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寒い季節に脱水症?真冬の「かくれ脱水」にご用心

「脱水症」は、たくさん汗をかく夏になるものだと思っていませんか? 実は、冬でも脱水症になるリスクは高く、その一歩手前の「かくれ脱水」の状態になっている人は少なくありません。かくれ脱水の危険と兆候、対策法を知っておきましょう。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

冬なのに脱水症になる可能性があるのはなぜ?

水を飲む女性

夏でも冬でも、小まめな水分補給は大切。特に寒い冬は意識して水分を摂るように!

暑い夏は大量の汗をかくので、こまめな水分補給は当たり前のことです。しかし、じつは冬場こそ水分補給が大切だということは、あまり知られていません。なぜ「冬こそ水分補給」なのでしょうか。それは、日本の冬の空気がとても乾燥していることと関係しています。

人間の体の50~60%は水分です。そして、暑さ寒さにかかわらず、皮膚の汗腺からは水分が出ており、尿などで排出される水分と合わせると、1日に2~2.5リットルの水分を失っているといわれます。さらに外気が乾燥していると、皮膚や粘膜、呼気などから失われる水分が増えてしまうのです。この失った水分は、飲み物や食事から取り入れるしかありません。

夏であれば、熱中症対策に意識して水分を取るでしょうが、冬はよほど激しい運動でもしない限り、水分補給の必要性を感じることは少ないでしょう。また高齢者の中には、「体を冷やしたくない」「寒い夜にトイレに起きたくない」からと水分摂取を控えてしまう人がいます。さらには風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどの冬に流行する感染症にかかり、発熱や嘔吐、下痢などで体内の水分を失うことがあります。いずれにしても、適切な水分をとらないでいると、気づかないうちに体が乾燥している状態になり、冬でも脱水症の一歩手前である「かくれ脱水」になっていることがあるのです。

「かくれ脱水」に潜む危険と兆候

体から多量の水分が失われてしまうと、肌や髪の乾燥だけではなく、体内にも影響が出てきます。たとえば、血液の水分が不足すると、サラサラと流れるべき血液はドロドロになり、血管が詰まりやすくなってしまいます。その結果、脳血管疾患や心筋梗塞を引き起こす危険性が高まります。体内の臓器にしても同様で、血流が悪くなれば機能は低下します。

冬のかくれ脱水は、喉が渇く、尿量が少なくなる、脳の血流が減ることによる集中力の低下、消化管の血流が減ることによる食欲不振などの兆候があります。しかし見た目ではほとんど分からないので、こまめな水分補給を心がけることしか対処法はありません。

「いつもお茶を飲んでいるから大丈夫」とか、「水分はビールで補給しているから心配ない」という人もいますが、それは適切な水分補給ではありません。たしかに「水分」には違いありませんが、お茶に含まれるカフェインやアルコールは利尿作用があります。つまり、水分を補給しているつもりが、逆に水分を失っていることになるのです。また尿には水分と電解質が含まれているため、利尿作用で大量の尿を排出すると、かくれ脱水を進行させる可能性があるので注意しましょう。

脱水症予防に!正しい水分の取り方と湿度管理のコツ

かくれ脱水の予防は、やはり何といっても適切に水分を取ることです。しかし、冬の寒い時期に冷たい水を飲めば、体を冷やすことになります。おススメは「ぬるま湯」や「常温の水」を飲むことです。また風邪や感染症にかかっているときには、電解質を含む経口補水液をとるようにしましょう。

水分は一度に大量に摂取しても吸収されません。逆に体内に大量の水が入ると電解質のバランスが崩れ、体調が悪くなることがあります。1回で飲む水はコップ1杯程度(200ミリリットル)で十分です。特に運動中は身体から奪われる水分量が増えるため、プロトレーナーの解説する「脱水・熱中症予防に!知っておきたい水分補給の基本」などもあわせてご覧ください。

また、室内環境を整えることも予防になります。エアコンのおかげで寒すぎず暑すぎず、快適な空間だと感じるかもしれませんが、大切なのは室内が乾燥していないこと。加湿器を使うなどして、部屋の湿度は50~60%を保つようにしましょう。また、石油ストーブは化合物を燃やしているため、二酸化炭素と同時に水分が出ます。水を入れたヤカンを乗せておけば、蒸気が湿度を高めてくれるでしょう。ちょっとした工夫と心がけで、上手に脱水症を予防していきましょう。
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