古川雄大 87年長野県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(07~09年)で注目され、10年にミュージカル『ファントム』に出演、12年に『エリザベート』に初出演、ルドルフ役を務める。以降、『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』『ミュージカル「黒執事」』シリーズ等舞台で存在感を示しつつ、映像や音楽でも活躍中。(C)Marino Matsushima
・2017年夏インタビュー(本頁)
・2016年5月インタビュー(2頁)
・『エリザベート』2016年帝国劇場・博多座公演観劇レポート(4頁)
やりたいことすべてに挑んだ『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』
――前回のインタビューから3年、その間様々な大役を務められましたが、まずは『エリザベート』に3度目のご出演。いかがでしたか?「自分の中ではもう最後のルドルフだろう、思いっきりやろうと思っていました。これを集大成にしなきゃいけない、と。毎回、100(パーセント)に近いものを出そうと思っていて、“攻める”というよりかは“安定”を心掛けていましたね」
――確かに古川さんのルドルフには安定感、力強さがあり、決して心が揺らいでいるわけではなく、こう生きたいという理想像がありながらそうは生きられない、そこに哀しさのあるルドルフ像に見えました。その次の『ロミオ&ジュリエット』ロミオも、連続しての出演でしたね。
「2度目の出演でしたが、前回公演ではとても悔しい思いをしたんです。製作発表でも(小池)先生がリベンジだねとおっしゃっていて、先生もそう思ってたんだと思いましたね(笑)。歌のテクニック的な部分で、求められてることに対して応えられないことが多かったのですが、2度目の時にはそれまで“これは出来ない”と諦めていた部分を含め、やりたいことに全部トライしました。
(wキャストの)大野君とはずいぶん違うロミオに見えましたか? 何が正解かは分からないけど、前回は(運命に)翻弄されていくイメージだったけど、今回はそれよりジュリエットへの気持ちであったり、熱さを意識しました」
――座長としての求心力が、前回公演とは比べ物にならないほど大きかったです。
「何度か座長をやらせていただく中で、年々意識が強くなったと思いますし、『ロミオ&ジュリエット』は特にそれを意識した作品でした。またチャンスがあればやってみたいとは思うけど、18歳の役なので年齢的に大丈夫かな。稽古では小池先生から“もっと若く”“変に貫禄が出てるぞ、お前は”と、褒められてるのかけなされるのかわからない感じで言われていましたから(笑)」
さらに“いい役”に仕上げたい『レディ・ベス』フェリペ役
『レディ・ベス』2017年 写真提供:東宝演劇部
「美味しい役だなと思ってます(笑)。一幕の最後の方で出てきて、場をめちゃくちゃにして去って、2幕はぽつぽつ出て最後はヒーローになって終わるという。実はそんなに出番は多くないし、歌も自分だけのソロは一曲だけです。それでも印象が強いのは役がいいからにほかならなくて、誰がやってもよく見えると思うけど、それをよけい“美味しく”見せるのは役者次第だと思うので、さらにいい役にできたらいいですね。
出番が短い中で鮮烈なものを残すのはたやすくないので、集中力や舞台への意識をさらに高めないと。そういう意味ではずっと舞台に立ってる主役より周りの人の役のほうが大変なのだと感じます」
――フェリペは結果的にべスを応援するサイドに立ちますが、それは意図的なものだったのでしょうか?
『レディ・ベス』2017年 写真提供:東宝演劇部
フェリペがべスのサイドに立つのは、単純に女性として彼女が魅力的というのもあるだろうけど、彼女に対しての共感というより、彼女の敵に対するいらだちがあったからで、結果としてそうなっていったのではないでしょうか。再演にあたっては、自分の得意分野にいかないように作ってみようかなと思います。もっと攻めていきたいですね」
――ちょっと素朴な疑問ですが、フェリペ(平方元基さんとのダブルキャスト)しかりロミオしかり、古川さんはダブルキャストで出演されることが少なくないですよね。ダブルキャストではもう一人の稽古の時には見ないでいいですよという演出家もいらっしゃいますが、古川さんは御覧になるタイプですか?
「影響を受けたくないので、やっぱり状況が許せば観ないでいきたいんですが、そうなると自動的に稽古が二分の一になってしまうんですよね。一人が立って稽古したら、もう一人は見て覚えなくちゃいけないので、僕は観るようにしています。小池先生も、“全く同じことをしても、人間が違うからちゃんと違って見える。大丈夫だよ”と言ってくださっています」
――その後がミュージカル「黒執事」の最新版。そして2018年には『モーツァルト!』のタイトルロールにも挑まれます。これは以前からお声がけがあったのですか?
『モーツァルト!』
それでも、どこかで憧れていたのでしょうね。この作品の熱狂的なファンというわけではないけど、魅力的な役で、すごく挑戦してみたくなったんです。これまでもどちらかというと苦しかったり、のたうちまわる役が多かったので、今回も激しくのたうちまわるんだろうと思いますね(笑)。既に台本はいただいているので、少しずつレッスンをしています」
――現時点で、どんな表現者を目指していらっしゃいますか?
「何でも自信をもってやれるようになりたいですね。役者という枠にとどまらず、どしっと構えて、なんでもできる人間でありたいです。なんでもできないとダメだなと思い始めたところで、日常的にもいろいろな経験を積んでいきたいし、稽古でも自分を縛らず、あれもこれも試しながら成長していきたいと思っています」
*公演情報*『レディ・べス』2017年10月8日~11月18日=帝国劇場
*ミュージカル「黒執事」に関する古川さんへのインタビューはこちら。
*次頁では2016年5月に行った古川さんへのインタビューを掲載しています!*