『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』ストーリー
英国で起こった日本領事館関係者の毒殺事件。唯一の生き残りの少女は国際犯罪組織に誘拐されてしまう。
7年後、その国際犯罪組織のリーダーであるレイブンを追っていた国連犯罪情報事務局の元理事のマーク・リュウ(鹿賀丈史)は、レイブンが日本にいるという情報を得て来日。杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)は、リュウの捜査に同行します。
やがて犯罪組織は誘拐した少女の身代金を要求してきて……。
(監督:橋本一 2017年2月11日公開)
(C)2017「相棒-劇場版IV-」パートナーズ
メッセージ性の高い映画『相棒』シリーズでの役作り
映画『相棒-劇場版IV-』で犯罪組織で暗躍する黒衣の男を演じている北村一輝さん。劇中では秘密を抱えた男を演じ渋さを炸裂させていますが、実際の北村さんはにこやかでやさしい方!大先輩の水谷豊さんとの共演エピソードや今後の役者人生について語っていただきました。――映画『相棒 -劇場版IV-』で、相棒チームに初参加されましたが、プレッシャーはありましたか? また水谷豊さんとの共演について教えてください。
北村一輝さん(以下、北村):特にプレッシャーはありませんでしたよ。作品の規模大小関係なく、僕はいつもフラットな状態で撮影に入ります。主演作だと別なプレッシャーはあるかもしれませんけど、基本的に役者としてやるべきことをやるだけです。
水谷さんとの共演について、よく緊張しましたか?と聞かれるのですが、初参加の役者がいても緊張感を抱かせないように配慮できるのが、水谷豊さんという役者です。共演者がプレッシャーを感じたりしないように、すごく仕事しやすい現場作りをしてくださったんですよ。だから気負いなく演じることができました。
――この映画では、犯罪組織に属する黒衣の男という謎の存在ですが、役作りはどのようにされましたか?
北村:最初に脚本を読んだとき、深いメッセージが込められていると感じました。それはいわゆる“正義”なのですが、勧善懲悪ではなく、人間の行動には理由があり、そこに人間性が存在するのです。この映画は、その人間性がきちんと描かれた作品です。
もちろんエンタティメントとして、どんでん返しなど楽しませる要素もありますが、僕の役はアクションひとつとっても、最後のメッセージを伝えるために表現することが大切だったのです。あまり熱くなりすぎないように、しかし、世の中に伝えるべき大切なことがある男として演じました。自己主張は激しくないけれど、根底には彼なりの熱い正義の血が流れているのです。
水谷豊さんは僕にとってヒーローのような存在!
――ミステリアスな存在なので、語るのも難しい役ですよね。水谷さんが演じやすい環境を作り出してくださったというお話がありましたが、役者・水谷豊さんと接して感じたこと、学んだことを教えてください。
北村:僕にとって水谷豊さんはヒーローのような存在です。水谷さんが出演されていたドラマを観て育った世代ですから。「傷だらけの天使」(1974~75年/日本テレビ)「熱中時代/教師編」(1978~81年/日本テレビ系)「熱中時代/刑事編」(1979年/日本テレビ)など、リアルタイムで観ていましたよ。
この映画の撮影で水谷さんと会話しているとき、心の中で「俺はいま、水谷豊と話をしている!」と、感動していましたから(笑)。でも現場で水谷さんの役の掘り下げ方や現場との向き合い方を見るにつけ、自分は水谷さんの年齢になったときに、どれくらいできているだろうかとも考えました。
水谷さんは主演俳優として作品全体を見る目を常に持っています。あの右京さんのキャラクターも面白さを出すためではなく、実に計算されつくしています。作品にちょっとした隙があっても水谷さんの演技でカバーしてバランスを取っているんですよ。本当に凄い役者です。
――映画『相棒 -劇場版IV-』はメッセージ性のある脚本とおっしゃっていましたが、やはり仕事の依頼を受けるときの基準は、そういった内容を吟味されるのでしょうか。
北村:いや、仕事は選ばないですね、選んでしまうと偏ってしまうので。価値観が強まり、世界が狭まってしまうのはよくない。依頼を受けたとき、プラスの感想を持つことがあれば、マイナスの感想を持つこともあります。でも「これ、おもしろいかな?」と思った作品をおもしろくするのも役者の仕事。僕は演じることが好きなので、いろんな物事をいろんな角度で見られるようにしておきたい。常に役者としての間口は広く取っています。
50代で北村一輝の代表作と呼ばれる作品を作りたい
――現在、北村さんは40代ですが、20代の頃と今とでは、仕事への向き合い方は変わりましたか?
北村:やはり20~30代の頃は、突っ走って、とにかく結果を出そうと思っていましたね。何かを掴みとりたいと、見えないものに向かっていっていた。でも40代になってペース配分がわかってきて、楽しみながら仕事をしていきたいと思うようになりました。50,60代になって、ギスギスした男になりたくないんですよ。自我をグイグイだしていったら、人は怖がって寄って来なくなりますから。この仕事をする上で人間性は大切ですからね。
――今後、今までやったことのない、こんな役に挑戦したいなどの願望は?
北村:僕は前から50代で代表作を作りたいと思っていたんです。いまは、否定されたり、失敗したりしながら、それも踏まえて勝負したい。楽な方へ行くことだけは避けたいです。
演じる役については、社会派ドラマをやってみたいですね。実在する人物を演じることに興味はあります。時代劇とは違う、政治的な側面もあるような、新しいものに挑戦したい。いま日本の映画界、ドラマ界、ともにアニメが勢いあるでしょう。実写は見せ方をいろいろ考えていく時代になったと思います。挑戦的な作品が増えて来ると思うので、そういうオファーがあったら応えていきたいですね。
■北村一輝プロフィール
1969年、大阪府出身。91年、映画『雪のコンチェルト』でデビュー。99年『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』でキネマ旬報新人男優賞など受賞。以降、映画、ドラマの世界で活躍している。最新作は『無限の住人』(2017年/三池崇史監督)『羊の木』(2018年/吉田大八監督)。
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