『お気に召すまま』
『お気に召すまま』写真提供:東宝演劇部
1月4日~2月4日=シアタークリエ、2月7~14日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2月15日=香川県県民ホール レクザムホール、2月24~26日=キャナルシティ劇場
【見どころ】
シェイクスピアの人気喜劇『お気に召すまま』が、ブロードウェイを代表する演出家の一人マイケル・メイヤー(『春のめざめ』)によって新版上演。故郷を追われた若い男女が、牧歌的なアーデンの森で恋を成就させるまでが、1967年、ヒッピーたちが集結したサンフランシスコ・ヘイトアシュベリーでの音楽フェス“サマー・オブ・ラブ”に設定を移し、描かれます。シェイクスピア戯曲の中でも「歌」の存在感が大きい本作ですが、今回はトム・キット(『ネクスト・トゥ・ノーマル』)が作曲した新ナンバーや“サマー・オブ・ラブ”で実際に歌われた曲も盛り込まれ、音楽的な要素もたっぷり。とある事情で男装するヒロイン、ロザリンド役の柚希礼音さん、その恋の相手オーランド―役のジュリアンさん、万事をシニカルに眺める貴族ジェークイズ役の橋本さとしさんら“腕利き”のキャストを得て、傑作戯曲の新たな魅力が引き出されそうです。
【観劇ミニ・レポート】
“ヒッピーたちの音楽フェス”に
シェイクスピアの描いた“理想郷”を
重ね合わせ、爽やかに展開する「音楽喜劇」
『お気に召すまま』写真提供:東宝演劇部
権力欲渦巻く世界と牧歌的な世界を対比するにあたり、戯曲では“宮廷”と“森”で展開していた物語は今回、“(政治の都)ワシントンD.C.の邸宅”と“ヒッピーたちの音楽の祭典”での物語へと変更。二つの世界の落差が、リアリティをもって強調されています。また休憩を除き約2時間と、コンパクトにまとめられているのも今回の舞台の特色。上演台本を原作戯曲と照らし合わせてみると、言葉遊び問答や延々と続く比喩等をカットし、場面を入れ替えるなど、演出家が分かりやすさやスピード感を重視していることが見て取れます。
『お気に召すまま』写真提供:東宝演劇部
そんな中で唯一プラスされているのが、オーランド―を追ってやってきた兄オリヴァーが、とある一団に遭遇し、幻覚へと誘われるシーン。この後、オリヴァーは弟を迫害する“敵役”から改心し、恋する男に変貌してゆくのですが、原作戯曲ではいささか唐突に聞こえるその変化が、今回はこの光景の挿入によって説得力を増し、効果的です。また原作戯曲では追放された“前の公爵”を慕う貴族の一人にすぎないアミアンズが、今回の舞台ではポイント、ポイントでギター片手に厭世や恋を歌い、“サマー・オブ・ラブ”の空気感を醸成。演じる伊礼彼方さんの柔らかな歌声が心地よく、歌詞のひとこと一言が自然に耳に残ります。
『お気に召すまま』写真提供:東宝演劇部
ロザリンド役の柚希礼音さんはオーランドーを見染め、床にヘッドスライディングして恋の喜びを表現する序盤から快活な魅力に溢れ、お茶目なヒロインがぴったり。男装シーンには宝塚の男役とはまた違ったのびやかさがあり、最後まで観客の目を引き付けます。(エピローグの“とある趣向”は柚希さんの多才ぶりに触発されての演出かもしれません。)またシェイクスピア喜劇ではお約束のメランコリックなキャラクターとして、本作にはアミアンズ同様“前の公爵”に仕える貴族だが、彼とは違って皮肉ばかり並べたてるジェークイズという男が登場しますが、橋本さとしさんはこの役を、言葉に躍動感を与える確かな台詞術で好演。祝祭気分に溢れる結末にほろ苦さを加えます。オーランド―役ジュリアンさん、オリヴァー役の横田栄司さん、シーリア役マイコさんらも役どころを手堅く演じ、終盤では入江加奈子さんが張りのある声で祝福のナンバーをリード。キャストそれぞれの個性を生かしたメイヤーの演出も嬉しい、爽やかな音楽喜劇に仕上がっています。
1月19~22日=IMAホール
【見どころ】
『アイランド』
『人魚姫』の世界をカリブ海の小島に移し、開放感たっぷりの音楽で彩ったブロードウェイ・ミュージカル『Once On This Island』。90年にブロードウェイ、94年に英国で初演された本作が、14年の日本初演、昨年の再演を経て三演目を迎えます。
美しく裕福な男ダニエルに身分違いの恋をするティ・モーン役に河西智美さん、ダニエル役に小暮真一郎さん(『王家の紋章』)、田中秀哉さんのダブルキャスト。ミュージカル座ならではのアットホーム感の中、大地や水、愛の神が登場するおおらかな神話世界、そしてティ・モーンのけなげな愛が描きだされることでしょう。(前回公演のレポートは
こちら。)
2月9日~3月5日=シアター・クリエ
【見どころ】
『クリエ・ミュージカルコレクション3』
“トニー賞の授賞式のように楽しくて、パリ・コレクションのようにお洒落”とのキャッチフレーズのもと誕生したコンサート『クリエ・ミュージカルコレクション』。大好評を博した14年、15年の公演に引き続き、待望の第三弾が登場します。
このシリーズの“アイコン”とも言える山口祐一郎さんをはじめ、今回は大塚千弘さん、涼風真世さん、瀬奈じゅんさん、保坂知寿さん、岡田浩暉さん、今拓哉さん、田代万里生さん、吉野圭吾さんという、ミュージカル界のそうそうたるスターたちが出演。それぞれが出演作で歌った“持ち歌”を洗練されたステージングで披露するほか、“ちょっと意外”な選曲が登場するのもこのコンサートの“お楽しみ”です(演出・山田和也さん)。ゴージャスな衣裳、アンサンブルとの息の合った掛け合いも見どころ。ミュージカル・ファンはもちろん、お洒落なひと時を過ごしたいカップルのデートにもぴったりの演目です。(前回公演のレポートは
こちら)。