冬物

セーター、手袋、マフラー、ストール……気づいたら穴だらけ……一体、なぜ?

ヒメマルカツオブシムシ」という虫の名前を聞いて、「知ってる知ってる!」という人は、既にこの虫による甚大な被害――ウールやシルクの衣類が食われて穴だらけ――に遭ってしまったことがあるか、よほど近しい人が困っているのを見聞きしたような場合なのではないでしょうか。

その名を知らずに済むなら、それに越したことはない。「ヒメマルカツオブシムシ」とはそんな害虫です。


ヒメマルカツオブシムシとは?

テントウ虫

※写真はテントウ虫です※

ヒメマルカツオブシムシ。漢字で書くと「姫丸鰹節虫」、こう見るとなんとなく可愛いっぽい字面ですが、この虫の及ぼす被害は甚大になりがちで、かつエグいものなので決して侮ってはいけません。

ヒメマルカツオブシムシは、節足動物門 昆虫網 コウチュウ翅目 カツオブシムシ科 マルカツオブシムシ属の昆虫。成虫は体長3ミリほどで、一見したところ「小さくて茶色いまだらのテントウ虫っぽい」外見をしています。

全世界に広く分布しており、衣類(特に羊毛、絹製品)の代表的な害虫として知られています。

また、同様に羊毛や絹によるじゅうたん、毛皮、羽毛、毛ブラシ、毛筆。またその名にもあるように鰹節、干し魚、蚕繭(蚕が作る繭)、生糸、皮革、小動物の標本(昆虫、剥製)など、広く乾燥物質を食い荒らし、家庭以外に貯蔵食品や製粉、飼料工場などでも多く見られる虫です。

この成虫はよく初夏、マーガレットなどの白い花に集って蜜を吸っているのが見られますが、私たち(の服)に害を及ぼすのはこの成虫そのものではなく、産卵され孵化したあとの幼虫です。


ヒメマルカツオブシムシの生態

マーガレット

マーガレットなどの中央部にたくさん集っている小さい虫、それがヒメマルカツオブシムシであることが多いのです

ヒメマルカツオブシムシは、幼虫の姿で加害物(衣類など)の中や近くに潜んで越冬。春から初夏にかけて蛹、成虫となって産卵、孵化し、幼虫のまま8~10ヶ月を過ごします。

基本的に1年1世代ですが、幼虫期間の栄養状態によっては幼虫のまま2年近く過ごすこともあります。

成虫の寿命は1ヶ月程度で、1匹のメスによる産卵数は80~90。加害物1カ所につき10粒程度ずつ産卵します。卵を守るためか、毛羽だってふっくらした暗い場所を好んで産卵することが確認されています。

孵化したヒメマルカツオブシムシの幼虫は、茶色っぽい太目の毛虫(体長4~5ミリ)といった外見で、こういった細長い虫に弱い人には、目にしただけでも心が折れかねない嫌な雰囲気があります。

孵化後、潜みつつ羊毛や羽毛、生糸(動物性繊維)のほかレーヨンやキュプラ(再生繊維)も食害されやすいのですが、綿や麻(植物性繊維)、ポリエステルやアクリル(合成繊維)は多くありません。幼虫に消化されにくいためと言われています。


ヒメマルカツオブシムシの発生を予防するには

シャツ

白いシャツにも御用心!

ヒメマルカツオブシムシの成虫は、たとえば関東地方であれば4~6月に屋外に出現して、白、淡い青や黄色、ピンク系の花(チューリップ、ノースボール、マーガレット、シャスターデイジー、ヒナギク、ミヤコワスレ、ハルジオン、コデマリなど)に多く飛来します。

また、干された洗濯物や布団、歩いている人のシャツやブラウス(いずれも白系)にも飛来し、これらの花や衣服にくっついたまま家の中に持ち込まれると考えられています。

ですので、こういった花を家の中に入れる際、また干した服や布団を取り込んだり、帰宅後など虫がついていないか確認すること。干した布団への掃除機がけ、洋服のブラッシングなどが、成虫の侵入予防としては効果的です。

とりわけ春先、庭やベランダで白い花をたくさん咲かせている(のに近い)家では少し注意した方が良いかもしれません。


ヒメマルカツオブシムシが発生してしまったら

ベッド

ベッド下の掃除もぬかりなく

とはいえ通常は成虫の屋内への侵入に気づかず、クローゼットなどの衣類に産卵されてしまい、孵化した幼虫に衣類を食害されて発生に気づいたという場合がほとんどだと思います。そんな時にはいったいどうしたら良いのでしょうか。

まず食害されたタンスやクローゼット周りのホコリを掃除機で念入りに除去し、生息中のヒメマルカツオブシムシを捕獲します。こういったホコリの繊維もヒメマルカツオブシムシの好物だからです。

寝室や子ども部屋などのベッド周りの掃除頻度が低く、いつもホコリが溜まっているような場合、このホコリ中にも幼虫が多く見られます。クローゼットに出てしまったような際には、家じゅうのホコリを注視し、できるだけ頻繁に掃除機がけを行うようにしましょう。

食害され、穴のあいた衣類は、可能であれば基本的に即、隔離して廃棄処分にしたいところです。そうはいっても廃棄できない場合には、隔離してクリーニングにかけてから(薬剤と高温で殺虫)、かけはぎなどの補修を行いましょう。


幼虫がある程度育つと駆除が困難、衣替えの季節は要注意

ある程度育ってしまったヒメマルカツオブシムシの幼虫は、殺虫剤に対して抵抗力があり、なかなか殺せません。また市販の燻煙殺虫剤や燻蒸殺虫剤も使いたくなるかと思いますが、一度使ったくらいでは期待するほどの効果は見込めないことが多いため、根絶しようとすると長丁場になる(複数回使用する)覚悟が要ります。

夏前、冬物の衣替えが進み、冬布団と夏布団の入れ替えなども行われがちな時季ですが、この際の洗濯が甘く汚れが残っている場合、カバーに汗などが染み込んだ季節外の布団などもヒメマルカツオブシムシに好まれ、害されやすいので注意が必要です。

ヒメマルカツオブシムシに食害されやすい衣類は、汚れをしっかり落とした後に、できるだけ密閉できる収納具に納め、防虫剤を的確に効かせることで防除しましょう。

ちなみにヒメマルカツオブシムシに酷似した名前の「ヒメカツオブシムシ」も、ほぼ同様の生態や加害をしめしますが、外見が黒または赤褐色で斑紋がないという特徴があります。「カツオブシムシ」もほぼ同様です。


【参考文献】
「生活害虫の事典」(佐藤仁彦/朝倉書店)
「家庭害虫よサヨナラ!」(イカリ消毒/保育社)


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