ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.19 岡村美南(3ページ目)

1974年の劇団四季版初演から42年、このたび新演出となった『ウェストサイド物語』に、アニタ役で出演する 岡村美南さん。生き生きとした演技で輝きを放つ彼女ですが、今回の新版はこれまでにない経験だったのだそう。演出のポイントとは? 米国で修業を積んだ“チャレンジャー”の半生ともども、大いに語っていただきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


「世界」を知り、「自分のアピールポイント」
にも気づかされたアメリカ留学

『クレイジー・フォー・ユー』撮影:荒井健

『クレイジー・フォー・ユー』撮影:荒井健

――岡村さんは富山のご出身なのですよね。どんな少女だったのですか?

「元気いっぱいで、いつもふざけたり、笑ったりしていました。ダンスは3歳からやっていましたが、すごく体が硬くて、踊りだけでは将来食べていけないかも…と思っていた中学生の頃、舞台好きの母に連れられて『夢から醒めた夢』を観に行ったんです。母はそれまでもバレエやダンス、コンサートといろいろなものに連れていってくれて、とても感謝しています。そこでミュージカルというものに出会い、もともと歌は好きでしたので、歌も踊りも両方やれる世界があるんだな、と目指すようになりました。ダンスと並行して、中学3年で声楽を習い始めました。

――高校を卒業後、アメリカの大学に進学されたのですよね。

「高校では音楽コースに在籍していました。音大に進んだらまたこういう環境で4年間学ぶのだな、と思った時に、違う経験をしてみたくなったんです。ミュージカルの本場ブロードウェイのある国ということもあって、アメリカを選びました」

――いきなり、英語の世界ですよね。

「大変でした(笑)。知っている人が誰もいない国に、全然英語も喋れないのに飛び込んでいって4年間過ごすなんて、今振り返るとよく出来たな~と思いますね。アメリカでは大学を編入する人が多くいて、私もまずは一つの大学で一般教養の単位をしっかりとり、それを移行する形でミュージカル学科の強い大学に編入しました。ミュージカル学科といっても最初のうちはクラシックなど基礎をみっちり学び、3年目くらいから自分の求める声を作ってゆくという進め方でした」

――アメリカでのレッスンはどういう感じだったのですか

「とにかく褒める、褒める(笑)。週1回のレッスンだったので、パーティー三昧の生徒もいれば、一生懸命練習する人もて、“練習なんてしなくてもできるよ”といっていて本当にできる人もました。個人主義が貫かれていましたね。私はというとしっかりやらないと気が済まなくて、やはり私は日本人だなあと思いました(笑)」

――アメリカで学んだ中で一番大きかったことは?

「凄い世界を見たというか、私は何も知らなかったんだなあと思いました。先日、ブロードウェイでデビューしたくらい上手な同級生もいて、生まれつきの才能なんだなと思うこともありました。世界的に見たら自分はどれくらいのレベルなのか、といったことも分かりました」

――そうした中で自分のアピールポイントも見えてきましたか?

「ええ、黒人の友達がものすごいハスキーボイスで、ソウルフルな歌声に憧れていたんです。でも“私が歌っても絶対あなたみたいな声にならない”と言ったら真顔で“何言ってるの!”と言われました。“あなたの声こそ素敵だよ。どうしてそんな透明感のある声が出るの?羨ましい”と言われて、あたしは無いものねだりをしていたんだと気づきました。それからは自分の声が好きになりましたし、自分の声質に合わない曲があっても、歌うべき人が他にいるだけのこと、と思えるようになりました。

アメリカではオーディションに落ちても、いちいち落ち込まない人が多いんですよ。“(演出家の)好みに合わなかっただけ。私は素晴らしいけど、彼のタイプと違っただけだから”という感じでみんな次に行くんです。
『キャッツ』撮影:荒井健

『キャッツ』撮影:荒井健

――アメリカで声質は変わりましたか?

「変わりましたね。自分では意識していませんでしたが、帰国した時に喋り声からして変わってる、とびっくりされました」

――ちょっと濡れたような、ニュアンスのある素敵なお声ですね。

「そうですか? アメリカにいた間に開発されたみたいです。発声のターニングポイントになったのは合唱でした。みんなで“あ~”と声を合わせていると、日本にはない“あ”が混じっているんですよ。aとeをくっつけたような音なのですが、それを聴いて“喉のここの位置を使うんだ”と気が付いたり。言語が違うと、喉の使い方も異なるので、刺激的でした」

*次頁で劇団四季入団以降の挑戦の日々、そして今後の抱負を伺います!
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