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ハースストーンに学ぶ納得できるガチャ

モバイル端末向けゲームにおける、ガチャによる課金誘導の手法が社会的な問題になりつつあります。ガチャとゲームはどのように付き合えばいいのでしょうか? 米国のゲームメーカーBlizzard Entertainmentが手掛ける「ハースストーン」は、ユーザーが納得できるとても良い仕組みをいくつも備えていて、大変に参考になります。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

ハースストーンのガチャの仕組みに学ぶ

グランブルーファンタジーの図

グランブルーファンタジーは返金騒動に応じて、ガチャ関連について様々な対応策を打ち出しています。

日本のモバイル端末向けゲームアプリ業界は、ガチャのあり方について選択を迫られています。外部からの規制なのか、あるいは業界の自主規制を強化するのか、どのような形で折り合いをつけるべきなのか考える必要があります。

ユーザーからの返金問題で騒動となったサイゲームスが運営するモバイル端末向けゲーム「グランブルーファンタジー」は、ガチャによる個別の出現確率を表示しました。これまで、希少度ごとの出現率のみの表示で、最高ランクのSSRは通常3%としていましたが、SSRの中にもたくさんの種類がある為、これが欲しいという1つを狙う場合どのくらいの確率になるのかが分からなかったことに対応したものです。

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2015年3月11日に開示された個別の確率表記には、最も低いもので0.007%という数字があり、あまりの低い確率に驚いたユーザーも多くいたようです。まさしく万にひとつというレベルですね。そもそも、SSRが3%の確率で出ると言っても、そのSSR自体が次々に増えていけば個別の確率はどんどん低くなるわけですから、当然と言えば当然です。

しかしこれほどの低確率の設定に対し、例えば確率2倍というようなイベントをしたとして、今なら確率があがっているからきっと手に入るだろう、と思わせる誘導はどうなのか、というところに1つの問題があります。確率が2倍になっても、依然として手には入りそうもないわけですから。そういう意味では、個別の確率を表示するだけでも、ユーザーに高い確率だと勘違いさせて課金を誘導する、ということはかなり減るかもしれません。

こういったことに対する取り組み、あるいは規制の動きというのは、これから議論が深まっていくものと思います。しかしその場合当然のことながら、確率を表記するとか、課金の上限を設定する、といった画一的な施策が考えられることになります。多くのゲームに対応させようとするルール作りを考えた場合は、それぞれのゲームの事情を考慮しなくてすむような形にどうしてもなります。

一方で、ゲームユーザーからすると、望まれるのは必ずしもそういうことではないでしょう。納得してお金が払えて、そしてお金を払った分だけ面白い、楽しめる、というところが1番大事なことのはずです。しかしどういった形で運営すれば、ユーザーの納得感は高まるのかというのは、とても難しい問題です。

というわけで今回は、とてもうまくいっている例として、米国のゲームメーカーBlizzard Entertainmentが手掛けるデッキを構築して戦う対戦型モバイル端末向けカードゲーム「ハースストーン」のガチャについて、ご紹介してみたいと思います。ハースストーンにはガチャの確率表記はありませんが、それでも、ユーザーとメーカーとの信頼関係はかなり強く築けていると感じます。

ハースストーンってどんなゲーム? という方は、以前紹介記事も書いておりますので、こちらをご覧ください。

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ハースストーンのガチャの種類

ハースストーンの図

様々なカードを組み合わせて戦うハースストーン。そのカードを手に入れる手段の1つが、パックです

ハースストーンでは、ガチャの確率は明示されていません。ですから、これからお話する内容には、公式の発表でない、世界中のユーザーによる検証と推測が含まれることをあらかじめご承知ください。

ハースストーンのガチャは、パックと呼びます。カードゲームですので、ランダムにカードが入ったパックを購入する、という形です。カードの希少度は、ゲームを進めていけば必ず手に入る「フリー」の他に、手に入りやすい順に「コモン」「レア」「エピック」「レジェンド」の4種類があります。1つのパックに5枚入っていて、レア以上の希少度のカードが必ず1枚以上入っています。

パックの種類に、確率によるものはありません。つまり、希少なカードが出にくい無料ガチャと、レアなカードが出やすい有料ガチャ、みたいな区別はありません。期間限定でその時だけ手に入るカードが貰らえるガチャ、というのもありません。課金をしてパックを買うなら2パック、つまり10枚で、320円から。ゲーム内通貨を使うなら1パック100ゴールドですが、これは毎日プレイすれば2日ぐらいでたまる額です。課金をしてもゲーム内通貨を使っても、同じパックを手に入れることができます。

じゃあハースストーンのパックは1種類なのかというとそうではないんですね。2016年3月現在で、3種類のパックがあります。それぞれは手に入るカードがまるごと違うんですね。トレーディングカードゲームの世界ではおなじみの手法ですが、パックのシリーズごとにテーマを持ってカードがまとめられています。例えば「クラシック」のパックからは、シンプルで使いやすい初心者向けのカード群が、「ゴブリンvsノーム」にはゴブリンやノーム達が発明した奇妙なメカのカードが大量に入っていて、メカ同士で効果が高まるようなデッキを作りやすいパックになっています。

多彩なカードを戦略によって数十枚組み合わせて使うことが前提のトレーディングカードだと、こういった形のパック販売は極めて普通のことなので、あまり話題にされませんが、冒頭紹介したような、希少度ごとの確率を、さらに今まで登場した同じ希少度のカード全ての枚数で割ると天文学的数字に到達してしまう、という状況を結果的にある程度抑止することにもなります。

また、ハースストーンでは希少なカードが全くでなくて困るということが無いような仕組み、さらにはこの1枚が出ないということにも対応する仕組みが用意されています。
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