うつ病の3大妄想――お金の心配、病気の心配、罪の意識
「ネガティブな考えにとらわれて抜け出せない」「悪い方に考えすぎて、希望を見出せない」――こうした状態がほぼ毎日、2週間以上続いた場合、うつ病の可能性があるかもしれません。うつ病の微小妄想には、大きく3つのタイプがあります。1つ目は「貧困妄想」、2つ目は「心気妄想」、3つ目は「罪業妄想」です。以下で詳しく解説します。
うつ病による過度なお金の心配…「貧困妄想」
始終、頭に浮かぶのは、お金の心配ばかり……それは「貧困妄想」かも?
ナインティナインの岡村隆史さんは、2010年に一時期芸能活動を休止されていたのを覚えていますか? 岡村さんはこのときうつ病に罹患し、強い「貧困妄想」にとらわれていたのだそうです。芸人として不動の地位を築き、収入も破格だった岡村さん。それにもかかわらず、「お金がない! お金がない!」とパニックになり、相方の矢部さんが芸能活動を休止するように促したといわれています。
うつ病による過度な病気の心配…心気妄想
2つ目の「心気妄想」とは、病気を心配する妄想。「病気で働けなくなってしまうのでは?」「このままでは死んでしまうかも…」。こんな風に、病気を過剰に心配してしまう妄想です。体のどこかが痛んだり、動悸や不調を感じると「これは“がん”のサイン!?」「重い病気?」などと過剰に心配になり、いてもたってもいられなくなってしまいます。検査でどこも悪くないことが確認できても納得がいかず、あちこちの病院を渡り歩く。手術が成功し「問題ない」と言われても、「医師は本当のことを隠しているのでは?」「病気が再発しているのでは?」などと考えすぎてしまう…。こうした妄想を「心気妄想」と呼びます。
うつ病による過度な罪の意識…罪業妄想
3つ目の「罪業妄想」とは、「○○をしてしまった。私はなんて罪深い人間なんだ」「きっといつか罰を受けるにちがいない」…というように、自分を責めすぎてしまう妄想です。たとえば、「私が不幸の星に生まれたから、夫や子どもににこんなことが起こってしまった」「この不運は、何かの罰だ!」。このように、あらゆることに対して「罪」を感じてしまいます。ちなみに、ベストセラーとなったコミック『ツレがうつになりまして。』(細川貂々著、幻冬舎)では、うつ病になった夫の罪業妄想(コミック内では「申しわけない病」と書かれていました)がリアルに描かれていました。「病気が治らなくて申しわけない」「妻の漫画が売れなくて申しわけない」「ペットにもこんな飼い主で申しわけない」…。こんな風に、何につけても「自分の罪」と感じてしまうのです。
まずは「薬」で気持ちと体調を楽にしよう
うつ病は「脳」の病気。まずは薬で症状を楽にしましょう
「精神科の薬」というと、副作用や依存性、離脱症状(薬をやめたときに現れる不快な症状)を心配してしまう人も少なくないかもしれません。しかし、最近の薬は副作用が少ないものが主流ですし、医師は患者の症状に合わせて、負担の少ないものを上手に選んで処方してくれます。心配しすぎずに、受診して相談してみてください。
ゆっくり休んで、気持ちを受け止めてもらいましょう
そして、もう一つ必要なのが、ゆっくり休むこと。処方薬を飲めば、リラックスしてきますので、「ぼーっ」とした気分に任せて横になり、うたたね寝をしたりしてのんびり過ごしてみましょう。仕事に関しては、休養した方が良いケース、仕事を続けながら治療した方が良いケースなど、さまざまです。医師との相談によって業務を軽減するか、しばらくお休みするかを検討してみてください。
うつ病の妄想は、そう簡単に消えるものではありません。本人は真剣に「絶対そうだ!」「そうなるに違いない!」と信じているからです。「考えないようにしよう」と思っても、どうにもならないときもあるでしょう。薬によって不安や憂うつを抑えつつ、家族など、身近な人に話を聞いてもらい、気持ちを受け止めてもらうとだいぶ楽になります。また、医師の許可があれば、カウンセリングを利用してみるのも一つの手です。
どん底まで悩み、本人はとても苦しい思いをしてしまう「うつ病の3大妄想」。でも、そこからはいずれ必ず抜け出すことができます。まずは精神科を受診して、医師に相談してみましょう。