「○○しないとおばけが来るよ」と子供を脅かすのはOKかNGか?
「早く寝ないとお化けが来るぞ~」は、しつけとしてあり?
<目次>
質問1:「○○しないとおばけが来るよ!」は子供にとって脅しになるの?
「おばけが来るよ」と言うのは脅し?
受け手である子供が、「○○しないとおばけ(鬼)が来るよ!」のどこに着目するかというと、それは、「おばけ」と「鬼」の部分。ママは、「○○」への効果を引き立たせるために、「おばけ」や「鬼」を引き合いに出しているにすぎないのに、子供にとっては、おまけの方のインパクトが強すぎてしまって、そちらに気持ちが行ってしまうわけです。
なぜこのようなことが起こるかというと、世の中には、「とくに恐怖を引き起こしやすいもの」が存在し、「おばけ」や「鬼」はそれに当たるからです。「○○恐怖症」という言葉が示すとおり、人間には、恐怖を感じやすい対象があるのですね。子供なら「虫が嫌い」「暗闇がダメ」「注射が怖い」などが典型例です。だから、「○○しないとおばけが来るよ!」だと、「おばけ」が圧倒的な力を持ってしまうため、組み合わせとしてバランスが悪く、脅しの矛先が変わってしまうのです。
質問2:「絶対的に怖い存在」を作るのも、子育て上、有効なのでは?
おばけは絶対的恐怖な存在?
しかし、これと、子供に「怖い存在を作ること」とは別の話。「自分を守るための安全対策」は必要ですが、怖い存在というのは、トラウマとなりがちなので有効とは言えません。
たとえば、暗闇が恐怖の対象となってしまっていると、その子は、外でのひとり歩きどころか、家の中で、隣の部屋に行くことも、2階にひとりで上がっていくことさえもできなくなったりします。なぜなら、恐怖症というのは、「般化」と言って、他の似たような状況へと広がっていきやすいからです。言うなれば、「恐怖の伝染」です。その点から見ると、「絶対的に怖い存在」は作るべきではないと言えるでしょう。
質問3:しつけ上、「鬼が来る」「おばけが来る」は有効なの?
質問1にも関連していますが、「○○しないとおばけが来るよ!」は、実際にはおばけへの恐怖心を芽生えさせる方に効き目がありすぎて、肝心の「○○」への効果が薄くなる傾向があります。どういうことかというと……。たいていの場合、おばけと組み合わせになるのは「早く寝ない場合」「だらだらしている場合」など、ママが思っている時間通りに事が進まないときです。使い始めの段階では、子供は「おばけが来たら大変! さっさと寝よう」と思うので、効果があることも多いと思います。ママはその即効性に「しめた!」と、毎晩のように繰り返して使ってしまうことになります。
しかし、おばけがいったん怖くなってしまってからは、とたんに効かなくなります。おばけが怖くて、寝つけなくなるのです。そして、上にあげた「般化」が起こりはじめると、事はどんどんとやっかいになっていきます。トイレも行けない、1人で部屋に居られない……とおまけがどんどんと増えていきます。
これでお分かりのように、「おばけが来るよ」「鬼が来るよ」は結果的に、その子だけでなく、ママのことも苦しめることになります。寝かしつけに時間がかかる、夜中もトイレで起こされる、すぐにママを呼ぶ……と逆にできないことが増えていってしまうため、しつけ上、有効な手段とは言えません。
質問4:脅さずに、言うことを聞かせるにはどうしたらいいの?
「おばけが来るよ」「鬼が来るよ」は、初めの段階では即効性があり、子供がすぐに言うことを聞くので、その効果を信じてしまいたくなります。ですが、これまで述べたように、のちのち大変になります。2歳で植えつけてしまった「おばけ恐怖」が、10歳になっても治らないということはよくあることなのです。「おばけが来るよ」は「デメリットを伝える」というタイプのしつけ。「○○しないと、痛い目に遭うぞ」の言い回しは、「ネガティブ×ネガティブ」の図式になっているのが分かるでしょうか? できなかったときのデメリットを伝えることで、子供をやる気にさせるやり方です。しかし、おすすめするしつけ法は、その真逆。「メリットを伝える」という方法です。その図式を「ポジティブ×ポジティブ」にするのです。
具体例を挙げると、
「8時におふとんに入れたら、絵本を1冊読んであげるよ」
「今、お着がえができたら、すぐに公園に連れて行ってあげるね」
「仲直りできたら、みんなでおやつを食べようね」
「今だったら、ママも一緒に手伝えるよ」
「できなかったら~~だよ」という否定文ではなく、「できたら~~だよ」の肯定文で仕上げてみてください。「おばけが来るよ」に慣れているママにしたら、これらはインパクトに欠けるかもしれません。でも、しつけはインパクトで勝負するものではありません。のちのちまで引きずってしまう心への影響も踏まえれば、少し遠回りに見える「メリットを伝える」方法の方が、実はずっと近道なのです。
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