年末調整/年末調整で受けられる控除

配偶者控除の所得税と住民税軽減は、2020年からどう変わった?

2018年より配偶者控除が変わり「103万円の壁」が「150万円の壁」となりましたが、2020年からは「要件の所得額」に変更がありました。本人の所得制限があり、夫婦それぞれの年収で増税、減税に。所得税、住民税の配偶者控除についておさらいをしましょう。

福一 由紀

執筆者:福一 由紀

ファイナンシャルプランナー / 仕事・給与ガイド

  • Comment Page Icon
2018年には配偶者控除制度の仕組みが根本から変わりましたが、さらに2020年は要件の所得額が少しだけ変わりました。この2つの変更を順に見ていきましょう。
 
配偶者控除、所得税・住民税 2020年

配偶者控除、所得税と住民税の軽減は2020年からどうなる?


まずは、第一弾の2018年の変更と2017年までの配偶者控除の違いを見る前に、税金の計算方法の基本をおさらいしておきましょう。2017年までの制度を「旧配偶者控除」、2018年以降を「新配偶者控除」として説明します。2017年12月までの収入は旧配偶者制度が適用され、2018年1月から新配偶者制度になりました。
  ※本記事は、妻がパート収入のみ、夫が配偶者控除を受ける場合で説明します
 

配偶者控除は、所得税・住民税の計算時に利用

配偶者控除は、所得税や住民税の税額を計算する時に使われるものです。個人の所得に対して、所得税は国に、住民税は地方に納めるものです。これらの税金がどのように決まるのかをみてみましょう。

所得税、住民税は「所得」に対して税金がかかります。この所得とは、

所得=収入-経費(給与の場合は、給与所得控除)

です。会社員やパートなどの給与所得では、経費を計算することが難しく、収入の金額に応じて経費を計算しようというのが「給与所得控除」です。給与所得控除は最低でも65万円(2019年まで/2020年以降は55万円)が認められています。
 

所得控除は税金が安くなるチケット

次にこの所得から、その人の事情を勘案して税金を決めていきます。この「その人の事情」を所得控除といい、配偶者控除もこの所得控除のひとつです。具体的には、

課税所得金額=所得-所得控除(配偶者控除など)​​​​​​​

で計算された「課税所得金額」をもとに、実際の税額が決まります。

この所得控除が多ければ多いほど課税所得金額が減り、税金が安くなっていきます。所得控除は税金が安くなるチケットのようなものですね。
 

2019年まで:所得38万円以下で適用、控除額は所得税38万円・住民税33万円

2019年までの配偶者控除をみておきましょう。所得控除のひとつである配偶者控除は、年間の合計所得金額が38万円以下の配偶者がいる場合に受けられました。実際の控除額は、所得税38万円、住民税33万円。旧配偶者控除、新配偶者控除ともに配偶者の所得条件は同じ金額です。
 

2020年から:所得48万円以下で適用

2020年からの配偶者控除は、年間の合計所得金額が48万円以下の配偶者がいる場合となりました。これは、給与所得控除の最低金額が2020年から55万円になったことによるものです。
 

2020年以降も「パート年収103万円」は変わらず

2019年以前での配偶者の所得金額が38万円以下というのは、パートなどの給与所得のみの場合は、年収103万円以下となります。上で説明した、給与の場合の経費相当(給与所得控除)が最低65万円認められていたからですね(所得38万円=収入103万円-給与所得控除(経費)65万円)。

同様に、2020年以降の配偶者控除の所得金額が48万円以下も、パートなどの給与年収103万円以下となります。給与所得控除が最低55万円と変更となったためです(所得48万円=収入103万円-給与所得控除(経費)55万円)。
 
パートなどの「給与年収」のみで考えると、2019年までも2020年以降も変更なしということです。

いずれも、パートの妻の年収103万円であれば、夫の税金を計算するときに、課税対象の所得額から、所得税38万円、住民税33万円がひかれるということです。
 

旧配偶者特別控除:103万円を超えても、141万円までは段階的に控除

配偶者控除と配偶者特別控除。給与年収で103万円までは配偶者控除が、103万円超から141万円までは配偶者特別控除を受けることができる

旧配偶者控除と旧配偶者特別控除。給与年収で103万円までは配偶者控除が、103万円超から141万円までは配偶者特別控除を受けることができる

では、妻の給与年収103万円(所得38万円)を超えたらどうなるのでしょう? 2017年までの旧配偶者控除からみてみます。 妻の所得では38万円超から76万円未満、給与収入では103万円超から141万円未満の場合、夫は「配偶者特別控除」を受けることができます。
 

新配偶者特別控除:103万円超えて150万円まで満額、201万円まで段階的に控除

新配偶者控除と新配偶者特別控除(2020年以降)。新配偶者特別控除は、配偶者控除と同額の控除を年収150万円まで受けることができ、201万円までは段階的に控除が減るが減税枠は増えることに

新配偶者控除と新配偶者特別控除(2020年以降)。新配偶者特別控除は、配偶者控除と同額の控除を年収150万円まで受けることができ、201万円までは段階的に控除が減るが減税枠は増えることに

2018年から適用されている新配偶者特別控除は、給与年収103万円(所得38万円)を超えて給与年収150万円(所得85万円)までは、配偶者控除と同額の38万円の控除を受けることができます。そして、給与年収150万円(所得85万円)を超えると配偶者特別控除が徐々に縮小し、給与年収201万円(所得123万円)でゼロになります。

配偶者特別控除の金額は、新旧とも、配偶者(妻)の所得に応じて、所得税は38万~3万円​​​​​​​、住民税33万~3万円​​​​​​​となっています(ただし控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合)。

配偶者控除と配偶者特別控除をあわせてみると、年収「103万円の壁」が「150万円の壁」になったということですね。
 

本人所得によっては、控除が減額・ゼロになる場合も

ただしこれらの控除を受けるためには、控除を受ける人(夫)のその年における合計所得金額に制限がかかります。控除額が減ったりゼロになったりする場合も。

控除を受ける人(夫)のその年における合計所得金額とその控除額は以下の通り
  • 旧配偶者特別控除:夫所得1000万円超 → 控除ゼロ(配偶者控除は制限なし)
  • 新配偶者控除:夫所得900万円超・1000万円​​​​​​​以下控除減額(旧配偶者控除は制限ありませんでしたが、新配偶者控除は制限ありです)
  • 新配偶者控除:夫所得1000万円控除ゼロ(旧配偶者控除は制限ありませんでしたが、新配偶者控除は制限ありです)
  • 新配偶者特別控除:夫所得900万円超・1000万円以下控除減額
  • 新配偶者特別控除:夫所得1000万円​​​​​​​超 控除ゼロ
配偶者控除、配偶者特別控除はこのようにして所得税、住民税の税額を軽減しています。2018年からの新しい制度も基本的な考え方は同じで、本人の所得要件が細かく設定されました。また、2020年からは所得基準が変わりましたが実質的なパートなどの給与収入は変更なしです。新旧の制度をしっかり見極めて、これからの働き方を考えていくといいでしょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

【関連記事】
【編集部からのお知らせ】
・「家計」について、アンケート(2024/12/31まで)を実施中です!

※抽選で30名にAmazonギフト券1000円分プレゼント
※謝礼付きの限定アンケートやモニター企画に参加が可能になります
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます