地震では多くのものを失うからこそ、公的支援の上手な利用を
熊本地震で被災された皆様、そしてご遺族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
今回の地震では、特に2度にわたり震度7の激震に襲われた益城町などで、より深刻な被害が発生しています。このような地震は気象庁の観測データにも過去に例がなく、1度目の震度7では持ちこたえた住宅が、2度目の本震で倒壊するといった被害も発生しています。
被害を受けた家屋は3万5千棟以上、うち全壊家屋約2,700棟で、半壊家屋が約4,200棟にも上っています。しかしながら、5月11日現在、被害分類が未確定の家屋がまだ40,000棟近くもあることから被害家屋はさらに増える見込みです。
地震で失うのは住まいだけではありません。これまで築いた財産や家財はもちろん、家族や仕事、コミュニティなど、私たちを支えているいくつもの柱を、一気に失ってしまうことすらあるのです。ですから、新たな暮らしを立てていくとき、被災後の生活を支える各種の公的支援策を上手に利用していくことが欠かせません。
「被災者支援に関する各種制度の概要」で公的支援制度が一覧できる
被災者支援に関する各種制度の概要(内閣府)
被災後に受けられる公的支援は、いろいろあります。経済や生活面に関するもの、住まいに関するもの、家族の死亡、子どもの養育や就学に関するものなど、多岐にわたります。とはいえ、さまざまな制度を1つ1つ探していくのは大変です。また、被災後に流れる情報には、正しいものもある一方で、そうでないものが多くみられることもあります。
そこで、これらの支援制度が一覧となっている、内閣府発行の「被災者支援に関する各種制度の概要」(PDFが開きます)を確認してみることをお勧めします。制度の内容や対象者に加え、問い合わせ先まで記載がありますので、該当した場合にはもれなく確実に問い合わせができるでしょう。
また、今回の地震のみに対応した制度や、自治体等が独自に行っている制度については、まずは各自治体等に問い合わせてみるといいでしょう。
また、今回の地震のみに対応した制度や、自治体等が独自に行っている制度については、まずは各自治体等に問い合わせてみるといいでしょう。
公的支援を受けるには「り災証明書」の申請を
公的支援を受ける際に必要になってくるのが、「り災証明書」です。住宅の被害程度を市町村が証明するもので、被災者生活再建支援金や義援金の受け取り、仮設住宅への入居などの手続きに必要になります。民間の保険金請求時にも求められるケースがあります。
り災証明書は、調査員が被災住宅を直接確認し、住宅の損傷の状況を調査したのちに発行されます。調査員は国の基準に基づいて、住宅の屋根、壁等の経済的な被害がどの程度かを判定、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「半壊に至らない」の4つに分けます。被災住宅がこれらのどれに認定されるかで、受けられる公的支援の内容は変わってきます。
たとえば今回、熊本県全域に被災者生活再建法が適用されています。この法律に基づき、り災証明書で全壊および大規模半壊とされた住宅は、持家か賃貸かを問わず、被災者生活再建支援金が受け取れます。全壊100万円、大規模半壊50万円で、さらにその後、住宅を再建・補修・賃借した場合には、最大200万円が加算されます(単身世帯はこれらの4分の3の額)。ただし、半壊以下は対象外です。
また、応急仮設住宅およびみなし仮設住宅(民間賃貸住宅借り上げ制度)を利用できるのは、自宅が全壊または大規模半壊と認定され、自らの資力では住宅を得られない世帯です。
また、応急仮設住宅およびみなし仮設住宅(民間賃貸住宅借り上げ制度)を利用できるのは、自宅が全壊または大規模半壊と認定され、自らの資力では住宅を得られない世帯です。
義援金の配分も、り災証明書により金額が変わってきます。5月2日、義援金の第一次配分が決定されましたが、熊本県全域を対象に、死亡・行方不明者には1人あたり20万円、重傷者は1人あたり2万円が配分されることになりました。一方、住家が全壊した世帯には20万円、半壊した世帯には10万円が配分されることになっています(平成28年熊本地震義援金の第1次配分について 熊本県)。
なお、熊本県内では1万2千件を超える建物が「危険」と判定され、ステッカーが貼られました。これは、余震などでの二次災害防止のため自治体が行う「応急危険度判定」というもので、り災証明書とは無関係です。公的支援を受けるにあたっては、まず市町村に自ら申請、り災証明書の発行を受けることが必要です。
地震保険金を請求するには? 保険証券を無くし、地震保険の契約先がわからない……。そんなときの対策は次のページで。
地震保険金を請求するには? 保険証券を無くし、地震保険の契約先がわからない……。そんなときの対策は次のページで。