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巨大3Dプリンターが家をつくる…その真の目的とは

とうとう家を造ってしまう3Dプリンターが登場した。それもただ単に家を造るだけではない。「地球を救う」ための3Dプリンティングなのだ。さて、その内容とは?【石川 尚の気になるデザイン】シリーズ

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

凄まじいスピードで進化する3Dプリンティングの世界


Big Delta (ビッグデルタ)の画像

Big Delta (ビッグデルタ)  引用:WASP社HP


「3Dプリンターで家を造る」ことが出来るようになるのは、時間の問題。
そして本来は、日本が開発しなければ……との思いでいっぱいだった3Dプリンティングの世界。

医療、教育、もちろんプロダクトデザインも含め様々なジャンルで普及している3Dプリンターが、今凄まじいスピードで進化している。


以前、「【Watch Now】3Dプリンターとデザインの今」で、欧米での教育、デザインの3Dプリンター普及について、ご紹介した。

【Watch Now】3Dプリンターとデザインの今の画像

【Watch Now】3Dプリンターとデザインの今


文中、「そして、日本は、大丈夫か?……と、いたたまれなくなる程、3Dプリンティングマーケットの広がりと早さを痛感する。」と述べたが、まさに、その現実を知るNewsが舞い込んできた。

家をつくる高さ12mの3Dプリンター:ビッグデルタ(WASP)


まさに、夢の現実。
模型ではない、実物の家をつくる3Dプリンターが登場した。

デザインしたのは、イタリアの3Dプリンターメーカー:WASP社。WASP社は比較的大きなモノを3Dプリンティングする技術にたけたプリンター開発販売メーカー。

同社が2015年9月に発表した「Big Delta (ビッグデルタ)」は、世界最大級の3Dプリンター。

なんと高さ12mのプリンターと聞いて、驚く。

Big Delta (ビッグデルタ)undefinedundefined引用:WASP社HP

高さ12mのBig Delta (ビッグデルタ)  (引用:WASP社HP)


ちなみに、階高でいうと4階建ビルほど(通常ビル1階の高さを3mとして)だから、そのデカさが尋常ではないことがわかるだろう。

支柱フレームと伸縮式のアームで支えられたコンクリートバケット(コンクリートを運搬するための桶状の容器のこと)のような造作ヘッドが取り付けられ、通常の3Dプリンターをそのままスケールアウトした造りとなっている。

Big Delta (ビッグデルタ)undefinedundefined引用:WASP社HP

Big Delta (ビッグデルタ)の造作ヘッド部分  (引用:WASP社HP)


大きな造作ヘッドからコンクリートのような素材を積み重ねながら建物の壁を造っていくのだから、全く通常の3Dプリンターと同じ構造。

Big Delta (ビッグデルタ)undefinedundefined引用:WASP社HP

Big Delta (ビッグデルタ) 造作ヘッドにセメントを入れる様子  (引用:WASP社HP)


実際に建物を造った実績はないが、間違いなく建造できることは3Dプリンターの進化を見ればわかる。

それにしても、ヤってくれる!デザイン大国イタリア。
「3Dプリンターで家をつくっちゃえ!」のノリだから楽しい……いやいや、楽しんでやってるだけではない。

さらに驚かされるのは、開発研究の目標。
「3Dプリンターで、ただ単に家をつくる」では、ないのだ。


目標は、0km House (ゼロキロメートルハウス)

家を造るには、何かしらの建材が必要。

その建材は、運搬して建築現場に運ぶ。
道を切り開き、道路を造り、車を使い、船を使い……等々しながら建材を運搬する。
車を使うということは、CO2(二酸化炭素)排出など地球環境に関わる。要するに、運搬=「物流」が、環境汚染や地球温暖化、エネルギー問題など環境問題の元凶の一つなのだ。

ならば、その土地や場所で入手出来る素材で家をつくれないか?
可能であれば、環境負荷が軽減される……その場で、その場の素材で、つくる家。
すなわち、「0km House (ゼロキロメートルハウス)」。

実は、0km House の例は、世界中にある。
その土地・場所で入手出来る素材……例えば、土、粘土とわらなど天然建材よる建物や家。
モロッコ/ユネスコの世界遺産に登録されているアイット・ベン・ハドゥ の集落の画像(引用:Wikipedia)

モロッコ/ユネスコの世界遺産に登録されているアイット・ベン・ハドゥ の集落 (引用:Wikipedia)

アメリカ/ニューメキシコ州undefinedサンタフェの建物の画像

アメリカ/ニューメキシコ州 サンタフェの建物

古くから地球の各地で粘土の構築物は非常に耐久性に富み、地球上に現存している最古の建築物によく使われている。もちろん、現在でも暮らし環境としてあることに、先人のなせる業、継承の業に脱帽する。

地球を救う、究極の家づくり

WASP社は、泥や粘土を素材として3Dプリンティングでつくる家を研究している。
また、セメントによる3Dプリンティング構造物の耐久性や強度などリアルな検証も同時に進めている。
建設現地の地質調査や土、粘土を使った実験の様子の画像undefinedundefined(引用:WASP社HP)

建設現地の地質調査や土、粘土を使った実験の様子  (引用:WASP社HP):WASP社HP


Big Delta (ビッグデルタ)undefinedundefined引用:WASP社HP

Big Delta (ビッグデルタ)  引用:WASP社HP


同社のこのような取り組みは、地球環境に合わせながら持続可能とするサスティナブルデザインにつながる。
(注*サスティナブル(Sustainable)とは、「持続可能な」という意味。「サスティナブル・デザイン」とは、自然や人への負荷を極力抑え、地球環境をできるだけ維持し続けることを考えたデザイン*)

そして、3Dプリンティングという量産システムは、コストダウンにつながり、誰もが買える家づくりにつながる。

WASP社は、「自給自足の街づくり」を目標に掲げているという……まさに、地球を救う究極の家づくり、モノづくりの3Dプリンターなのだ。

Big Delta (ビッグデルタ)による将来の家の画像undefinedundefined(引用:WASP社HP)

Big Delta (ビッグデルタ)による将来の家  (引用:WASP社HP)



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■今回の関連リンク

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3Dプリンターメーカー:WASP社
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