ポケモンGOは人気を失ったのか?
確かに、初期の頃に比べれば遊んでいる人は確かに減ったような気がします
2016年11月29日、ジャストシステムは「Marketing Research Camp」という、マーケティングリサーチの情報サイトにて『20代の「ポケモンGO」利用率が、7月の6割から3割に激減』というタイトルをつけ「位置情報アプリに関する実態調査」を掲載しました。
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20代の「ポケモンGO」利用率が、7月の6割から3割に激減(Marketing Research Camp)
この調査が発表されると、多くのメディアにポケモンGOの利用者が激減しているという記事が掲載されました。実際、周りでもやめている人がいるし、減っているんだろうと思って読んだ方も少なくないかもしれません。しかし、多くのメディアはこの調査の結果に対して、正しい解釈をしていませんでした。利用をやめた人が多いという意味では、激減という言葉を間違いだとは言えませんが、それは、ポケモンGOを遊んでいる人は少ない、という意味ではありません。
激減したのにユーザーが多すぎてトラブル?
9月にはお台場でも、人が集まりすぎてトラブルとなり、テレビ等で報道されました
東北支援を目的に、2016年11月12日から岩手県、宮城県、福島県の沿岸部で人気のポケモン「ラプラス」の出現率がアップするイベントがありました。効果は抜群で大変な数のユーザーが足を運びましたが、一方で、あまりに人の多さに、路上駐車や騒音、迷惑行為なども問題になりました。
ポケモンGOの人気が無くなって、遊ぶ人が少なくなっているのであれば、多少マナーの悪い人がいたとしても大きく報道されるような問題にまではならないでしょう。実際には、非常にたくさんの人が東北に訪れ、そしてトラブルも起こりました。
ポケモンGOを遊ぶ人が少なくなった、という報道と、多すぎてトラブルが起きているという報道が同時に起こることは、とても奇妙な現象です。しかしこれを両立させる答えがあります。それは、やめた人はたくさんいるけれど、遊んでいる人もたくさんいる、です。
どのゲームアプリも激減するもの
無料ですから、最初はたくさんの人がとりあえずでダウンロードするのです
ジャストシステムは、スマートフォンを所有する10代~50代の男女1,106名にアンケート調査をしました。そしてこれを、11月にした調査と、7月にした調査で比較しています。表題になっていた20代に対するアンケートでは、ポケモンGOの使用状況について「以前から継続的に利用している」と答えた人の割合が、7月の60.7%から11月の29.9%に落ちたとしています。
これに対して、みんな遊んでいたのにたった3割になってしまった、という解釈で激減という言葉が使われているわけですね。
1つ目の勘違いは、3割が少ない、という勘違いです。基本無料のゲームアプリのほとんどは、ユーザーがダウンロードした後、みんなが続けてくれるなんていうことはありません。当たり前のことですね、みなさん自分が無料のゲームアプリをダウンロードして、そしてそのうちどれだけのタイトルを続けて遊んでいるかを考えれば明白だと思います。そう、どのアプリのユーザーも、激減するものなのです。
例えば、ダウンロードされて1か月経った時に、30%のユーザーが残っていたら、それは大変に優秀なアプリだと言えます。たった3割になってしまったのではなく、3割も残っている、というのが正しい解釈です。
基本無料のゲームにおいて、ダウンロードした人の多くがすぐに脱落していって、ほとんどのゲームで初期に抱えたプレイヤー数は激減するものである、というのがまず1点です。みんな、無料だから少し遊んでみて、そして継続するか決めるのです。
3割の本当の意味
いまだに20代の5人に1人が継続して遊んでいるとしたら、それはすごい数字です
インターネット上の反応でも継続率の話と勘違いしている人を散見しましたが、おそらく、あまりに数字がすごすぎて継続率の話と勘違いしてしまったのかなと思っています。というのも、このアンケートは、ポケモンGOをダウンロードした男女に対して行ったのではなく、スマートフォンを所有する男女に行ったものです。これはとてもとても重要なポイントです。
7月の時点で6割の人が継続的に遊んでいると答えたのは、ポケモンGOをダウンロードした人の6割ではありません。おそろしいことに、スマートフォンを所有している20代の6割が継続して遊んでいると答えた、というデータなのです。そしてさらに、11月の時点でも、スマートフォンを所有する20代のうち約3割がポケモンGOを継続的に遊んでいると答えているのです。
確かにアクティブなプレイヤー数について激減と表現することは間違いとは言えません。データが正しいならば、20代の約6割遊んでいたものが、約3割になったんですから、半分程度に落ちています。しかし、それはポケモンGOが人気を失ったことを意味しません。無料だと言って最初にみんなダウンロードしても、全員が遊び続けるわけではないのは当然だからです。
そして、初期に比べてユーザーが減っていっても、今だにスマートフォンを持っている20代のおよそ3人に1人が継続して遊んでいることをデータは示しています。これは驚くべき数字です。それはプレイヤー数が少なくなったという意味ではなく、全く逆で、あまりに多くの人が遊んでいるという意味においてです。
20代が1番遊んでいる
今後は、ポケットモンスター サン・ムーンが発売されたことで、相乗効果もあるかもしれませんね(イラスト 橋本モチチ)
10代から50代全ての世代においても、継続して遊んでいると答えたのは平均で23.7%あり、おおよそ5人に1人はポケモンGOを遊び続けていることになります。ここであれっとなりますよね。23.7%が平均だとすると、20代は平均をこえているじゃないか、と。そうなんです。実は、1番遊んでいないのが10代の19.5%、1番遊んでいるのが20代の29.9%なんです。20代はもうやっていないなんてとんでもない、全く逆の話なんです。利用率が減ったのは20代が多いんですが、残っているのも20代が多いんですね。
これはつまり、若い子の方がたくさん飛びついて、離れる人も多い。おじさんおばさんは、始める人は若い人に比べるとすくないけど、定着率は高い、ということかと思います。そして全ての世代が19.5%~29.9%の間に入るわけですから、10代の少年から50代のおじさんおばさんまで、全ての世代でおおよそ5人に1人ぐらいが遊んでいるわけです。このデータは、非常に幅広い世代にまんべんなくポケモンGOが定着していることを示しているとガイドは考えます。
また「ポケモンGOの使用状況について」の回答は「以前から継続的に利用している」「以前は利用していたが今は利用していない」「知っているが、利用はしたことがない」「知らない」「よくわからない」から選択することになっていますが、「以前から継続的に利用している」が先ほどお話した通り23.7%で、「以前は利用していたが今は利用していない」が31.4%。合わせると、55.1%が利用したことがあることになり、半数以上がポケモンGOをプレイしたことがあることが分かります。そして、55.1%のうち31.4%が今は利用していないということは、ポケモンGOを遊んだ人の6割弱が今は利用をやめていて4割強がまだ遊んでいる、ということになります。
さて、これで冒頭の話にも概ね説明がついたかと思います。まず、前提として10代から50代のスマートフォンを所有する男女にアンケ―トをしたところ、半数以上の人がポケモンGOを遊んだことがあるということで、ビックリするぐらいたくさんの人がダウンロードしたことが分かります。そしてそのビックリするぐらいたくさんの人の6割程度がやめたわけですから、ポケモンGOを遊ばなくなったという人は多くいて当然ですし、周りでもやめた人がたくさんいるという実感は間違いではありません。
しかしそれでも、スマートフォンを所有する人の5人に1人は遊んでいるというレベルなので、プレイヤーが少ないどころか大変な人気のアプリということになります。そしてやはり、ポケモンGOが社会的に与える影響はまだまだ大きく、トラブルにも注意しなければいけません。
というわけで、あらためてポケモンGOのすごさを実感させられるデータでした。読み方によっては全く違う印象なってしまって、遊んでいる人が少なくなっているような印象で記事を書いているメディアもあるようですが、実際にはものすごくたくさんの人が今も遊んでいることがうかがえるのではないでしょうか。
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