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ダメマンションを掴まないために知っておきたい心理学

マンション選びは、自分の意思で合理的に判断しているように思っていても、案外他人の言動に左右されたりその場の雰囲気に流されているものです。しかし、多くの人が陥る「心理学的な罠」を知っておけば、客観的に正しい判断をできる可能性がぐっと高まります。

田中 和彦

執筆者:田中 和彦

住みやすい街選び(関西)ガイド

メンタリストDAIGOやアドラー心理学等々、心理学がちょっとしたブームです。と言うよりも「心理学ネタ」は常々たくさんの人の興味を引きつけていると言えるでしょう。不動産を売り買いする場面でも「心理学効果」が利用されていることがよくあります。不動産会社や営業マンがその効果を理解して行っているのかどうかはわかりませんけれども……。こちらでは主に新築マンション販売の現場でよく見られる心理学的効果を紹介します。

営業担当者

マンション販売の現場でも、心理学的効果はよく見られます。営業担当者が心理学効果を意識して、あえて行っているかどうかはわかりませんが……。


まずは営業を受ける前にやられちゃってるパターン。

「単純接触効果」~チラシやCMを見ているうちに興味が湧いた~

マンションに限りませんが、広告宣伝等を何度も見聞きしているうちに全く興味がなかったものでも欲しくなることがあります。チラシやDMを目にするたびに気になってきて、最後には「一度見てみたい!」となるのです。この現象を単純接触効果と呼びます。繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果です。

一度検討して購入に至らなかった物件が売れ残り物件となり、その後何度も広告を見ているうちにもう一度見学して購入、なんて話もあります。対象が人間ならば何度も会っているうちに情が移って友達になるなんてのもいいですが、マンションの場合はもう少し理性的に判断すべきでしょう。

「バンドワゴン効果」~流行のタワーマンションなら買っても安心?~

近所に建築予定のタワーマンション。自宅購入にそれほど前向きなわけではないけれど、「タワーマンションなら考えようかな~」「節税効果があって資産価値も高いみたいだし~」と過剰に期待をしてしまう。このように、ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなることをバンドワゴン効果と言います。

タワーマンション

タワーマンションが人気だからといって、自分自身のライフプランと合っているとは限りません


衣服や食品のように日ごろ消費するものであれば、とりあえず世間の支持が高いものを選ぶのもいいですが、新築マンションの場合はそうとも言えません。「人気が高い」ということで当該エリアに過剰供給されていて資産価値が保てないことも考えられますし、何よりも世間の評価が良くても自分自身のライフプランと合っているとは限りません。

さて、次はマンションギャラリーへ訪問したときの心理学的効果。ここでも様々なトラップが仕掛けられています。

「ハロー効果」~ムービーが格好良くて欲しくなった~

モデルルームに置いてある高価な家具や有償オプションの数々、または幸せそうなカップルが近所のおしゃれな店で楽しそうに食事をしていたり、可愛い子供と両親の3人で近くの公園で遊んだりしているムービー。モデルルームやムービーの要素にはマンションに関係ある部分もあれば「それマンションと関係ないじゃん!」という要素もあります。そんなことはわかってはいるのですがモデルルームやムービーが立派であったりすると、マンション自身が素晴らしいものに見えてしまうことがあります。

このように、ある対象を評価する時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことをハロー効果と言います。近所のお店や公園が素晴らしいなら、今見学しているマンションの近所の中古マンションを買っても同じです。きちんと切り分けるように意識しましょう。

そして次は、気に入ったマンションを購入する直前、最後のきっかけとなる心理学的効果。以下の2つが決め手だったという方、多いです。心当たりはありませんか?

「アンカリング効果」~価格改定で思わず買ってしまった~

提示された特定の数値や情報が印象に残り、基準点(アンカー)となって判断に影響を及ぼす心理傾向のことをアンカリング効果と言います。

高すぎて売れていなかった物件が価格改定で相場に近くなったのを見て、または上層階の広めの住戸を検討していたが、たまたま低層階で狭い住戸を見たときに「これは安い!」と感じることがあります。もともと欲しかったが金額的に手が届かなかった物件が価格改定した、低層階の狭い住戸が単価や条件も比較した結果割安だった、ということであれば問題ないですが、ただ単に価格が安いという点だけで決めるのはアンカリング効果の餌食と言えましょう。

「返報性の原理」~営業マンが親切にしてくれたから決めた~

新築マンションの資産価値や住まい心地は営業マンの出来不出来と関係のないことです。同じ買うならばいい営業マンから買うほうがいいですが、物件評価と担当営業マンの出来不出来とは切り離して考えなければいけません。当たり前の話なんですが、いろいろと質問事項に答えてもらったり、何度も家に足を運んでもらったりすると「ここまでしてもらったのに断るのは申し訳ないなぁ」などとおもってしまうのが人の常です。

他人から何らかの施しを受けたとき、お返しをしなければならないという感情を抱く心理のことを返報性の原理といいます。これからもずっと長いおつきあいになるよう商品/サービスであれば、担当営業マンの人となりも判断材料として大きな要素ですが、新築マンションの場合は、いくら素晴らしい営業マンの方とやりとりしていたとしても、物件のことだけ考えて判断すべきです。「物件は可もなく不可もなくだけど、営業の方が本当によくしてくれるからここにしよう」などというのは本末転倒です。

人は時として合理的な判断より心理的な要因で物事を決定します。今回紹介したような「心理学的効果」を知っているだけでもより合理的なマンション選びができると思います。ぜひご参考に!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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