ハッチバックこそ輸入車エントリーモデルの基本
ハッチバックのベンチマークとなるVWゴルフ。実用車の筆頭格でありながら、実用スポーツのGTI(389.9万~399.9万円)なども用意する。1.2Lターボ搭載モデルが249.9万~280.9万円、1.4Lターボモデルが328.9万円
輸入車エントリーモデルの基本といえば、今も昔も、いわゆる欧州B、Cセグメントに属するハッチバックだ。国産車でも、Cセグメントこそすっかり廃れてしまったとはいうものの、リッターカークラス(Bセグメント相当)は今でもハッチバックスタイルがメインストリームだ。
それゆえ、特殊な高性能モデルやコラボレーションモデルを除いて、ほとんど全ブランドが200万円台から300万円台のあいだに揃っていて、選び放題。ある意味、外国車選びのパラダイス、なカテゴリーである。
このクラスの絶対王者、世界のベンチマークはVWゴルフ、というと面白くもなんともないのだけれど、事実なのだからしょうがない。基本性能の高さで群を抜く。どこまでも安定感ある走りは、面白みが無さ過ぎて、逆に愉快になってしまうほど。ゴルフを買って“間違った”と思うような人は、もとよりこの手のハイレベルな定番品に手を出してはいけない趣味趣向の人、ということだろう。
ゴルフのライドクオリティをいっそうプレミアムに演出するアウディA3スポーツバックも選択肢には残しておきたい。アウディの見映えクオリティは現時点でも世界一レベル。これだけは、他の欧州車も日本車も、なかなか真似ができていない。
そんなゴルフに最近、肉薄しているのが、プジョーの308シリーズだ。最近ではディーゼルエンジンもラインナップに加えて、いっそう欧州車色も強まった。派手さには欠けるけれども、それはゴルフだって同じこと。街に溢れていないぶん、乗っていても気分がいいはず。
スカンジナビアンデザインの潔く有機的な美を備えたコンパクトハッチバックのボルボV40。300万円台では1.5Lターボのキネティック(339万円)とモメンタム(384万円)、2Lディーゼルターボのキネティック(364万円)が選択可能
見た目の格好よさや、ファッショナブルなスタイルを重視する向きには、ボルボV40を勧める。ディーゼルターボの力強い走りを楽しみつつ、女性ウケするインテリアや躍動感のあるエクステリアデザインなど、ドイツ車にはない雰囲気づくりもお見事!
セダン&ワゴン。選んで間違いのないモデルばかり
8世代目となる、VWの本格的ミドルクラスセダン&ステーションワゴンのパサート。1.4Lターボに7速DSGを組み合わせる。300万円台ならトレンドライン(329万円)とコンフォートライン(359万円)が選べる
ハッチバックでもなく、ミニバンでもなく、ましてや流行のSUVでもなく、となれば、車型の最も基本にして目的合理性の少ないセダンタイプが、その派生であるワゴンやクロスオーバースタイルから選ぶことになる。年々、選択肢が減りつつあるカテゴリー(何しろ、国産車の同価格帯には、最強のプリウスが君臨している! )だが、年配層にはいまだ根強いファンも多いことは確かで、そのため、結果的に実力派だけが残っている、という印象だ。逆に言うと、クルマとしては選んで間違いのないモデルばかりということ。
VWパサートのセダンとワゴンなどは、その筆頭格だ。いまどき珍しい、パーフェクトな3ボックススタイル、ステーションワゴンで、車両本体価格350万円前後というのは、その質実剛健なパフォーマンスを考えるにビッグバーゲンと言っていい。「君も立派なオトナになったねぇ」的なセダン&ワゴンといえば、その優等生ぶりも分かってもらえるはず。
パサートじゃ妻が乗るのにちょっと大きい、という向きには、アウディA3セダンを。見た目の質感はパサート以上。昔のスタンダードサイズで、取り回しの良さは格別。
安心安定と個性的なスタイルの両方を求める向きには、VWゴルフオールトラックを、ぜひ。
日本ではスポーティグレードのみをラインナップするルノーメガーヌエステート。2Lツインスクロールターボに6MTを組み合わせたGT220(327.9万円)と、1.2LターボにデュアルクラッチのGTライン(285.9万円)を用意した
VWやアウディじゃ、街中でよく見かけすぎる。人とは違うブランドが欲しい、というなら、フランス車だ。ルノーメガーヌエステートなら、さすがは“エンジョイ・バカンス”の国のワゴンだけあって、実用性は高く、GT性能も、超本格派。細かな気遣いはしてくれないけれど、本質的に良質、というところが、本物志向のドライバーにはたまらない。
ミニバンは “クルマの本質を買う” フランス製をオススメ
なにぶん、この価格帯のミニバンというと、日本では“キング”のアルファード&ヴェルファイアの低グレードが十分に射程圏内。そこをあえて(サイズも装備も見劣りしてしまう)輸入車で、という人は、かなりのクルマ通だ。見映えよりも、クルマの本質を買う、という姿勢がないと、なかなか難しい。
オススメは、シトロエン。え? どうして? 、ミニバンにシトロエン、と思われるかも知れない。確かに、欧州ブランドにミニバンは少ないし、フランス車ともなればそんなイメージなどまるでないだろう。けれども、欧州の乗用専用ミニバンはそもそもフランスで生まれている(ルノーエスパス)し、シトロエン&プジョーも90年代には参入した。
そんなフランスのミニバンだから、これがよくできているのだ。走りや装備もさることながら、乗っていて、フロントウィンドウ越しに“バカンスの場所”が見えてくるような気分になるところがいい。ビジネスライクな国産ミニバンとは違って、目指す場所のワクワク感を先取りできてしまうような、そんな乗り味を、筆者は初めてC4ピカソで知った。
ひるがえって、ドイツ勢はというと、商用バンからの転用こそあったが、乗用ミニバンという点では、どちらかというと後進国のイメージ。けれども、VWにはトゥーラン、シャランというよくできたモデルがあって、その走りの実力の高さは折り紙つき。日本の同クラスミニバンに比べると、ドライバーが10倍嬉しい仕立てになっている。BMWにもグランツアラーという小型ミニバンがラインナップされているが、FFミニバンという不慣れなパッケージゆえ、もう少し熟成を待ってみたい。
流行のSUV。派手さと個性で人気上昇間違いなし
流行のSUVカテゴリー。国産にもマツダCX-5やトヨタハリアーという強敵がある。そもそも、コンパクトSUVは日本車が先鞭を付けたカテゴリーだったから、今でも強い。けれども、輸入車には、従来のクーペに代わる存在感の派手さ、個性があるというのもまた事実。実用的なスペシャリティという点で、輸入コンパクトSUVの人気は、まだまだ上昇していくに違いない。
伝統を今に伝えるジープ ラングラー。最上級グレード以外のサハラとアンリミテッド スポーツ(379.08万円)なら300万円台で。写真はソフトトップをもつ限定車、スポーツ ソフトトップ エディション(396.36万円)
ジープラングラーのようなウルトラ硬派が、突然流行ったりもするが、よほどの好き者でないと乗りこなすのは難しい(運転はラクになったが、あの出で立ちを自分のライフスタイルのなかに取り込むハードルが高い)。逆にいうと、最も輸入車らしいクルマのひとつであることは、間違いない。
ベストチョイスは、アウディQ3だ。このクルマには、輸入SUVに求められる全てがコンパクトにまとまっている。国産車にはない高い見映え質感、素直で軽快なタウンライドフィール、安定した高速性能、などなど、魅力は多い。もうじき、さらに弟分のQ2もやってくる。それを待つという手もアリだが。
対抗には、ジープレネゲードを推す。フィアット500Xとプラットホームを共有する兄弟車で、走りのキャラは似通っているが、それでもジープっぽさがにじみ出るレネゲードには、SUVらしい泰然とした走りが宿っている。
BMW X1も悪くないが、X3ほどのキレ味に乏しい。こちらもFFがベース。つまり、BMWにとっては発展途上領域で、今後の進化に期待したいところ。