本格フランスパンの名店から独立開業
大きなウィンドウが目印
東急田園都市線藤が丘の駅から歩いて数分、緑ゆたかな「もえぎ野公園」の向かいに、2016年4月19日、小さなパン屋さんがオープンしました。BAKERY ABE(ベーカリーアベ)。「ビゴの店」鷺沼店のシェフブーランジェを務めていた阿部将史さんが独立して開いたお店です。
BAKERY ABE(ベーカリー アベ)
フィリップ・ビゴさんの教えは、「毎日食卓に並ぶパンを、いっぱいつくりなさい。バゲットや食パンを一日に3回、4回と焼いてこそ、パン屋だ」というものだったそうで、阿部さんは、バゲットやバタール、ロデヴやルヴァンなど、ハード系の本格フランスパンをしっかり焼いて、お客さんの様子を見ながらそのサイズを大きくしていく予定なのだとか。なぜなら大きいほうがおいしいから。
阿部将史さん、加奈子さん
「いままで学んできたすべてをここで表現して、それから自分の色が出せればいいと思っています」と阿部さんは言います。
ニッポンの菓子パンにヨーロッパの要素を
みるくぱん
ビゴの店ではフレンチスタイルのパンを焼かれていたと思いますが、ここにはメロンパンやあんパン、チョココロネなど、ニッポンならではの菓子パンもありますね?
「そうです。これは見た目は普通によくある菓子パンですが、ひとつひとつにBAKERY ABEの物語があるんですよ」
それはどんな物語でしょう?
有機砂糖、有機小豆の餡入りあんぱんとレモンで香り付けしたメロンパン
「菓子パンはブリオッシュに近いけれど卵は入っていない生地でつくっています。コロネにはベルギーのベルコラーデのタブレットを使ったチョコクリームを絞っています。ニッポンの菓子パンだけれど、そういうヨーロッパの要素も入れているんです。これも、今までやってきたものを表現したいと思ったうちのひとつです」
メロンパンはビスケット生地がサクサクしていて、ほのかで、さわやかな香りがアクセントになっています。
「上のところはパータシュクレに近いビスケット生地です。さっぱりさせるためにレモンの皮をすりおろして入れています。あとからスッと香るように」
自家製酵母のルヴァンとロデヴ
パン・ド・ロデヴ
新しい厨房にはなかなか酵母菌が浮遊していないといわれますが、ようやく自家製酵母ができあがったので完成したというパン・ド・ロデヴ(350円)は、店頭に立つ、加奈子さんのイチオシです。水分量が多く、大きめの艶やかな気泡ともっちりとした食感が人気のパンです。
パン・オ・ルヴァン
こんがりとした焼き色とクープが美しいパン・オ・ルヴァン(350円)は、麦の味わいが濃厚で、ワインやチーズに合わせたくなります。一方でこのパンはバターとジャムでタルティーヌにしても、ハムを挟んでサンドイッチにしてもよさそう。朝から晩までオールマイティに使えるパンでもあります。
厚切りトーストがおすすめのパン・ド・ミ アングレ
パン・ド・ミ・アングレ
ルヴァンに負けずそのフォルムがこんがりとして魅惑的なのがパン・ド・ミ アングレ(1斤300円)。すなわちイギリスパンです。阿部さんおすすめの食べ方は厚切りトースト。
トーストしてみると、皮(ミミのところ)はサクサクと軽く、生地は表面だけ色づいて香ばしく、厚みと小麦感のある歯ごたえを感じるのに、しゅっと溶けてしまうような軽やかさ。気づかない程度の全粒粉「シュタインマーレン」がこの香ばしさに一役かっているようです。
受け継がれるパン職人スピリット
窓に切り取られた公園の景色も楽しめる
阿部さんが一番好きなパンの食べかたは?と尋ねると「仕事が終わって、パンにバターをつけてかぶりつく。最高です!」という答えが返ってきました。
仕事中は感覚が鈍るので食事は摂らない、と言う阿部さん。「音とか匂いとか、五感が研ぎ澄まされて集中できるので」。夕方に、きょうは上手くいったとか、いまいちだったとか、確かめながら食べる時間を大切にしています。
BAKERY ABEの厨房にドウコン(冷凍、解凍、発酵の温度調整ができる機器)はありません。「古いやり方かもしれないんですけれど」と言いながら、彼は常にパンの様子を見守っている。職人みずからの感覚で調整している。そして常に動いている。生地をさわったり見たりしていないときは布巾でそこら辺を磨いている。それをしながら話している。ハードな仕事であるはずですが、なんだかとっても楽しそう。
阿部将史さん
「とにかくつくり続けることなんです。どんなことがあっても、焼き続ける。それが大事だと思っています。パン屋は、震災があっても、たとえ親が死んでもそのことを噛みしめながらでも、パンを焼くんです。20年、30年と焼いているひとほど、どんな状況でもそうやってお客さんのために、つくり続けている。そういうのを見て学んできました。結局、すきなんですよ、つくるのが」
クロック・ムッシュ
今後は、日本人がよく食べている身近な食材、たとえば出身地、九州は大分の麦味噌をつかったパンなども少しずつ、提供していきたい、という阿部さん。
シナモンリンゴ入り ショソン・オ・ポム
BAKERY ABEの誕生で、この町の人たちの日々のパンの選択肢がいい感じに広がっていきそうです。窓の外にはもえぎ野公園。焼きたてのパンを買って、ピクニックも楽しい季節です。
BAKERY ABE
■BAKERY ABE(ベーカリー アベ)
住所:横浜市青葉区柿の木台3-20
電話:0455-32-8326
営業時間:9時~19時 月曜定休
田園都市線藤が丘駅徒歩6分
Yahoo!地図情報