『"マイナビ賃貸"編集長に聞く物件サイトの正しい使い方』に引き続き、『マイナビ賃貸』編集長である三森一将さんにお話を伺いました。
不動産会社に連絡をする前にやっておいた方がいいことは?
― 『"マイナビ賃貸"編集長に聞く物件サイトの正しい使い方』では不動産会社の選び方について、物件検索サイトの上手な使い方をお伺いしました。では、「この不動産会社に連絡を取ってみよう」と思ったときに、事前にやっておいた方がいいことはありますか。自分が住みたい部屋はどんなところなのか、できるだけ具体的な条件を挙げ、不動産会社に伝えましょう
また、内見をしはじめて、いくつも部屋を見ていくと、みなさん、どうしても目移りしてしまうんですよね。そんなときにも、自分はどんなことが譲れて、どんなことが譲れないのか整理しておくと、迷ったときの判断材料になると思います。
― 一人暮らしの方は、どんな条件に注目しているんでしょうか。
「バス・トイレ別」は、最も希望されることが多いですね。それから、「オートロック」や「室内洗濯機置き場」などもよくチェックされる項目です。
ちなみに、意外にも賃料は多くの方にとって譲れる条件のひとつです。気に入った部屋なら、最初に決めておいた金額よりも1000~2000円くらい高くなっても仕方がないと思う人が多い。だから、賃料はざっくりとした目安で大丈夫です。ただし、その他の条件はより具体的に「譲れること」「譲れないこと」にグルーピングしておきましょう。
たくさん見ていくうちに、「あれもいいな、これもいいな」と欲が出てきてしまうことがあります。でも、例えば「両親が『女性だからオートロックで2階以上の部屋にしなさい』と言っているから、それは絶対条件にしよう」とか、「インターネット無料も魅力的な条件だけれど、家賃の安い部屋にすれば、ネットの料金分にはなるなぁ」とか。ある程度の判断基準があれば、欲張って決められないということが少なくなります。
進学や就職で短期間で部屋探しをしなくてはいけない。コツは?
― 進学や就職などで部屋を探すとき、遠方からきて数日のうちに決めなければならないということがあります。短期間での部屋探しを成功させるコツはありますか。遠方からの部屋探しでも、メールや電話を使えば、不動産会社とやりとりできます。内見前にできるだけ多くの情報を入手しましょう
メールであれば、物件のURLを貼って送るだけなので、不動産会社にとっても、決して大変な作業ではありません。「この部屋は興味がある。こちらはない」といったやりとりを何度かしていくうちに「この人はこんな物件がいいのかな」とわかってもらって、より自分に合った物件を紹介してもらえることもありますよ。
― 不動産会社と連絡を取ったら、そこにするかどうか、すぐに決めなくてはいけないような気がしていたんですが。
きちんとした不動産会社であれば、内見前の相談にも乗ってくれるはずです。何度もやりとりするのは決して迷惑なことではありませんよ。
検索サイトに掲載されている物件がすべてではありません。それ以外にも不動産会社は多くの物件を扱っていますので、内見前にできるだけ多くの情報を不動産会社から手に入れることがスムーズな部屋探しのポイントです。焦ってすぐに決断する必要はありません。
ただ、質問やお願いに応えず、「この物件がおすすめです」と一箇所しか勧めてこなかったり、「来店したあとでないと、ご案内できません」というような不動産会社はおすすめしません。そういったところにはお願いしない方がいいですね。
家賃の値引き交渉ってしてもいいの?
― 「気に入った部屋があったけれど、家賃がちょっと高い。なんとかならないかな」という場合、不動産会社に値引きの交渉をしてもいいんでしょうか。不動産会社は、借主と貸主の間をつなぐ役割。家賃の値下げなど希望があれば、思い切って相談してみましょう
― 実際に下げてもらえることはあるんでしょうか。
必ずしも下げてもらえるわけではありませんが、交渉の余地はあります。賃料は下がらなくても、敷金や礼金を下げたり、免除したりというケースはよくあります。また、エアコンを新品に交換してくれたり、クリーニング代を下げたりという場合もありますね。
地域や物件にもよりますが、今は基本的に買い手市場なので、物件が余っている傾向にあります。「賃料を少し下げてでも入居してもらいたい」「空室を出したくない」という大家さんも多いので、ダメもとでも言ってみる価値はあります。
― 敷金や礼金は交渉で下げてもらえることが多いとのことですが、最初からゼロの物件というのは何か問題があるのでしょうか。
特に問題はありません。敷金がゼロだからといって、ことさらに物件が汚かったり、あとからお金を請求されたりといったことは、まずありません。そこはあくまでも大家さんが空室を作らないためにはどうしたらいいのかという作戦で、「敷金礼金ゼロの方が入居者が増えるかもしれない」という判断で行われています。ただし、敷金や礼金がない代わりに、賃料や管理費が比較的高めに設定されていることもあるので、注意が必要です。
お金のことを考えるときに、単に毎月の家賃だけで考えるのでなく、二年間住んだらいくらかかるのかといった長い目で見直してみるといいと思います。「敷金礼金がゼロで、初期費用は安いが家賃が高い物件」と「敷金礼金は支払うけれど、家賃が安い物件」などを比べる場合、最終的にかかる金額を見ると、どちらに決めるかの判断材料になりますね。
「部屋を決めた!」そのあとに注意するべきことは?
― 住みたい部屋が決まったあと、注意しなければならないことはありますか。契約書や重要事項説明書に署名捺印したら、その内容に同意したという意味です。きちんと理解してから行いましょう
部屋探しの段階では、若くて感じのよい担当者が「景色がいいですよ」「日当りがいいですよ」と、その部屋のいいことばかり言ってくることがあります。ところが、重要事項説明になったとたん、急に貫禄のあるおじさんやおばさんが出てきて、難しい言葉で説明を始めるなんてことがよくあります。重要事項説明というのは、宅地建物取引士という国家資格を持っている人しか行うことができないので、ベテランのスタッフが出てくることが多いもの。でも、それに圧倒されて、言われるがままに署名捺印してしまわないようにしてください。
例えば、前の部屋ではあった設備が、今度の部屋にはなかったとします。でも、内見でも重要事項説明でも、それに気づかなかったのに、あとから「ついてないんですけど!」と文句を言っても、不動産会社の責任ではなく、事前に確認をしなかった入居者の責任ということになります。それだけ重要な話をたくさんされているという自覚を持って聞く必要があります。
― 実際に確認しなかったために、大変な目にあった例などはあるんですか。
極端な例になりますけれど、私自身の体験談なのですが、電線がつながっていない築年数の古い部屋に確認せずに住んでしまったことがありまして…。電気がつかなかったので、不動産会社に確認してみたら、「重要事項説明書に『電線が通っている』とは書いていないですよね」と言われて、まぁ確かにそうだったんですけど…。
結局そのときは自分で電力会社に連絡をして、無料で電線をつないでもらったので、その後の生活に困ることはなかったのですが、まさかライフラインがつながっていないとは誰も思いませんよね。極端な話ですが、こういう例もあるので、むしろ内見よりも重要事項説明が本番だと思って、よく確認することが大切だと思います。内見をしなくても契約は出来ますが、重要事項説明なしでは契約できないように法律で定められています。とても大事なものなのです。
― 重要事項説明では難しい言葉が多く、なかなか頭に入ってきません。特に気をつけて聞いた方がいいところはありますか。
まずお金まわりですね。家賃や敷金礼金など、事前に聞いていたものと相違がないかを確認してください。また、設備の有無も大事ですが、解約の手続きも確認しておくことをおすすめします。入居時にその部屋を出ていくときのことまで考える人は少ないんですが、トラブルになることが多いので、どのくらい前に手続きする必要があるのか、違約金が設定されていないか、クリーニング代金などが別途でかからないか、入居者が不利になるものはないかなど、しっかりと確認しておきましょう。
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部屋探しを成功させるポイントは、不動産会社との付き合い方にもあるようです。過度に怖がったり、疑ったりせず、知りたいことや聞きたいことは遠慮せずに質問することが大切です。そうすることで、信頼できる不動産会社とも巡り合うことができるのではないでしょうか。
今回ご協力いただいたマイナビ編集長・三森さんには、『"マイナビ賃貸"編集長に聞く物件サイトの正しい使い方』でもお話を伺っています。ぜひ併せてご覧ください。