ・アズマネックス

ステロイド吸入が咳がひどくてできないときにはステロイドの内服が行うこともあります。

風邪薬である鎮咳薬、気管支炎、肺炎で使用される抗菌薬、気管支喘息で使用される気管支拡張薬・ロイコトリエン受容体拮抗薬は効果がありません。
 

アトピー咳嗽の予後は

予後は良好な病気です。喘息になったり、慢性閉塞性肺疾患になることはありません。咳嗽が良くなれば治療は中止できます。治療終了してから約4年間で、約50%の人が咳嗽が再び見られますが、同じ治療でよくなります。

咳症状が長く続く場合、喘息、咳喘息、今回解説したアトピー咳嗽など、様々な病気の可能性が考えられます。病院を受診し、正確に診断を受けることが大切です。
 
豆知識
呼吸機能検査:肺や気管支の状態と機能を見る検査。肺の膨らみを見る肺活量、気管支が狭くなっていないかどうかを見る1秒率を測定する。具体的には、息を吸って、吐く検査で、労力が必要。そのため、子供では検査しにくい。
 

■「喘息」関連記事
アトピーと喘息の関係
【第1回】喘息の原因って何?
【第2回】喘息を治すには、どうする?
【第3回】運動で喘息が起きるのはなぜ?運動誘発喘息
【第4回】ゼイゼイ言わない喘息症状? 咳喘息とは
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます