マンション相場・トレンド/マンション相場・買い時

2017年からのマンション選びで重要な3つの視点

2020年の東京五輪まであと3年となる2017年。中古・新築ともに価格が上昇するなど買い手にとってのマンション購入環境は難しくなっています。また、全国的な空室率が上昇するなど人口減少トレンドの影響も出始めています。初めての購入だと、どうしても近視眼的になりがちです。初心者や買い替えなどで2017年マンションを探す方向けに、ガイドが考えるマンション選びの新しい基軸を紹介します。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

これからのマンション購入は、長期的な目線が必要

「2017年こそは、マンションの購入を」と考える方にとって、中古マンション、新築マンション価格が上昇し供給戸数も限られた今のマンション市場は、必ずしも探しやすい環境とは言い難いでしょう。2020年の東京五輪開催や現在の円安や資源価格の底打ちの流れをふまえると、価格トレンドは当面は弱含みそうにありません。また、将来価格が下がったとしてもそのタイミングで理想のマンションに出会えるかどうかはわかりません。

こうした状況だからこそ、近視眼的に物事を見るのではなく、長期的な視点でマンション選びを考えてみる必要があります。

日比谷で建設中のオフィスビル

日比谷で建設中のオフィスビル 都心三区は今、開発ラッシュ


長期的な目線を持ち、将来を考える上で最も重要なのは、日本人の平均寿命が幸いなことにどんどん長くなっているということです。私の祖母も今年で96歳なりましたが、実家で元気に暮らしています。長寿社会は、人生を楽しめる時間が増える一方で、医療費の増大や将来の年金負担、介護問題など社会に様々な影響を与えています。この長寿社会は、住まいの在り方にも影響します。

例えば、「賃貸VS購入」の損得比較。35歳からの35年間でシミュレーションするのと50年間でシミュレーションするのでは、結果も大きく違ってくるでしょう。

近年、格差の問題がニュースなどで取り上げられますが、寿命が長くなったのも一因だと思います。利回り3%で複利で運用しても期間が10年長くなると3割以上も運用結果がアップします。

人生が長くなるということは、それだけお金が必要になるということです。リタイア後に持家であれば、賃料を払う必要がなくその分暮らしに余裕が持てます。また、仕事で収入を稼ぐ期間も現在よりも長くなるでしょう。人口減による人手不足から、定年を延長する企業も徐々に現れるようになってきています。今後は、こうしたトレンドは拡大すると思われシニアで働く人の割合は増えていくでしょう。

住まい選びの視点1:ワークプレイス(職場)へのアクセス

そんな中、住まい選びの基準としていただきたい一つ目が、以前も当コラムで紹介した「ワークプレイス(職場)」です。かつて起こった炭鉱閉鎖や工場の移転などの就労機会の減少は、人口流出をもたらしその後の不動産価格にも影響を及ぼしました。職場の有無と同様に、ワークプレイスが集積するエリアへアクセスは、住宅選びの際の重要な要素になっています。

そして、将来の暮らしを考えると10年、20年後に企業の職場(ワークプレイス)がどこにあるかを想定しておくことも大切です。例えば、東京であればオフィスが集積する千代田区・中央区・港区などの都心三区には、東京23区の事務所床面積の半数近くが集積しており人口流入が続いています。

『ワークプレイス』を考える上で、もう一つ重要なのがサラリーマン夫婦の共働き比率が年々高まっているという点です。共働きでも職場が異なる夫婦が多いもの。私の周囲を見回しても、夫婦共働きは目立ちますが、勤務先が同じ人はいません。そう考えると、ワークプレイスへのマルチなアクセスも立地選びの重要な要素になります。

■参考記事
100年前のマンションから気づく住宅選びの2つの視点


住まい選びの視点2:マルチジェネレーション(多世代)が暮らしやすい

「2階と5階でマンション価格はどちらが高い?」と質問されると、当然「5階の方が高い」と答えるでしょう。しかし、これが高度成長期に各地に建てられた住宅団地に見られる、エレベーターのない5階建て住宅だと答えが違ってきます。

敷地にゆとりがあって、低層階でも日当たりの良いこうした団地の2階の住戸は、築40年を経過しても割安感から人気になるケースがあります。一方、エレベーターの無いマンションの4階、5階といった上層階は上り下りをマイナスに感じる人が多く、市場価格も2階住戸より低くなるケースが多いです。

価格が安く一定の広さがある部屋のターゲットとしては、子育てファミリーや高齢者が思い浮かびますが、ベビーカーやシルバーカーの持ち運びを考えると日常生活に支障があるため敬遠されます。これからも続く、高齢化の流れと少子化の歯止めを考えると、子供や高齢者を含めた「マルチジェネレーション(多世代)」が暮らしやすい街やマンションが選ばれる時代になっていくでしょう。

身近に憩いの場所があると便利だ

身近に憩いの場所があると便利だ(写真はイメージ)


今後、60代や70代、中には80代の方の住換えニーズの顕在化しています。80代の方が高台の住宅地から都市部の駅前のマンションに住換えることで、銀座や日本橋といった街に出掛ける機会が増えたといった話も耳にします。

駅アクセスの良いマンションが人気なのもマルチジェネレーションが背景にあると考えます。子供から高齢者まで暮らしやすい街に必要なものとして、歩道が整備されバリアフリーで暮らしやすいインフラが整っていること、日常の買い物便が良いこと、医療施設が充実していること、公園など身近に自然があることなどが挙がります。大規模な再開発街区や駅前再開発のマンションが人気なのも多様な世代が暮らしやすい要素が整っているからだと思います。

住まい選びの視点3:多様なライフスタイルを実現できる

厚生労働省発表の日本人の平均寿命は、女性87.05歳、男性80.79歳(2015年)。この平均寿命は、年々伸びており同省は女性が90歳、男性が84歳と予測しています。人生90年時代がすでに現実のものになっていて100歳の天寿も将来珍しくなくなっているでしょう。

そう考えると日々の暮らしを支える家の存在は、とても重要です。30代、40代と50代、60代で家族のライフステージは大きく変わります。

家族揃ってのレジャーや子供の教育が重視される30代・40代。子育てが終わり時間に余裕ができる50代・60代。さらに70代、80代になれば人生の楽しみ方も違ってくるでしょう。

私の父は、定年直後から実家の近くの山の休耕地を借りて柿や桃、ミカンといった果物から白菜、人参、茄子など40種以上の野菜を育てるのを日々の楽しみにしていますが、ライフステージごとに「多様なライフスタイル」を選べる立地や要素が揃ったマンションなら将来価値も期待できるでしょう。

東京、横浜、名古屋、大阪、福岡、札幌、仙台、広島といった大都市は、交通網が発達していて30分もあれば様々な場所へアクセスが可能です。こうした多様な楽しみ方ができるのも都市に人が集まる理由でしょう。当然、ライフステージの変化に応じてマンションを買換えるなどの選択肢もありますが、多様なライフスタイルを実現できるニーズの高いマンションなら住換えもスムーズでしょう。

畑

ガイドの実家で借りている畑 かなりの広さになる


2017年は、日本銀行のゼロ金利誘導政策もあり資金面での購入環境は恵まれています。「損か得か」といった資産価値に囚われすぎず、これからの長い人生を支えてくれるマンションを『ワークプレイス』『マルチジェネレーション』『ライフスタイル』の3つの軸で見極め、満足のいく住まい選びにつなげてください。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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