アドバイス1 年間60万円の貯蓄を目指す
赤字家計ということですが、現在の月間収支を見ると6000円マイナスで、ボーナスはほぼクルマの維持費で消えてしまうとのこと。不定期の支出もありますから、結果的には貯蓄を取り崩さないときびしいということは、数字を見てもわかります。ただし、実際は学資保険に月2万7000円支払っているのですから、これは教育資金を積み立てているのと同じこと。実質、月2万円は貯蓄していることになります。それと、下のお子さんが小学校に上がれば、教育費は下がるはず。今より家計は楽になります。
では、それを踏まえて、今後どの程度貯めていけばいいのか。ボーナスが貯蓄に回らないとすると、できれば、下のお子さんが小学校入学以降は毎月の家計から5万円はしたいところです。年間60万円、10年間で600万円となりますから、現在の貯蓄と合わせて1000万円貯まることになります。
教育費は、学資保険の満期金が不明ですが、保険料からしてともに18歳満期200万円といったところでしょうか。だとすると、私立文系で大学にかかる費用は4年間で平均390万円ですから、大学資金として半分は用意できることになります。残りは2人分で400万円。当然、先の貯蓄ペースが実践できれば、そこから捻出できる金額です。
老後資金については、貯蓄ペースを維持することで、60歳の時点でまた1000万円程度に貯蓄が戻っています(お子さんへの仕送り費用等が発生した場合を考慮せず)。これが老後資金になりますが、実際にこれで足りるかどうかはわかりません。しかし、今は老後より目先の家計です。したがって、ご相談者の場合、老後に向けてこのくらいは用意しておくといった漠然な目標でもいいと考えます。
あとは、少なくとも65歳までは働くこと。70歳まで働くことができればさらにいいでしょう。収入を少しでも長く得ることが、もっとも効果的な老後対策のひとつなのです。
アドバイス2 妻の収入アップと家族の協力
さて、どうやって月5万円を捻出していくか。下のお子さんが小学校に進んでも、教育費以外に3万円程度を新たに家計から捻出しないといけません。しかし、これはそう容易ではないでしょう。家計支出を見る限り、大きく目立つ支出はありませんが、上手に抑えているのは保険くらい。それ以外は、贅沢はもちろんしていませんが、まんべんなく支出しているというイメージです。
この場合、何を削ることができるのかは、結局、自分たちで決めるしかありません。ご相談内容を拝見すると、都会のストレスに疲れて地方に移住し、現在は申し分のない環境の中で暮らしているとのこと。それを手に入れたのだから、引き換えに何かを削らなくてはいけない。それは、お子さんの習い事かもしれません。年間、40万円以上のコストがかかるクルマかもしれません。ともあれ、バランスを考えて、無理なく節約が継続してできる家計管理を行っていくことが必要なのです。
そして、そのためには家族の協力が不可欠です。つまりは、家族で我慢をするということ。ご相談者一人が頑張っても、効果的とは言えません。かえってストレスがたまり、逆効果になることも多々あるのです。
アドバイス3 親に「甘えられる」なら甘えていい
貯蓄を可能にするもうひとつの方法が収入アップです。具体的には、奥様が転職する、あるいは今の職場でフルタイムに切り替えるといった方法です。もちろん、そういった条件の求人や需要がなくてはなりませんが、そこは時間をかけて探していくしかありません。また、育児や家事をしながらのフルタイム勤務は奥様にそれなりの負担がかかります。それこそ家族の協力で、それが軽減できるよう、ご主人やお子さんともよく話し合い、乗り切ることが夫婦ともフルタイムの場合は不可欠です。
それと「親の援助に頼らざるを得ない」とありますが、頼れるならそうしてもいいのではないでしようか。頼り過ぎで親御さんの生活が苦しくなっては元も子もありませんが、余裕があるのなら、可能な範囲で支援してもらうことは、さほど悪いことではありません。
また、ご夫婦とも兄弟がいらっしゃるかは不明ですが、何であれ相続についても考え始める時期に来ています。たとえば、相続税が発生するのであれば、その対策として有効なのが非課税を活かした生前贈与となります。基礎控除となる暦年控除(年間110万円まで贈与税が非課税)をはじめ、住宅取得や教育資金に対して贈与の非課税制度があります。相続はいろいろデリケートな問題ですが、それも含めて親御さんからの支援はやはり視野に入れておくべきだと考えます。
相談者「匿名希望」さんから寄せられた感想
月に5万円、年間60万円の貯蓄という具体的な目標が見えたことは、漠然と感じていた老後の不安に明るい光が射した気がしました。具体的な数字は説得力がありました。次に、妻である私が今のパートからフルタイム勤務に変えて働くというアドバイスも、わかってはいるけれどできれば避けたい…という甘い気持ちがあったところに、お金のプロの方から喝を入れていただき、ようやく腹が座りました。はい、フルタイムで70歳まで働きます!!一方、削れる支出としてクルマの維持費もというご提案に関しては、公共交通機関が発達しておらずクルマがないと職場に行くこともままならない上、豪雪地帯でタイヤも夏冬両方必要な地域という事情もあり、そこは必要最低限の維持費だけでこの先も頑張りたいと思いました。この度はこのような機会を与えてくださりありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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