*2016年4月掲載 海宝直人インタビュー*
海宝直人undefined88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、15年『レ・ミゼラブル』マリウス、『アラジン』アラジン役を獲得。ロックバンド「シアノタイプ」でライブ活動も展開している。(C)Marino Matsushima

海宝直人 88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、15年『レ・ミゼラブル』マリウス、『アラジン』アラジン役を獲得。ロックバンド「シアノタイプ」でライブ活動も展開している。(C)Marino Matsushima

ここ数年、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『RENT』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』等の話題作で、アンサンブルやセカンド・プリンシパルながらきらりと光る演技を見せていた海宝直人さん。芯のぶれない、確かな歌唱力と存在感に「あの人は誰?」と注目していた方も多いことでしょう。そんなミュージカル・ファンの思いに応えるかのように昨年、遂に『レ・ミゼラブル』で大役マリウスに抜擢。『アラジン』でもタイトルロールを演じ、今後も『ライオンキング』『ジャージー・ボーイズ』が続きます。一気にヤング・スターの仲間入りを果たした海宝さん、どんな方なのでしょう? その現在・過去・未来をとくとうかがいます!

ヤングシンバから青年シンバへ、『ライオンキング』への感慨

――海宝さんは今、『ライオンキング』のシンバ役を稽古されているのですよね。ディズニー・アニメを前衛芸術と伝統芸能の手法を使って舞台化した名作ですが、その日本版の開幕当初、海宝さんはシンバの子供時代の“ヤングシンバ”を演じていました。

「はい、『ライオンキング』は小さい頃、ヤングシンバとして出演した思い入れのある作品です。今回のシンバオーディションでは、絶対生半可にやりたくない、と思いましたし、子役の時から存じ上げている方々が(審査員として)ずらりと並んでいましたので、ものすごく緊張しました。『終わりなき夜』を歌い、台詞を聞いていただいて、シンバ役の候補に合格しました」

――ヤングシンバの心境を経験されている海宝さんとしては、大人シンバも演じることで両者の心境が“つながった”という感覚があるでしょうか?

「そうですね、ヤングシンバとしての経験は大きいですね。自分の中で(大人シンバを演じる上で)すごくヒントになります」

――本作はシンバの成長物語であるわけですが、その成長は“一足飛び”ではないですよね。「終わりなき夜」を歌う過程でシンバは人生の迷いから醒め、“問題が解決した”ように聞こえるものの、その後ナラと再会し、帰還を促されるうち再び殻に閉じこもります。「終わりなき夜」での問題解決はどうしてしまったのかな、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、海宝さんはどう解釈されていますか?

「『終わりなき夜』は、過去は変えられない、でも自分の中で一つ(何かを)変えていくんだ、という“最初のきっかけ”なのかな、と思っています。その時点では前向きになっているのだけど、幼馴染のナラに会って“帰ってきて”と言われると、(父・ムファサの死の責任が自分にあるという)本当のことはとても言えない、帰りたくても帰れないんだという、問題の大きさに直面するんです。そのジレンマを抱えながら、次にラフィキと出会って“(変わるのは)たやすいことではない”と揺れ動く。そういうものが一連の流れの中にあって、最終的に「王となる」を歌う。そこでやっと“帰って王になるんだ”という確固たる思いが生まれるのだと思います」

――なるほど、トラウマが大きかっただけに、シンバは少しずつ、段階的に考えを変え、成長してゆくということなのですね。今は稽古の最終段階かと思いますが、どういった点を詰めていらっしゃるのでしょう?

「ジュリー(・テイモア)さんの演出はアジアの伝統芸能に影響を受け、様式性を求めるものですので、まずはそれをきちんと身に着けるというのが一つ。『アラジン』だったらナチュラルに(等身大の人間として)いられるのですが、『ライオンキング』では様式的な部分がすごく大事にされるので、そこに入ってくのが大変ですね。体の重心一つにしても、『ライオンキング』にふさわしいものが求められます。そのいっぽうで、そうやって様式を体に入れつつも、(台詞の)意識がどこで折れて(変化して)ゆくかといったことも丁寧に勉強しています。

僕のシンバをどう演じるか、については今はまだ模索中ですが、思春期の揺れ動くところは大事に描きたいなと思っています。『終わりなき夜』もただ歌い上げるのではなく、丁寧に。動きについても一つ一つ、意味をつきつめて稽古させていただいているので、それらを大事にすることで、シンバという役が見えてくれるのかなと思ってます」

(海宝さんがシンバを演じた『ライオンキング』観劇レポートはこちらに掲載)

伝説のポップス・グループの物語を巧みな構成で描く
『ジャージー・ボーイズ』にボブ役で出演

『ジャージー・ボーイズ』

『ジャージー・ボーイズ』

――その後に控えているのが『ジャージー・ボーイズ』。実在のポップス・グループ、フォー・シーズンズの栄光と悲哀を、バンド名にちなんで4つの場面に分け、メンバーがそれぞれの場面をナレーションしながら展開させてゆくという心憎い構成で、トニー賞作品賞(06年)を受賞した傑作です。フォー・シーズンズを全く知らない方が観ても楽しめる作りですが、基本はあくまでポップス・グループのサクセスストーリー。何はともあれ、4人のハーモニーが“肝”になりそうですね。

「先日、PVの撮影がありましたので、歌練習は既に何度かやっています。“合わせる”ことももちろん大事ですが、ブロードウェイ版でも4人それぞれの個性が立ったうえでのハーモニーになっていたので、そこをどう出して行くかがポイントかな、と思っています。

今回は中川晃教さん演じるフランキー以外の役はwキャストで、僕は中川さんのほか福井晶一さん、中河内雅貴さんとご一緒のホワイト・チーム。すごく個性的なメンバーなので、この4人が一つになった時に(舞台上で)どんな感覚になるんだろう、ととても楽しみですね。年長格のニックを演じる福井さんがすごく穏やかで素敵な方で、僕らを引っ張ってくれるので、(両チームに出演する)アッキーさん(中川さん)は“ホワイト・チームは爽やかだね”とおっしゃっています。協調性もばっちりのチームになるのではないかな」
『ジャージー・ボーイズ』2組集合!undefined写真提供:東宝演劇宣伝部

『ジャージー・ボーイズ』2組集合! 写真提供:東宝演劇宣伝部

――海宝さんが演じるのは、作曲の腕を見込まれ、最後にフォー・シーズンズに参入するボブ役。海宝さん自身、バンドで曲作りもされていることでキャスティングされたのでしょうか。

「どうでしょうか(笑)。バンド活動をやっているというのは、もしかしたら(キャスティングに)影響しているのかもしれないですね。舞台上ではピアノもちょっとは弾くのかな?

映画版の印象で言えば、ボブは自分の(作曲の)才能をしっかり自覚していて、フランキーをソロ活動へと誘う役。音楽家としての在り方を掴んでいかなくちゃいけない、と思います。ただ、演出の藤田俊太郎さんは“映画版もブロードウェイ版も観なくていいですよ、今回は全然違うものにするから”とおっしゃっているんです。日本版ならではの決定版にするから、と。ですので、僕としては稽古を楽しみにしつつ、全てを(藤田さんに)委ねようと思っていますね」

*次頁からは海宝さんの「これまで」をうかがいます。可愛すぎる(!)幼児期のお写真も登場しますよ!