日銀のマイナス金利で注目の不動産投資。空室リスクとリフォーム費用などのコスト面も考慮しよう

2016年2月に導入がスタートした日本銀行のマイナス金利政策は、資産の運用環境を大きく変えました。安全とされる日本国債の利回りも低下し、10年物日本国債の利回りは、2016年7月時点でマイナスになっています。

そうした環境下で、金融機関の貸出金利の低下もあり不動産投資(中でもマンション投資)が関心を集めています。また、供給動向を見ても都心部のコンパクトマンションが目立つようになっています。マンション投資には、比較的安定した賃料収益がある一方、退去による一時的な費用の発生や空室期間の長期化、資産価格の下落などリスクも多いのも事実です。今回は、マンション投資について考えてみたいと思います。

投資用としてマンション購入を検討するなら、まずは資金調達面を考えなければいけません。自宅ローンの場合と比べ、融資金利は物件特性と購入者の信用度に大きく左右されます。

例えば、ワンルームタイプのマンションは、融資に積極的でない金融機関も目立ちます。不動産投資ローンに積極的なオリックス銀行の金利は、3年固定特約型で2.3%(7月20日時点 ホームページ参照)。1%を切る設定も珍しくない住宅ローン金利と比べると通常高くなります。よって、このタイプのマンションは、返済コストがかかる上に将来売却する場合も買い手が有利な資金調達が難しいことは認知しておきましょう。当然売値にも影響します。

もう一つ注意したいのが借入期間です。実需目的のマンション購入であれば、耐震性などに問題がなければ、長期の借入が可能です。一方、投資目的の購入の場合、鉄筋コンクリート造りであれば築47年までが借入期間の目安です。このことは、築年数が経過すると融資期間が短くなることを意味します。要するに、買った時よりも売るときの方が時間の経過で明らかに買い手が限られてくるのです。

東京都心

東京都心


管理費や修繕積立金などのランニングコストも注意が必要です。投資用物件は、正味の利回りが高い方が売りやすいため修繕積立金を当初低く定めているケースもあります。入居者がなかなか決まらない空室リスクや退去後のリフォーム費用も考慮する必要があります。家族層と比べて若い単身者は、転職や転勤、結婚など引っ越しする頻度が高くなります。ある程度の余裕資金がないと空室期間が長期化すると返済にも窮します。経年でクロスの張り替えや給湯器やエアコンの故障も発生します。専有面積が広いマンションは、その分修繕費用が大きくなります。設備機器が交換となれば相応の出費が発生します。

さらに入居者の管理も重要です。不動産会社に賃貸管理を任せる場合、マンションタイプなら賃料の5%前後の管理手数料が必要になります。管理手数料の最低額も定められていますので、賃料が下がる賃料に対する比率がさらに高くなるケースもあります。年間賃料を物件価格で割ることで算出した表面利回りが5%程度であったとしても定期コストや修繕費などの不定期に発生するコストで、案外残らないものです。投資用のローンで購入するならなおさら一定の利回りがないとプラスにならないでしょう。

また、投資目的でマンションを購入する場合に、自宅として購入する場合との大きな違いは、賃料収入が不動産所得として税金がかかる点です。法人として購入する際には、収益に対して法人税がかかりますが、個人で購入した場合は経費を控除した額に対し所得税が課せられます。

税率は、給与所得などほかの所得と合算して決まってきますので累進課税のもと年収が高い方は、実効税率が高くなります。よって例えば、年収が2000万を超えるような方は、税引き後の収入が少なくなります。一方で、給与所得がなく収入が少ない年金生活の高齢者の方などは、賃貸収入に対する税率が抑えられます。その人の収入状況に応じて、実質所得が変わる点には留意ください。例えば、自宅として購入した場合は、家賃の節約にはなりますが効用に税金がかかることはありません。また将来売却する際にも、居住用財産の3,000万円の特別控除(要件や期限あり)などによって、譲渡益に対する税額が軽減されます。

実質的なリターンが限られる中、資産価格が維持できるのが極めて大切です。ただし、新築一棟マンションや新築アパートなども含め投資用不動産は、新築のときが最も値をつけやすい傾向があります。建物部分は、経年劣化するので好立地・高規格の物件でなければ価格が下がるのが一般的です。価格が下がりにくく、見合った収益が得られなければ投資として購入する意味はありません。

実需ニーズのあるマンションの方が下がりにくい
貸せる、売れるマンションが投資メリットあり

資産価値の維持しやすさを考えると、実需ニーズがあるマンションの方が下がりにくいと考えたほうが賢明です。では、実需ニーズにはどの程度の広さが必要かといえば、賃貸+15平米以上の広さが欲しいところです。賃貸住まいから脱出して購入に踏み切るには、今よりも良い環境であることが必要です。都心のワンルームは、かつての20平米程度から今は、おおよそ25平米程度に。40平米ぐらいの広さが一定の実需ニーズがある広さと言えるのではないでしょうか。

銀座

銀座


賃貸で貸し出す場合、広ければ良いというわけでもありません。専有面積が広いと退去の際にクロスなどの張り替え費用がその分かかります。また、家賃20万円の壁も意識したいところです。高額賃貸は、「スイッチのマーケット」といわれるようにボリュームが限られています。一定額を経費で落とせる経営者や自営業者、会社の補助が出る外資系企業などにメイン層が限られます。日本の大手企業も福利厚生として家賃補助が出るケースがありますが、家賃の上限があり、20万円ぐらいが目安です。

そういう意味では、比較的利便性の高いロケーションで、首都圏なら賃料15万円~18万円ぐらい取れるような物件が狙い目だと思います。例えば、中央区の人形町界隈や田町~品川界隈、台東区の上野駅周辺などは、比較的賃料水準が高く、かつての相場なら狙い目だったかも知れません。需給に左右される売買と異なり賃貸マーケットではストックの数は増えることはあれども減ることは考えにくいです。エリアの需要とともに、その中でも競争力があるかどうかも大切な要素になります。

エリアによって異なる需給バランス
将来のワークプレイスを考えて、立地を検討しよう

2020年にピークを迎えると予想されている東京の人口トレンドを考えると、駅徒歩5分圏など利便性の高さは重視したいポイントです。鉄道網の発達した首都圏都心エリアにおいて、駅から遠い物件の方が少ないので不便な立地は貸し出しにハンデとなります。

ただし、品川駅のように駅周辺部がオフィス街が連なるエリアは、徒歩10分圏でも優位性がある場合もあります。一方田町駅などは、大規模賃貸の優良物件が多く競争も激しいです。立地や商品のポジショニングは確認したいところです。また、立地を選ぶ際に注意したいのは、将来の需要想定です。首都圏では都心3区にオフィスゾーンが集中していてそこへのアクセスが賃貸需要を左右します。東京、品川、日本橋、渋谷、新橋といった将来有望なオフィスゾーンへのアクセスも重視したいポイントです。

品川のオフィス街

品川駅前のオフィス街


最後に、築40年の65平米のオーナーチェンジマンションを360万円で購入したAさんの話を紹介します(事例を参考にしたフィクションです)。

マンション投資を考えていたAさんは、賃料6万円で賃貸中の某団地の65平米3DK タイプの中古マンションを購入しました。年間賃料は、72万円ですから表面利回りは20%です。ところが、契約した後に入居者が退去することになりました。賃貸人は、20年も住んでいて引渡し前の専有部は傷みが激しくリフォームが必要でした。給湯器も交換が必要でリフォーム費用は、総額150万円超になりました。

いざ、賃貸に出すと募集賃料6万円では借り手がつきませんでした。理由は、購入したマンションがエレベーターなしの5階建ての5階だったからです。低層階と比べ不便な場所で、よくよく調べてみると実勢賃料は5万円前後でした。管理費・修繕費・固定資産税等の月あたりのコストが3万円かかるので賃貸時の収入は、実質2万円です。管理会社に管理手数料を5千円払うと、1万5千円しか残りません。では、売却したらどうかというと、5階建ての5階がネックでリフォーム後でも400万円前後です。売ってもマイナス、貸しても回収するのに相当期間かかります。Aさんは、投資の難しさを実感しました。

低金利の今、ちょっとした老後資金の確保にマンション購入が選択肢の一つであることは確かでしょう。投資の成功のためには、1に損をしないこと、2に損をしないこと、3に損をしないこと。資金も十分でないのに安易に手を出すのは禁物です。「商いをするには、まず損金を積むべし」といった格言があるように、自宅の購入以上の準備がマンション投資には必要だと思います。

今の低金利を考えると、不動産投資は魅力があります。投資信託や外国債券などと比較すると、現物資産だけにわかりやすい面もあります。留意していただきたいのが、投資という観点で不動産を選ぶ場合、良い物件を買うだけではだめで、上手く買うことが大切だということ。タイミングも重要でしょうし、投資における資金調達の面も重要です。徒然草(吉田兼好)に、さいころの達人の一節があります。さいころの達人は、「負けないように打つ」ことを心がけるとあります。融資が出るからと言って、無理な資金計画で購入すると空室になったとたんに、返済に窮してしまいます。

かといって、家賃保証のあるサブリース契約を一旦すると収益性が圧迫されるだけでなく、サブリース契約解除の際に違約金を取られるケースもあります。価格が抑えられた新築ワンルームマンションなどは、買いやすい反面リスクが大きいことも注意してください。投資の基本は、理解できないものは、手を出さないこと。よくよく勉強してから、スタートしましょう。

※掲載内容はあくまで参考情報であり、投資目的での不動産の購入を勧誘しているものではありません。最終的な判断は読者ご自身でお願いいたします。

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