十勝のファーマーズベーカリー「満寿屋(ますや)商店」が今、東京に出店する理由。
十勝産小麦100%使用のパン
小麦の生産量日本一の十勝で1950年に創業した満寿屋(ますや)商店のパンに使われる小麦粉は十勝産100%。なんと年間500トンもの小麦粉がパンになるそうです。その満寿屋商店が2016年11月、都立大学前に東京本店をオープンしました。
奥に広い厨房が見える
今でこそ国産小麦でパンを焼く店も増えてきましたが、満寿屋商店は60年余りも前から十勝の小麦農家と共にパンをつくり上げてきたお店。製粉してからの時間が短く新鮮で香り高く、かつ日本人の好きなモチモチした食感のパンが焼けるということで、十勝産の小麦粉を使っています。
ゆめちから食パン
十勝産は小麦粉だけではありません。酵母(十勝産イースト、とかち野酵母)、水(大雪山の深層水)、乳製品(農薬や化学肥料を使わないリサイクル農業をする
あすなろ牛乳や、よつ葉バター、
共働学舎をはじめとする6つのチーズ工房でつくり上げた十勝のご当地チーズ)、砂糖(十勝産甜菜糖)、そして卵や豆なども十勝産にこだわっています。
満寿屋商店のパンは、このような豊かな農産物と生産者、作り手の温かな心意気が伝わってくるような品揃えで構成されています。
満寿屋商店代表取締役社長の杉山雅則さんによれば、十勝は乳製品や小豆などがすでに特産品として有名ですが、小麦でも知名度を高めたいと考えての東京出店なのだそうです。人口の多い首都圏で農業と深く繋がったパンの価値を伝えていくことで、十勝の農業発展だけでなく食料自給率の維持や日本の食の安心安全を守ることに貢献できるのではと考えているのです。
十勝チーズモールウォッシュのパン
とろ~りチーズパン
日本のナチュラルチーズは9割以上が北海道で作られ、さらに国内生産の約8割を十勝が担っているそうです。そんな中、最近ではアルプスの少女ハイジが食べていたような、いわゆるラクレットチーズ「十勝チーズモールウォッシュ」がご当地チーズとして注目されています。ラクレットは一般的には色素を添加してつくられますが、これは十勝川温泉のモール温泉水で洗うことで、色素の添加をしなくてもラクレットの風味を醸し、ほどよい黄色になるのだそうです。
その十勝チーズモールウォッシュを使った看板商品が「とろ~りチーズパン」(380円)です。生地はキタノカオリのカンパーニュで、モールウォッシュを主体とした5種類のチーズが生地の中にも上にもたっぷり使われています。
トカチーズバゲット
こだわりのわりにユルい名前がついているチーズパンがもうひとつあって、それは「トカチーズバゲット」(230円)です。キタノカオリを使った、細長いチャバタのような感じのパンで、「トカチーズ種」が使われています。トカチーズ種とは、十勝チーズモールウォッシュを練り込んだパン生地を2日間熟成させたもののことで、それを新しいパンに練り込むとミルキーで旨みの濃いパンができあがるのです。決してチーズが前面に出過ぎず、表面の香ばしさと練り込まれたほのかなチーズの香りを、乳製品と相性のよいキタノカオリがしっかり抱き込んでいます。
トカチーズバゲット断面
甘いパンやサンドイッチのロングセラー
シンプルなドーナツ
十勝では昔から農作業の合間のおやつに甘いパンが好まれているそうで、満寿屋商店にもあんパンやクリームパン、シンプルなドーナツなど、ふんわりと甘いパンがいろいろあります。
あんぱんやミルククリーム
あんぱんは十勝のミルク、バター、卵をふんだんに使った、しっとりしたブリオッシュ生地でつくられています。
包んでいるのはもちろん、十勝産の豆を炊いた自家製のあん。こしあんぱん、つぶあんぱん、白あんぱん、えんどうあんぱん(各130円)はどれも自信作なのだそうですが、ガイドのイチオシは上にアイシングで○が描かれている白あんぱん。十勝産の大手亡豆のこしあんとパンのきめ細やかさ、なめらかさ。洗練された味わいです。
スイートチーズは甘じょっぱい。発酵バターのチーズクロワッサン
ミルクフランス(180円)の味は言わずもがな。十勝産の脱脂乳で仕込んだ生地に十勝産のミルク、甜菜糖を使った自家製ミルククリームを挟んでいます。
ベビーパン
懐かしい甘さはベビーパン(2山100円)です。加糖中種を用いた甘味の強いちぎりパンで、十勝の子供はこれを食べて育ったという、誰もが知っている味なのだそうです。家族三代で買いに来るお客さんもいる、満寿屋商店のロングセラーです。
白スパサンド
ロングセラーといえば「白スパサンド」(240円)にも注目です。秘伝のからしマヨネーズで味付けしたスパゲティで、北海道産ゆめちからの麺。
「はるかコロッケバーガー」(200円)は
十勝帯広中藪農場のジャガイモ「はるか」をつかったホクホクのコロッケがサンドされています。
はるかコロッケバーガー
十勝産小麦ならではの味わい。食パンとシンプルなパン
麦皇
十勝産小麦の味わいをストレートに感じてみたいのならば、食パンやシンプルなパンがおすすめです。満寿屋商店で昔から愛されているスタンダードな角食パンは「麦皇」(300円)。トーストした時のサクッとした香ばしさは毎日でも飽きない味わいです。
麦粒ブレッド
麦皇に柔らかく二度炊きしたキタノカオリの玄麦が練り込まれているのが「丸麦ブレッド」(450円)。天候不順で雨にあたってしまった小麦は、甘味が強くなっているものの酵素活性が強く、パン生地がだれてしまうので生地づくりには使えないことがあるそうで、それを無駄にしないために生まれた粒使いのアイデアです。顔の見える農家の人が丹精込めて育て上げた麦を無駄にはできません。ナッツのようなぷちぷちした食感が楽しめる食パンです。
ゆめちから食パン
「ゆめちから食パン」(400円)は
前田農産のゆめちからを100%使用。普通の食パンより小さめの四角。きめ細かでしっとりもちもち、甘めの生地はそのまま焼かずにサンドイッチにも向きます。
甘熟小麦ブレッド
甘いといえば「甘熟小麦ブレッド」(450円)は72時間という冷蔵長時間発酵でナチュラルな甘味を引きだしている山型食パンです。
「とかち野酵母バゲット」(180円)は帯広畜産大学と北海道農業研究センターが共同開発した「
とかち野酵母」を使っています。十勝の蝦夷山桜から採取した酵母菌を十勝産のビート(糖蜜)で純粋培養した酵母種です。
チャバタ
しっとりもっちりの食感を満喫したいなら「チャバタ」(各160円)がおすすめです。
音更三浦農場のキタノカオリを使ったものと、
本別前田農産のはるきらりを使ったものがあります。小麦の品種の特徴を食べ比べて感じてみるのも楽しいと思います。
満寿屋商店はこれから、生産者限定の小麦のパンを定期購買できるCSA(地域支援型農業)として「小麦畑のオーナー制度」を始めるそうです。店内に受付窓口が設けられる予定で、こちらにも注目です。
先代亡き後25年間保管していたのを、この度電気自動車に改造したという、チャーミングな配達車兼宣伝カー。
満寿屋商店東京本店
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満寿屋商店 東京本店
住所:目黒区八雲1-12-8 鶴田ビル1F
電話:03-6421-2604
営業時間:10時~19時 水曜、年末年始休
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東急東横線都立大学駅徒歩5分