記憶術/記憶術の基本

読めば分かる記憶術! 本質から考える記憶力の仕組み

世の中にはさまざまな「記憶術」があります。一方で、「効果的な方法なら、もっと広まるはず……」とその効果を疑っている人もいるでしょう。今回はそんな疑問に応えるべく、記憶術の全貌を解説しました。記憶術の本質をつかみ、上手に活用してください!

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

<目次>

記憶術の本質! 「記憶」とは何か?

記憶術を解説!

脳は無数の「結びつき」からできている

「で、すぐに大量に覚えられる記憶術は何ですか? 早く教えてください!」

そう思われるかもしれませんが、「急がば回れ」、まずはそもそも「記憶」とは何か?について押さえておきましょう。

「記憶」とは、一言で言うと「結びつき」

これは記憶の本質なので、しっかり記憶しておきましょう。どんな記憶術でもこれが土台となります。

記憶というと、頭の中に「入れる」、さらにいうと「押し込む」というイメージを持っている人がいるかもしれませんが、そうではないのです。

なぜ記憶は「結びつき」か?というと、記憶を行っている「脳」の構造がそうなっているから。

記憶を行う大脳皮質には約140億個の神経細胞があるとされていますが、それら一つ一つに千から万もの神経回路がぶらさがり、神経細胞同士を結びつけています。

脳にはまさに桁違いの「結びつき」があり、記憶はこの「結びつき」によって行われるのです。
 

記憶する・忘れないための大原則

このため、記憶する、忘れないようにするには、この「結びつき」を作り、維持する、さらには強くすればいいわけです。

「結びつき」ですから、新しい情報・知識は、すでにある記憶と結びつける、つまり関連付けることが必須となります。

ただ、いったん結びついたとしても、最初はその結びつきは弱く、だんだんと切れていくようになっています。

ずっと結びついたままでいてほしい、と思うかもしれませんが、それでは重要なものも重要でないものも同じように記憶されてしまって収拾がつかなくなります。このため、脳は放っておけば結びつきが弱くなり、忘れる、思い出せないようになっているのです。

では、どうすれば結びつきを保ち、さらに強化できるのか? いくら、「これは重要だから、結びついていてくれ!」と脳に言い聞かせても、脳には伝わりません。どうやって、これを伝えればいいかというと、それは……

「くり返し」です。

「そんなことは知っているよ。だから、くり返さないでも記憶できる、忘れない“記憶術”を求めているんです!」と言われるかもしれません。ただ、やはりこれがなんといっても記憶するため、忘れないための土台となります。

「何度もくり返し起こる、体験することは重要」という極めて合理的な仮定に基づいて、われわれの脳に組み込まれているメカニズムなので、なくなることはないでしょうし、くり返しさえすれば脳は確実に記憶し、忘れないでいてくれます。
まずは、この記憶の大原則・「くり返し」を受け入れて、どうすれば楽にくり返せるか? 効果的なくり返しとは何か?を考えて、くり返しをしていきましょう。

なお、くり返す際のポイントを一つお伝えすると、ただ読むことをくり返すのではなく、思い出すことをくり返すことが効果的です。思い出せなければ記憶したとはいえないからです。
 

“記憶術”とは何か?

記憶術は原始の記憶を活用する

記憶術は原始の記憶を活用する

「でも、トランプのカードの並びをあっと言う間に覚えたり、円周率を何十万ケタも記憶したり、特殊な記憶“術”はあるんでしょう? それを教えてください!」
という人がいるかもしれません。

確かに「記憶術」というテクニックはあります。実際、非常に強力です。

ただし、これに過大な期待を持つのは禁物です。なぜなら、あなたが記憶したいであろう、抽象的な大量の知識を記憶するのには向いていないのです。

これは、われわれ人間がまだ抽象的な大量の知識を扱う前、日々の食料を得たり、天敵から身を守ったりするために必死だった時代に鍛えられた記憶を活用する方法だからです。

その記憶とは「具体的なイメージ」「場所・空間」です。「記憶術」と言われるものは、ほぼ例外なくこの二つの要素を活用しているのです。

たとえば、教科書やテキストに書かれている抽象的な知識と、あなたが実際に見たり、触れたりできる具体的なモノとどちらが記憶しやすいかというと、後者ですね。具体的なモノのほうが五感と結びつくため記憶しやすくなります。歴史的に考えても、具体的なモノとの付き合いに比べて、われわれの抽象的な知識との付き合いは浅く、慣れていないのです。

「記憶術」はわれわれが具体的なモノを記憶しやすい特性を活かして、トランプの数字やマークといった抽象的な記号を具体的なイメージに変換して記憶していきます。ただ、これによって扱う情報量は増えざるをえません。

52枚のトランプのカードはもちろん、円周率の何十万ケタといっても、われわれが試験で記憶する必要がある知識に比べれば、もともと圧倒的に少ない情報量ですから、「具体的イメージに変換」しても支障はありません。しかし……なわけです。

もう一つ、記憶術は覚えたい情報を場所に結びつけることで記憶していきます。たとえば、トランプのカードの1枚めの数字・マークを具体的なイメージに変換し、それを家の玄関に結びつけ、同じように2枚めは玄関から出た門に結びつけるといった具合です。

これは、われわれ人間はサバイバルするために、エサがある場所、危険な動物がいる場所を記憶することが求められたため、場所に関する記憶力は発達しており、それを活用しているのです。記憶しやすい「場所」に覚えたいモノを結びつけることで、素早く記憶することが可能になるのです。

ただ、場所の記憶がすぐれているといっても、われわれが記憶したい抽象的な知識すべてをいちいち場所に結びつけるのは本末転倒で非効率になります。

記憶術は万能ではなく、このような限界があるのです。これを踏まえたうえで、勉強の柱となる目次項目に絞って覚えたり、なかなか覚えられないものに限ったりして、ピンポイントで活用することが重要です。
 

最高の「記憶術」とは?

では、われわれが仕事や試験で求められる抽象的で大量の知識はどう記憶すればいいのでしょうか?

基本は最初にもお伝えした記憶の本質である「結びつき」です。

よく、「丸暗記」はダメだと言われます。これは、とにかく「入れる」「詰め込む」ことしかしないで、結びつきを無視するため記憶できないのです。

大事なことは「結びつき」をつくること。

そして、この結びつきの「型」には大きくわけて2つあります。一つは「物語」。時系列に原因と結果、因果関係で結びついている形です。

そしてもう一つは「階層(ピラミッド)構造」。空間的に上から下にだんだんと広がり、下から上にだんだんとまとまる形で、抽象と具体、目的と手段といった関係で結びついている形です。教科書やテキストなど、知識を整理した本の目次を思い浮かべてもらえるとわかるといいでしょう。

人間が一度に処理できる情報には限りがありますが、だんだんと細かく枝分かれしていく階層構造により、その限界を乗り越え、大量の知識に対して無理なく結びつきを作ることが可能になるのです。

ですから、記憶しなければならない情報・知識に対して、焦って頭の中に入れよう、詰め込もうとするのではなく、時系列や因果関係で整理したり、階層構造に整理したりして、結びつきをとにかく作っていきましょう。

これは「理解」につながっていきます。あなたが「わかった!」というときの体験を振り返ってもらうと、そこには何かと何かが結びついたことがあるでしょう。

実は記憶と同じように理解も「結びつき」であり、最高の「記憶術」とは「理解」することなのです。

いかがでしょう?

これが記憶と記憶術の全貌であり、世の中の記憶術はここからの派生にすぎません。まずはこの記事に書かれたことをしっかり理解・記憶しておけば、もう記憶術に迷うことはなくなります。

くり返し読んで、あなたの記憶に結びつけてください!

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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